勤怠管理、工数管理、経費精算などのバックオフィス機能を搭載したサービスを展開しているチームスピリット。契約社数1,682社、ライセンス数39万件、リカーリング比率91.0%のITサービス企業。従業員数は170名。前年比+15%で成長しているものの、損益分岐点あたりで停滞しており利益がでていない。今後の株価と業績の行方は?
■基本情報(2023年1月13日時点)
- 株価:314円(10年来高値:3,375円)
- 時価総額:51億円
- 予想PER:ー(赤字見込み)
- PBR:3.3倍
- 予想配当利回り:0%
- 自己資本比率:43.1%
- 会計基準:日本基準
- 株主数:6,721名(2022年8月31日時点)
■チームスピリットの業績は?
チームスピリットの2023年8月期の第一四半期の売上高は8.9億円(前年同期比+15.5%増)、営業損益△23百万円(前年は+3.0百万円の黒字)と増収赤字転落。チームスピリットの売上総利益率は+34.7%(前年は+34.4%)。
チームスピリットの2023年8月期の第一四半期の売上総利益は3.1億円(前年は2.7億円)だったものの、販管費が3.3億円(前年は2.6億円)と売上総利益以上に販管費が増えており、その結果、赤字転落となった。
チームスピリットは「働き方改革」に貢献しそうな事業内容・サービスであるものの、売上総利益率が+35%前後と低い。ラクス、Sansan、freee、マネーフォワードなどは売上総利益率が+60%を超えており、粗利の差異がチームスピリットの時価総額の低さの要因のひとつだ。
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チームスピリットのコスト構造をみると、人件費、業務委託費(外注人件費)、プラットフォーム仕入で約7割のコストを占めている。広告宣伝費は年間1億円ちょっとしか使っていないため、コスト削減余地が非常に少ない。これも、粗利が低いため、大々的に広告をうって売上規模を増やし、一定期間は大きな赤字を甘受することが難しい理由のひとつとなっている。
■チームスピリットの事業内容は?
チームスピリットの事業内容は面白い。勤怠管理、工数管理、経費精算などで同業他社もたくさんあるものの、間接部門を中心とした効率改善の「見える化」をサポートするサービスとなっている。
最近はDX(デジタルトランスフォーメーション)が叫ばれているが、生産性を見える化するのが先決であり、チームスピリットの「TeamSpirit」というサービスが活躍する場面も多いだろう。すでに1,700社の企業が契約をしており、ライセンス数は39万件となっている。
ただ、年間予想売上高29.7億円をライセンス数39万件で割ると、1ライセンスあたりの利用料金は月間634円(年間:7,608円)とまだまだ小さい。契約社数、ライセンス数、は着実に増えているものの、ライセンス単価はほぼ横ばいとなっている。ただ言い換えると、値上げをすると一気に損益は改善する可能性がある(ライセンス数の解約が増える可能性もある)。
■チームスピリットの顧客は?
「TeamSpirit」シリーズを導入している上場企業は、三菱地所、資生堂、カゴメ、コロプラ、アルヒ、弁護士ドットコム、HENNGE(へんげ)、メドレーなど。2018年~2020年に上場したグロース市場の企業の4社に1社が導入している。
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■チームスピリットの財務状況は?
チームスピリットの2022年11月30日時点の現預金は25.4億円、いっぽう有利子負債はゼロ、繰延収益(前受金)は16.6億円(2022年8月末:14.2億円)と財務は健全だ。
チームスピリットは2018年8月22日に東証マザーズに上場。上場時の公開価格は1,200円、初値は2,417円で、初値ベースの時価総額は177億円(現在の時価総額は51億円)だった。上場時に約5億円の公募増資などで資金を得ている。
■チームスピリットの株価推移は?
チームスピリットの時価総額は約50億円。粗利率が低いこと、事業規模がまだ大きくないことを考慮すると妥当なのかもしれない。成長性をどう見るかであるが、前年比+10%で考えると、売上高の倍増には6~7年くらいはかかりそうだ。
チームスピリットの中期事業計画をみると、2026年度には売上高70億円、営業利益率15%以上、営業利益10億円以上の目標をかかげている。売上高70億円の場合、売上総利益は+24.5億円(売上総利益率:35%)、販管費14.5億円(現時点で年間12億円前後)となり、販管費を増やす余地は多くない。
ただ、値上げ次第では一気に利益構造が変わる可能性あり、引き続き、注目したい。株価チャートをみると、どこかで上昇しそうな気もする。
以 上