印刷・広告プラットフォームのラクスル、利益の刈り取りに入るか?

 印刷・集客支援のプラットフォーム事業をしているラクスル。物流のプラットフォーム事業である「ハコベル」はセイノーホールディングスとのJV化により持分法会社に変更なった。株価は1年前の半値まで下落しているものの、いまでも時価総額は約1,000億円を維持。今後のラクスルの業績と株価の行方は?

売上総利益の伸びは順調!売上高前年比+40%で伸びるラクスル(2021年9月11日投稿)

■基本情報(2023年1月13日時点)

  • 株価:3,155円(10年来高値:7,310円)
  • 時価総額:918億円
  • 予想PER:101.7倍
  • PBR:9.72倍
  • 予想配当利回り:0%
  • 自己資本比率:32.2%
  • 会計基準:日本基準
  • 株主数:8,197人(2022年7月31日時点)

■ラクスルの業績は?

 ラクスルの2023年7月期の第一四半期の売上高は93.4億円(前年同期比+33.3%増)、営業利益3.9億円(前年同期は△1.0億円の赤字)と増収と黒字化となった。ラクスルの売上総利益率は+30.5%(前年同期は+27.4%)。

 ラクスルの売上総利益は28.5億円(前年は19.2億円)と約9億円の増加。売上高の内訳をみると、「ラクスル」が85.4億円(前年は54.6億円)、「ノバセル」が6.4億円(前年は7.2億円)と「ラクスル」の貢献度が大きい。「ラクスル」が大きく伸びた理由は、ダンボールワン(年商:約60億円)を子会社化したこと。おそらく、ダンボールワンの影響が+15億円くらいは効いていると思われる。

■ラクスルの事業状況は?

 ラクスルの累計登録ユーザー数は198万人まで増加。法人ユーザー数(年間購入者数)は26.8万、平均注文単価は1.4万円。いかに購入回数とユーザ数と単価を増やすかがポイント。ただ心配なのは、世の中はペーパレス化が進んでおり、印刷需要が減っていく可能性があること。

 ラクスルはペーパレス化にも注意しており、その点からダンボールワンを買収したと思われる。ダンボールの需要はなくなることはないため。むしろ、通販の需要増などで増える可能性がある。

 いっぽう、「ノバセル」はここ2年間はほぼ横ばいの状況。年間利用者数は180社→271社と増えているものの、テレビCMの放映月数が減少している。テレビCMの広告市場での位置づけが下がっており、成長市場ではないと思われる。

■ラクスルの販管費は?

 ラクスルの販管費の推移をみると、広告宣伝費が年間20億円ほどかかっている。2023年7月期の第一四半期の広告宣伝費は7.1億円と大きいものの、今回は営業利益が黒字になった。売上規模が大きくなり、売上総利益が増えたことで、広告宣伝費を上回る利益がでるようになった。

 なお、ラクスルの従業員数は連結ベースで473名、平均年齢34.5歳と若い。平均年収は631万円と高い水準となっている。

■ラクスルの財務状況は?

 ラクスルの2022年10月末時点の財務諸表をみると、現預金は144億円、のれんが45.8億円、関係会社株式が22.3億円が計上されている。いっぽう、有利子負債は約140億円と大きく、自己資本比率は32%と若干低めとなっている。ただ、かなり低金利で借入をしていると思われ、第一四半期の支払利息は14百万円と年利0.4%くらいの利息ではないだろうか。

■ラクスルの株価推移は?

 ラクスルの時価総額は約920億円。現時点の利益水準を考えると割高だ。しかしながら、成長性が前年比+20%~30%くらいで成長している企業であり、その成長性を考慮して企業価値をみる必要がある。

 今期は売上高396億円、営業利益13億円くらいを計画しており、予想PER20~30倍で考えると時価総額200億円~300億円と算出される。ただ、成長性が鈍化すると一気に株価が下落するリスクがあるので注意が必要だ。

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