サービス付き高齢者向け住宅「アンジェス」シリーズや訪問介護の「あんじぇす」、介護のケアプランを支援する「えんじゅ」を展開しているT.S.I(Terminalcare Support Institute)。2010年2月設立、従業員数は267名。関西、中部を中心に7府県に28拠点、892室を展開している。T.S.Iの業績と株価の行方はどうなるのか?
■基本情報(2021年9月17日時点)
- 株価:1,818円(10年来高値:4,035円)
- 時価総額:28億円
- 予想PER:22.4倍
- PBR:3.41倍
- 予想配当利回り:0%
- 自己資本比率:31.8%
- 会計基準:日本基準
■T.S.Iの業績は?
T.S.Iの2021年12月期の第二四半期の売上高は15.8億円(前年同期比+14.6%増)、営業利益55百万円(前年同期比+25.0%増)の増収増益となった。T.S.Iの売上総利益率は+17.4%、営業利益率は+3.4%と非常に低い。
T.S.Iは介護事業を基本としつつ、自社で建築会社(北山住宅販売)を保有しており、高齢者向け住宅を自社で建設しているケースがある。今期は自社物件である「アンジェス彦根」を売却して、その売上高が2億円ほど計上されている。この「アンジェス彦根」の売却がなかったら営業損失になっていたと思われる。
「アンジェス彦根」は土地・建物で1.2億円ほどだったものを約2億円ほどで売却しており、数千万円の利益が計上されている。
■T.S.Iの事業内容は?
T.S.Iのビジネスモデルはどのようなものだろうか?T.S.Iはサービス付き高齢者住宅の運営をしており、毎月の入居者からの賃料(サービス費用など含む)で売上高を計上している。運営棟数・部屋数が増えることで売上高が拡大していくビジネスモデルである。
もうひとつ不動産事業をおこなっており、子会社の建築会社が「アンジェス」シリーズを建設して販売するというもの。販売後もT.S.Iは「アンジェス」を受託運営する。基本的には「アンジェス」シリーズは地主などが土地・建物を負担して、T.S.Iが賃料を支払っている事業モデルとなっている。
2021年8月、自社物件「アンジェス岐阜岩地」の建築を決め、滋賀銀行から2億円の借入(25年ローン)を計画している。ゆくゆくは本物件も売却するものと思われる。
■T.S.Iの強みと弱みは?
T.S.Iのサービス付き高齢者住宅は初期費用ゼロ、月額15万円~20万円(家賃、食事など付)のかなり安い高齢者サービス住宅。稼働率(入居率)と運営棟数の拡大が事業拡大に重要になる。現在の運営棟数は28棟、892部屋、稼働率は95%前後となっている。
T.S.Iの弱みは売上総利益率が20%以下である点だ。稼働率も高いため、値上げをしない限りは利益率の改善にはならない。2021年12月期の3Q以降に4棟の新規開設を予定しているものの、T.S.Iの利益構造をみると、棟数を増やしても営業利益率はそれほど改善しないと思われる。
これからのT.S.Iの課題は、棟数の増加に加えて、高付加価値をつけたサービスなどの展開により単価の上昇をはかる必要がありそうだ。
■T.S.Iの中期目標は?
いまのところ、2023年12月期には38棟、2031年12月期(10年後)には150棟の運営を計画している。現在の介護事業の運営棟数28棟をベースに年間売上高28億円、売上総利益率17%で計算すると、売上総利益は年間4.8億円。150棟になった場合、売上高は約150億円、売上総利益は25.8億円。販管費を10億円(現在の年間販管費4.5億円とする)と考えると、150棟になったときの営業利益は15億円前後になると思われる(販管費が10億円で収まるかどうかは見えない)。
現在のT.S.Iの時価総額は28億円のため、年間営業利益15億円になった場合は、PER15倍で計算すると、約150億円になる。中期目標を達成した場合には株価は5倍になる可能性はあるかもしれない。
■T.S.Iの株価推移は?
T.S.Iの時価総額は約30億円。売上総利益率の低さが気になるものの、サービス付き高齢者住宅は今後も伸びていく分野であるのは間違いない。T.S.Iの「アンジェス」シリーズは、土地の安い田舎に建設され、かなり簡易的な建物になっている。安い価格の家賃であることが売りであるものの、これからはニーズが拡大していくので面白いビジネスかもしれない。
株価をみると、すでにT.S.Iの低収益性や自己資本比率の低さは株価に織り込まれているかもしれない。T.S.Iは自社で物件をそれほど保有しないビジネスモデルのため、借入がどんどん膨れる懸念はない。チャートをみると、上昇トレンドに入る可能性があり、注目しても面白い。
以 上