都市ガス最大手の東京ガス、JEPX価格高騰により業績予想を下方修正!

 都市ガス最大手の東京ガス(東京瓦斯)は、都市ガスだけのビジネスをしているわけではない。液化天然ガス(LNG)の販売、電力(小売・卸売)、不動産などエネルギー関連の幅広いビジネスを行っている。2021年1月28日に公表した決算では日本卸電力取引所(JEPX)の価格高騰等を理由に業績予想の下方修正を実施した。東京ガスの業績、ビジネス内容、電力卸価格の影響はどうなっているのか?東京ガスの株価の行方は?

■基本情報(2021年1月29日時点)

  • 株価:2,289.5円(10年来高値:4,023円)
  • 時価総額:1兆129億円
  • 予想PER:20.6倍
  • PBR:0.87倍
  • 予想配当利回り:2.62%
  • 自己資本比率:42.0%
  • 会計基準:日本基準

■東京ガスの業績は?

 東京ガスの2021年3月期の売上高は1兆2,335億円(前年同期比△9.4%減)、営業利益657億円(前年同期比+20.0%増)の減収増益となった。新型コロナウイルスの影響によるエネルギー需要の減少により都市ガス販売量の減少や原油価格下落による単価減により売上高が減少した一方、在宅時間が増加したことによる電力小売販売量の増加が利益を押し上げた。

■JEPX価格高騰により△125億円の営業利益マイナス!

 東京ガスは2021年3月期の業績予想について、営業利益80億円のマイナス修正を実施した。ガス関係で+39億円となるものの、電力市場価格高騰影響等(いわゆるJEPX価格の高騰)により電力事業で△125億円のマイナス要素を織り込んだ。2020年12月中旬~2021年1月後半まで続いたJEPX取引スポット価格の高騰はさまざまな企業に影響が出ている。新電力のホープ(東証マザーズ上場)は2020年7月~12月までの業績予想(営業利益)を約7億円下方修正し、通期見通しを「未定」に変更した。

 電力卸大手のJパワー(電源開発)は、営業利益740億円(2021年3月)の予想から「未定」に変更した。JパワーについてはJEPX価格の高騰により上方修正されると見られていたものの、「未定」という結果になった。そももそ、Jパワーは2020年10月30日にJEPX価格の下落等により下方修正(営業利益850億円→740億円)に下方修正しており、今回の「未定」は整合性がとれていない。

■東京ガスの電源構成は?JEPX比率は10%

 東京ガスの2021年3月期の電力販売量(見通し)は24,615百万kWh(前年比+19.5%増)を計画している。東京ガスは液化天然ガス(LNG)を中心とした火力発電が発電の中心で、JEPXからの調達比率はたった10%にとどまる。この10%にあたる約2,400百万kWh(全体の10%)の12分の1にあたる200百万kWh(2021年1月の1か月のみ価格高騰と前提)のJEPX価格高騰により125億円のマイナス要因として業績予想を修正している。

 新電力のホープの開示資料をベースに東京ガスのJEPX高騰の影響を試算すると、2020年12月15日まではJEPX価格は平均5円/kWhだった(12月16日~31日の半月は平均21円/kWh)。2021年1月平均は自然電力の1月の調達価格64円/kWhを前提に考えると、対象の200百万kWh×差額単価の約60円(64円/kWh-5円/kWh)を計算すると約120億円の影響と試算可能だ。1日あたり4億円の損失になる。

■東京ガスの株価の行方は?

 東京ガスの時価総額は約1兆円。株価指標的には割安水準であるものの、これからの成長性は見えない。株式市場の下落相場には強いものの、上昇相場でも株価が伸びないという悩みがあり、安定配当など長期投資向きと思われる。

(画像4)東京ガスの株価推移

以 上

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