広告プラットフォーム「ノバセル」好調、ラクスルは前年比の売上好調つづく!

 印刷の「ラクスル」、広告の「ノバセル」、物流の「ハコベル」の3つの主力製品で事業展開しているラクスル(RakSul)。広告プラットフォームの「ノバセル」は新規顧客の増加と案件の大型化により売上高が26.1億円と前四半期の12.5億円から倍増。つぎの四半期の売上高は17.5億円前後に落ち着く見込み。ラクスルは売上成長率は高いものの、粗利率(売上総利益率)が低く、クラウドITサービス銘柄と比べると利益の伸びが低い。ラクスルの株価と業績の行方はどうなるのか?

ネット印刷仲介のラクスル、業績の上振れ期待か!?株価ストップ高に(2021年3月14日投稿)

印刷、広告、物流のプラットフォーム構築のラクスル(4384)、今後の業績と株価の行方は?(2021年12月12日投稿)

■基本情報(2021年6月11日時点)

  • 株価:5,240円(10年来高値:5,720円)
  • 時価総額:1,499億円
  • 予想PER:2,495倍
  • PBR:19.71倍
  • 予想配当利回り:0%
  • 自己資本比率:35%
  • 会計基準:日本基準

■ラクスルの業績は?

 ラクスルの2021年7月期の第三四半期の売上高は223億円(前年同期比+34.5%増)、営業利益5.2億円(前年同期は△4.3億円の赤字)と増収と営業利益の黒字転換となった。ラクスルの売上総利益率は+23.9%(前年同期は+21.9%)と改善傾向となっている。印刷の「ラクスル」事業の売上総利益率は27.2%前後、広告の「ノバセル」は+15.5%前後、物流の「ハコベル」は+17%前後となっている。

 ラクスルにとって売上総利益率と売上総利益額は重要な経営指標。2021年7月期の第三四半期の売上総利益額は20.8億円。その内訳をみると、印刷が15.3億円、広告が4.1億円、物流が29百万円となっている。いまのところ、印刷の「ラクスル」が経営を引っ張っている状況だ。

■ラクスルの広告宣伝費は?

 ラクスルは四半期ごとに約5億円ほどの広告宣伝費を投入している。年間で約20億円となる。ラクスルのビジネスモデルはクラウドITサービス(SaaS)とは異なり、月額課金ビジネス(サブスクリプション)ではない。クラウドITサービス企業であれば、広告宣伝費をしっかり投入して、売上総利益額を稼ぎ、ゆくゆくは広告宣伝費を削減して利益を稼ぐビジネスモデル。

 ラクスルの場合は、ネット通販などと同じように案件を毎月、積み上げるビジネスモデル。毎月いったんはゼロクリアされるイメージだ。広告宣伝費を削減すると、取引高が下落してゼロから積み上げる売上に大きな影響が出る可能性は高い。ラクスルはいわゆるリカーリング型ビジネス(循環型ビジネス)を行っており、顧客数の増大による取引規模の拡大を期待している。いまのところ、累計登録ユーザー数は増加がつづいており、2021年4月末時点で1,451万ユーザーを抱えている。

■ラクスルの株価の行方は?

 ラクスルの時価総額は約1,500億円。収益の伸びを考えると割高感が大きい。現在の年間売上高は約300億円前後。前年比+40%前後で成長しており、グロース銘柄として注目をあつめている企業のひとつ。ラクスルで心配な点は売上総利益率が低い点。クラウド型のIT企業であれば、売上総利益率が50%を超える企業も少なくない。ラクスルの売上総利益率は+25%前後。その売上総利益から広告宣伝費と人件費をカバーしないといけない。

 すでに人件費だけで約20億円くらいの固定費がかかっている。現時点で従業員数は372名で20億円を人数で割ると年間人件費は540万円ほど。売上高の増加にともない、従業員数も増加しているのは気になるところ。ここ最近、ゲーム銘柄など株価指標的に割安感があり、営業利益100億円前後を出しているアカツキの時価総額はたった500億円(予想PER:7.1倍、予想配当利回り:2.2%)。ガンホーはたった3か月の四半期決算で営業利益100億円を出しているにもかかわらず、時価総額は2,200億円前後。

 いつまでグロース銘柄の株高がつづくのか?インフレ(物価高)は確実に高まっており、近い将来、長期金利高騰にともなう金利上昇が起こるはず。そのときにはグロース銘柄の調整が一気に進むかもしれないので、注意が必要だ。

(画像1)ラクスルの株価推移

以 上

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