さまざまなクラウドサービスのログインを共通化するシングルサインオンのサービス「HENNGE One」を提供しているHENNGE(へんげ)。契約企業数は2,310社(前期末+97社)、契約ユーザ数は234.1万人(前期末+1.7万人)、平均月次解約率0.28%と成長つづくも、営業利益は前年同期比マイナスとなった。今後のHENNGEの業績と株価の行方は?
シングルサインオンのHENNGE(へんげ)、株価低迷も業績は反発か?(2022年7月2日投稿)
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クラウドサービスのパスワード管理のHENNGE(へんげ)、成長鈍化か!?(2021年2月13日投稿)
■基本情報(2023年2月22日時点)
- 株価:785円(10年来高値:5,305円)
- 時価総額:255億円
- 予想PER:71.7倍
- PBR:13.54倍
- 予想配当利回り:0%
- 自己資本比率:39.9%
- 会計基準:日本基準
- 株主数:12,042人(2022年9月30日時点)
■HENNGEの業績は?
HENNGEの2023年9月期の第一四半期の売上は15.5億円(前年同期比+17.8%増)、営業利益94百万円(前年同期は+1.9億円)と増収減益となった。HENNGEの売上総利益率は+82.4%(前年同期は+84.1%)、営業利益率は+6.1%(前年同期は+14.8%)と悪化傾向となった。
HENNGEの売上総利益は前年同期の11.1億円→12.8億円と+1.7億円の増加。販管費は前年の9.1億円→11.8億円と+2.7億円の増加となり、差し引きで営業利益は△1億円の減益となった。
■HENNGEの事業状況は?
HENNGEはサブスクリプションモデルの月額課金で事業をしているため、順調に顧客を増加させている。また、月次解約率も低いため、いかに顧客ボリュームを増やすかが将来の成功のポイントとなる。現状はシングルサインオンの「HENNGE One」が前年比+18.8%増と伸びている。その結果、安定的に売上総利益は増えているものの、販管費の変動により営業利益は変化する。
販管費の変動をみると、人件費の増加の影響が目立つ。人件費と業務委託費は増えており、従業員数は254名となっている。従業員の内訳をみると、HENNGE Oneの営業が81名と最も比率が多い。
■HENNGEの業績見通しは?
HENNGEの2023年度の業績見通しは売上高67.3億円(前年は56.5億円)、営業利益5.6億円(前年は4.6億円)。業績は増収増益をかかげているものの、売上高の伸び率に対して、利益の伸びが小さい。HENNGEとしては、サブスクリプションモデルの利益構造であり、目先の利益を出すよりも、人材に投資をして、いかに事業規模を拡大できるかにポイントを置いている。
HENNGEは決算説明資料に「成長戦略の進捗(HENNGE One)」という資料をつけている。そのスライドをみると、契約企業数の増加が毎年250社前後となっており、ここの増加速度が変わっていないため、前年比での成長率が下がってきている。
■HENNGEのライバルは?
HENNGEのシングルサインオンは、ZOOM、Slack、asana、DocuSign、SmartHRなど240超のクラウドサービスに対応している。競合他社としては、GMOトラスト・ログイン(GMOグループ)、メタップスクラウド(メタップス)、jagaa(ジュガ―)、LOCKED、CloudLinkなど多数ある。どこも1ライセンスあたり100円~150円という金額感になっており、安易な値上げができない状況でもある。
■HENNGEの財務状況は?
HENNGEの2022年12月31日時点の財務状況をみると、現預金は31.1億円、前払費用は8.2億円となっている。いっぽう、契約負債(前受金)は21.7億円と年間払いなどで先に料金を受け取っており、資金繰りは盤石だ。有利子負債はゼロ。
■HENNGEの株価推移は?
HENNGEの時価総額は約250億円。HENNGEは2021年12月末を基準日に1株2株に株式分割を実施。その株式分割の前に株価のピークを迎え、一時は時価総額1,000億円を超えていたものの、最高値から5分の1以下まで株価は下落している。HENNGEはまだ新規顧客を獲得して成長できているものの、成長性の鈍化が見えており、気になるところ。いまの利益水準であれば、ここから半値になる可能性もあり、注意が必要だ。
以 上