NFT期待が抜けたgumi、創業者の國光会長退任で株価の行方は?

 スマートフォンゲームやブロックチェーン・VR事業などを展開しているgumi。2021年6月11日に決算発表を行ったところ、私設市場(PTS)の夜間取引で株価は10%以上も下落。6月4日に業績修正を公表していたものの、創業者である國光会長の退任は予想外だった。ブロックチェーン事業などへの投資を引っ張ってきたリーダーが抜けたgumiの業績と株価の行方はどうなるのか?

デジタル資産「NFT(代替不可能なトークン)」期待!?ゲーム会社gumiの行方は?(2021年3月27日投稿)

■基本情報(2021年6月11日時点)

  • 株価:1,032円(10年来高値:3,340円)
  • 時価総額:322億円
  • 予想PER:17倍
  • PBR:1.98倍
  • 予想配当利回り:0.48%
  • 自己資本比率:64.7%
  • 会計基準:日本基準

■gumiの業績は?

 gumiの2021年4月期の売上高は186億円(前年比△6.0%減)、営業利益15.1億円(前年比△32.0%)の減収減益となった。いっぽう、暗号資産の評価益11.2億円、暗号資産の売却9.3億円、持分法による投資利益の計上23.7億円により、経常利益は60.7億円(前年比+185.7%)と大幅増加となった。gumiの売上総利益率は+26.8%(前年は+32.4%)、営業利益率は+8.1%(前年は+11.2%)とゲーム会社としては、それほど高くない。

 gumiの2021年4月期の第四四半期の業績を見ると、営業利益は△3.4億円の赤字になっている。売上高は37.8億円と前年同期の50.1億円から△12.3億円も減少している。新規タイトルがなく、旧タイトルの販売が落ち込んでいることが要因だ。

■創業者の國光会長の退任!?

 決算数値自体は2021年6月4日に業績修正で公表しているので大きなショックはなかった。決算発表と同時に創業者の國光会長の退任はgumi株主にとっては大きなネガティブサプライズとなった。スマートフォンゲーム自体は売上高の伸びがないなか、國光会長はブロックチェーンとVRに積極投資を決定。現在ではdouble jump.tokyo株式会社などブロックチェーンゲームが注目を集めていた。

 gumiは2023年4月に売上高営業利益率20%、営業利益100億円の中期経営戦略を掲げており、その達成に向けた秘策をもっていると期待されていた。足元の業績をみるかぎり、スマートフォンゲームは落ち込み、ブロックチェーンやVR事業の収益化もむずかしいなかで達成の難易度が大きくあがっている。そのような重要な時期に創業者の國光氏の退任は寝耳に水状態となった。

■フィナンシェ株の売却!?

 もうひとつのサプライズは、ブロックチェーンを活用したクラウドファンディングサービス「Financie(フィナンシェ)」を展開しているフィナンシェ社の株式の売却だ。具体的にはgumi Cyrptos社が保有しているフィナンシェ全株を國光会長に簿価で売却するという内容。

 ここ最近はデジタル資産「NFT(代替不可能なトークン)」が注目を集めており、フィナンシェのビジネスもそのひとつ。「現状においては当サービスにおいて安定的な収益を創出することが難しい状況下であると考えております。」とgumi自体が「NFT」の収益化を否定してしまっている。投資先としては世界最大級のNFTマーケットプレイス「Opensea」に投資しているものの、収益化はむずかしいと考えてしまう。

■暗号資産(仮想通貨)の保有高は?

 今回の決算短信で明らかになったのはgumiの暗号資産の保有高。暗号資産(仮想通貨)が値あがる前からgumiはブロックチェーン技術に注目し、動画配信を高速でおこなうことができる「THETA(シータ)」にも投資している。「THETA」は暗号資産を発行しており、時価総額は約9,000億円(2021年6月12日時点)。gumiは「THETA」の暗号資産を少なからず保有していると期待されていたものの、決算短信に計上された暗号資産はたった12.8億円であることが判明した(個人的には数百億円は持っていると期待していた)。

 今後は暗号資産の下落によっては営業外損益など想定外の損失がでる可能性がある。「THETA」という会社が上場することも考えられるが、その会社が発行する暗号資産と会社の価値はまったく別物。「THETA」が上場しても9,000億円の評価が付くことはないだろう。

■gumiの株価の行方は?

 gumiの時価総額は約320億円。株価チャート的にも上昇トレンドになっていたので、もしかしたら、NFTや暗号資産、ブロックチェーンに注目が集まり、上場来高値の3,340円(現在は1,032円)を奪還できるのではないかと期待していた。しかしながら、6月4日の業績修正をみて、スマートフォンゲームの落ち込みやここ最近の株価の勢いの失速を考えて、微益で撤退することとなった。暗号資産が上昇するときはgumiの株価は上がらず、暗号資産が大幅下落したときにだけgumi株が大きく下落する相関関係にも違和感を感じていた。

 gumiの状況を整理すると、NFTやブロックチェーン、VRで収益を稼ぐことは現時点でむずかしい。投資先が稼ぐようになっても、あくまで一時的な利益や株式の売却益にすぎない。gumiのスマートフォンゲームはAppleやGoogleへのアプリ手数料や著作権を保有するスクエア・エニックスへのロイヤリティ負担が重く、売上総利益率も低い。信用買いが約500万株(約50億円)あるため、短期的には株価は大きく下がるかもしれない。

(画像1)gumiの株価推移

以 上

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