EC支援サービス展開のコマースOneホールディングス(コマースワン)、成長鈍化か!?

 法人向けのECサイト(Eコマース)の「Futureshop」をSaaSで提供しているコマースOneホールディングス(以下、コマースワン)。契約店舗数の増加が前年同期比+1.9%とほとんど増えていない成長鈍化となってしまった。Futureshop利用企業の年間の流通総額(GMV)は1,850億円前後まで増加したものの、グロース銘柄にとって成長鈍化は株価に対してきびしいもの。今後のコマースワンの行方は?

SaaS型ECサイトプラットフォームやEコマース支援のコマースOneホールディングス!(2021年12月27日投稿)

■基本情報(2022年8月12日時点)

  • 株価:942円(10年来高値:4,635円)
  • 時価総額:70.9億円
  • 予想PER:14.0倍
  • PBR:3.1倍
  • 予想配当利回り:0%
  • 自己資本比率:74.2%
  • 会計基準:日本基準
  • 株主数:2,002人

■コマースワンの業績は?

 コマースワンの2023年3月期の第一四半期の売上高は7.6億円(前年同期比+7.6%増)、営業利益は1.5億円(前年同期比△9.5%減)の増収減益となった。コマースワンの売上総利益率は+57.2%(前年は+58.4%)、営業利益率は+20.2%(前年は+24.0%)。

 コマースワンの売上総利益は前年同期の4.1億円→4.4億円と増加したものの、販売管理費が2.4億円→2.8億円と増加したことにより、結果的に費用増のほうが大きく営業利益は減益となった。

■グロース銘柄の成長鈍化?

 コマースワンの営業利益が前年同期比でマイナスになったことよりも、前年度は成長率(前年比)で二桁の伸びがあったものが、今回は+7.6%増にとどまったことのほうがインパクトが大きい。なぜ、成長が鈍化したのか?

 決算説明資料で成長鈍化の明確な理由は述べられていないものの、主力のfutureshop(フューチャーショップ)とSOFTEL(ソフテル)の両方の事業の成長性が下がったことが背景だ。futureshopの契約件数は2,928件となっており、この3か月の増加件数はゼロ。売上高は+8.6%増であるものの、futureshopの流通総額は+1.7%にとどまっており、顧客の売上高が伸びていない。SOFTELの売上高は前年同期比+4.3%にとどまり成長性が大きく鈍化している。

 決算説明資料では、新型コロナウイルス禍でのEC消費が落ち着いて、新規EC参入店舗が過去と比べて激減したことが要因としているものの、顧客企業のECのGMV(流通総額)が伸びていない理由にはなっていない。ZOZOなどは前年比2ケタを超える成長を続けており、企業間での勝負に勝てていないのではないだろうか?

■コマースワンの事業内容は?

 コマースワンの事業は、futureshopとSOFTELの2つが柱。futureshopは法人向けのSaaS型のネットショップサービスの提供だ。イメージとしては、無料でネットショップが作成できるBASEが個人事業主向けとすると、その法人向けがfutureshopと考えると良いだろう。よって、法人が本気でEコマースでビジネスをしていくためのサービスや機能が織り込まれている。

 もうひとつの、SOFTELはそのfutureshopを支える販売管理ソフトや在庫管理ソフトを提供している。実店舗、自社EC、モールなど複数でリアルとネットのビジネスを展開している顧客が多く、その販売管理と在庫管理をできるサービスをSOFTELは提供している。現時点でfutureshopは2,928サイトで利用されている。futureshop利用ユーザの98.9%が法人企業となっている。

■もう少しコマースワンを見る!

 コマースワンの強みはSaaS型(月額課金のストック売上)であること。futureshopについては、なんとかストック売上高は伸びており、本四半期は4.7億円(前四半期は4.6億円)。ストック売上高比率は80.6%とゆるやかに下がってきている。

 いっぽう、SOFTELのストック売上高は80.6百万円とストック売上高比率は46.0%にとどまる。顧客企業にあわしたカスタマイズ売上高の比率が高い特徴であり、売上高が大きくブレる可能性がある。

 そもそも、コマースワンは2006年8月の設立、従業員数は142名。競合他社としては、Hamee、GMOペパボ、ソフトクリエイト、Eストアなどが該当する。

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ECサイト導入~保守のソフトクリエイト(3371)、絶好調の業績!株価はどうなる?(2020年6月13日投稿)

■コマースワンの株価推移は?

 コマースワンの時価総額は約70億円。すでに2年間で4分の1以下まで株価は下落。ここにきて成長鈍化はきびしい。言い換えると、2年前はコロナ禍によるEC移行の特需で事業成長が大きくかさ上げされていただけの可能性がある。残念ながら、SaaS型で安定して成長する未来が、「コマースワンのいまの成長では実現できないのでは?」という不信感にかわる決算発表だった。

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