成功報酬型求人メディア「Green」のアトラエ、業績悪化は底打ちか?

 成功報酬型求人メディアの「Green」や組織力向上のアセスメントサービス「Wevox」などを運営しているアトラエ(Atrae)。2003年10月設立、正社員数は102名。平均年齢31.1歳、平均年収767万円と高い報酬水準になっている。コロナ禍で落ち込んだ求人も回復しており、今後は業績の回復が期待できそうだ。

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■基本情報(2023年9月8日時点)

  • 株価:1,153円(10年来高値:2,849円)
  • 時価総額:311億円
  • 予想PER:57.7倍
  • PBR:5.61倍
  • 予想配当利回り:0%
  • 自己資本比率:75.2%
  • 会計基準:日本基準
  • 株主数:1,793人(2022年9月30日時点)

■アトラエの業績は?

 アトラエの2023年9月期の第三四半期の売上高は56.9億円(前年比+17.4%増)、営業利益7.8億円(前年比△19.5%減)の増収減益。アトラエの売上総利益率は+88.8%(前年は+90.6%)、営業利益率は+13.7%(前年は+20.0%)と高い水準であるものの前年割れとなっている。

 アトラエの売上総利益は前年の44億円→51億円と+7億円の増加、販管費は34億円→43億円と+9億円の増加となり、差し引きで営業利益は9.7億円→7.8億円と△1.9億円の減益となった。

■アトラエの事業内容は?

 アトラエの主力は成果報酬型求人メディアの「Green」の運営だ。売上高の約7割を占めている。IT系人材に強みをもつ求人メディアで、サイバーエージェント、ミクシー、フリー、ホンダ、損保ジャパン、SBI証券、ソフトバンクなど幅広い企業で利用されている。

 アクティブユーザ数は7.1万人(前年同期比+52.0%増)、書類選考通過率22.7%、入社人数は約4,500人。成功報酬は2022年11月以降の応募者より変更されており、エンジニア・技術職は120万円、営業職・企画他は90万円、アシスタント等は60万円となっている。他の人材紹介企業がだいたい年収の30~35%くらいの成功報酬で150~250万円くらいの成功報酬であることを考えると割安な手数料となっている。

■成長性の高い組織力強化の「Wevox」とは?

 アトラエが力を入れているのは「Wevox」だ。SaaS型の従業員の組織に対するエンゲージメントを継続的に把握し、AIで分析するサービスを提供している。企業自体が自社の従業員のことを理解していないことが多く、組織力強化として導入が進んでいる。

 ベーシックプランは1人あたり月額300円、スタンダードプランは1人あたり月額600円のサービスとなっている。従業員が100人くらいの企業であれば月額30,000円~60,000円くらいで利用できる。三井住友銀行、KDDI、村田製作所、みずほ証券、キヤノンなど幅広い企業で利用されている。導入企業数は2,940社となり、年間売上高20億円くらいの規模になっている。

■アトラエの財務状況は?

 アトラエの2023年6月30日時点の財務状況をみると、現預金は44億円、投資有価証券は9.3億円となっている。負債については、未払金6.7億円あるものの有利子負債はゼロ。前受収益である契約負債が4.2億円となっている。利益剰余金は37.6億円まで積み上がっている。いまだ配当ゼロのため、利益剰余金と現預金が積み上がっていく状況だ。

■アトラエの株価推移は?

 アトラエの時価総額は約300億円。株価指標的に割高感はあるものの、「Green」の業績回復と「Wevox」の期待感で株価は維持されている感じ。現状の1株あたりの当期純利益(EPS)は19.06円であり、成長性を考慮して予想PER20~30倍で計算すると、予想株価は380円~570円。現状の株価1,153円とは大きく乖離している。

 EPSを30円とみた場合も、予想株価は600円~900円であり、それほど上がっていくイメージはない。株価チャートをみても、ここから上昇していくようには見えない。

(画像1)アトラエの株価推移

以 上

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