新型コロナウイルスの影響により、2020年5月くらいから売上高が前年比割れしているジェイエーシーリクルートメント(JACリクルートメント)。JACリクルートメントは、国内の人材紹介(中途採用)を中心に事業を展開する人材サービス会社。これまで前年比+10%を超える事業規模の拡大をしてきたものの、新型コロナウイルスの影響をはじめとした景気の悪化が人材業界に波及してきた形だ。営業利益率は25%を超えるものの、事業にどのような影響が、いつ頃まで続くのだろうか?
■基本情報(2020年10月23日時点)
- 株価:1,369円
- 時価総額:565億円
- 予想PER:14.0倍
- PBR:4.28倍
- 予想配当利回り:5.84%
- 自己資本比率:74.0%
- 会計基準:日本基準
■JACリクルートメントの業績は?
JACリクルートメントの2020年12月期の第二四半期の売上高は120億円(前年同期比△5.3%)、営業利益33.4億円(前年同期比△0.6%)と減収減益となった。月別の売上高推移を見ると、2020年1月~4月までは新型コロナウイルスの影響がそれほどなかったものの、2020年5月から前年同月比で大きく売上高が減少している。JACリクルートメントは転職者の入社時に売上高を計上しており、内定してから転職先(紹介先)への入社まで1~3か月程度かかる。新型コロナウイルスの影響が拡大した2020年2月以降の悪影響は5月以降に業績にでてきている。
おそらく、中途採用(キャリア採用)の市況は悪化しており、人材業界は当面は前年割れが続くものと思われる。ただし、JACリクルートメントをはじめ、人材紹介会社は営業利益率が高く、なかなか赤字になりにくいのが現状だ。株価がどこで下げ止まるか見極めが必要になる。
■苦戦するJACリクルートメントの海外事業!
JACリクルートメントの売上高の約10%を占める海外事業は苦戦中だ。2020年12月期の第二四半期は売上高10.6億円、営業利益△17.3億円の赤字。海外事業の赤字の主な理由は、「のれん」の減損△15.8億円を計上した影響だ。
JACリクルートメントの海外事業は、日系の海外現地子会社への現地採用日本人が中心だ。新型コロナウイルスの影響により各国の入国規制により、採用活動の停滞や採用者が赴任できない(売上計上できない)状況になっている。いまのところ国境をまたいだ移動の先行きが見えず、海外事業の回復は見通せない。
■面談数の増加と面接数の減少!
JACリクルートメントでは、オンラインによる面談数は20%増加している。いっぽうで、求人企業との面接数は24%減少している。大手企業中心にオンラインでの面接にそれほど抵抗はなくなっているものの、求人企業の不透明な受注の先行きにより採用を以前以上に厳選している(求人数自体が減少している)。求人者数は今後、リストラなどで増加すると思われるものの、求人数は減少していくだろう。
■JACリクルートメントの主な指標!
JACリクルートメントの指標をみると、人材(登録者数)に対する成約率は10%となっている。これはリクルートやパソナ、MSジャパン(MS-Japan)などの競合他社もほぼ同じ数値だと思われる。求人成約率は23%。この数値は、言い換えると、73%は競合他社の紹介で決まったか、求人企業が採用を取り下げた結果だ。求職者も求人企業も、複数の人材紹介会社を利用しているため、いかに自社の求人成約率(求人企業への成約率)と人材成約率(求職者の成約率)を高めることがポイントになる。
■JACリクルートメントの株価の行方は?
JACリクルートメントの株価は割安か?事業規模の拡大は停滞しているものの、営業利益率は25%を超えている高収益企業のひとつ。景気の不透明感が解消されれば、中途採用も回復してくると思われる。もうひとつ心配なのは、国内の人材紹介事業がどこまで伸びる余地があるかだ。中途採用はこれからも活発になると思われるものの、急激な拡大は期待できない。どこかで成長の鈍化が予想される。
これはJACリクルートメントだけでなく、同業他社も同様だ。パソナ(売上高3,100億円、営業利益100億円)もそのような事情を織り込み、時価総額は722億円程度にとどまる。まずは株価が下げ止まり、ヨコヨコの展開になるまで様子見が無難だ。
以 上