収益認識基準変更でガラッと変わった財務諸表のブロードエンタープライズ、今後の行方は?

 賃貸マンションの空き家対策をメインにインターネット「B-CUBIC」やスマートインターフォン「BRO-LOCK」を提供しているブロードエンタープライズ(以下、ブロードエンター)。今年から収益認識基準を変更した影響で、いままでに比べると大きく営業利益がマイナスに。ただ、事業の状況は変わっていないため、影響を慎重に見極める必要がある。

マンション向けIoTサービスのブロードエンタープライズ、WiFiとスマートロック!(2022年5月8日投稿)

■基本情報(2023年3月10日時点)

  • 株価:1,090円(10年来高値:3,090円)
  • 時価総額:32億円
  • 予想PER:23.9倍
  • PBR:6.2倍
  • 予想配当利回り:-
  • 自己資本比率:9.1%
  • 会計基準:日本基準
  • 株主数:1,290人(2022年12月31日時点)

■ブロードエンターの業績は?

 ブロードエンターの2022年12月期の売上高は30億円(前年比+19.7%増)、営業利益2.9億円(前年は+5.7億円)と増収減益。ブロードエンターの売上総利益率は+52.0%(前年は+63.9%)、営業利益率は+9.6%(前年は+22.9%)と表面上は悪化しているように見える。ただ、収益認識基準を変更したため、将来に分割して売上高を計上する仕組みになったことが売上高と営業利益に大きく影響している。

 ブロードエンターの売上総利益は前年の15.9億円→15.6億円と△0.3億円のマイナス。販管費は10.2億円→12.7億円と+2.5億円の増加になり、差し引きで約2.9億円の利益減となっている。

■ブロードエンターの事業状況は?

 ブロードエンターは賃貸市場での空室対策として他物件との差別化を図るために、IoT機器やインターネットサービスをオーナー向けに提供している。たとえば、入居者のニーズの高いインターネットの無料やエントランスのオートロックなどを提供している。

 インターネット無料サービスとして、全戸一括型インターネットサービスの「B-CUBIC」を提供。また、IoTインターフォンシステムの「BRO-LOCK」を提供している。そのほかにも、スマートロック、スマートカメラ、スマートホームなど賃貸オーナー向けのサービスを提供。

これらの設備を導入することで、空室対策や賃料アップの施策として活用してもらうように活動している。

■「B-CUBIC」の状況は?

 ブロードエンターのインターネット一括導入サービスの「B-CUBIC」は6,914棟で導入されており、前年比+16.5%(前年同期は5,936棟)の増加となった。この「B-CUBIC」の特徴はサブスクリプションモデルであり、ストック型の売上高である点だ。

■IRに力をいれるブロードエンター

 ブロードエンターは株主数増のためにIRに力をいれている。株主優待として、200株以上の保有者には宝くじ10枚を提供。現在の株主数は2022年12月末時点で1,290名となっている。

 具体的な施策としては、IRコンテンツの充実、個人投資家説明会の開催数の増加、WEBメディア活用、IRチームのTwitterフォロワー増、社長ユーチューブチャンネルの開設など。

■ブロードエンターの財務状況は?

 ブロードエンターの2022年12月末の財務状況をみると、現預金は9.9億円、前払費用は10.9億円、繰延税金資産は7.5億円となっている。おそらく、収益認識基準の変更により、前払費用、繰延税金資産の大きな計上につながったと思われる。いっぽう、有利子負債は約18億円、前受金27億円となっている。

 ブロードエンターで気になるのは、営業CFが2年連続で大きく赤字であること。収益認識基準でP/Lが悪くなるのは理解できるものの、売上債権の増加が大きく、営業CFはマイナスになっている。B/Sをみると、売上債権が大きく減っているものの、営業CFのなかでは増加(△)となっているのが気になる。

■ブロードエンターの株価推移は?

 ブロードエンターの時価総額は約32億円。毎年利益を3~5億円くらい出している企業としては株価が低い。個人投資家向けのIRに力を入れているのは良いものの、キャッシュフローの悪化が気になる。また、採用数も去年まで38人、46人と採用してきたものの、2023年度は19名内定と半数以下まで減少。ブロードエンターの実態がまだよく見えない。

(画像1)ブロードエンターの株価推移

以 上

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