不動産賃貸のAIやIoTテック関連のビジネスを展開しているロボットホーム(Robot Home)。2015年にインベスターズクラウドとして上場し、TATERU(タテル)に名称変更し、現在はロボットホームとして運営している。2018年には不動産融資資料の改ざんで信用を失ってしまったものの、財務状況は健全で業績は回復傾向になる。今後の業績と株価の行方は?
ロボットホーム(旧TATERU)の業績の行方は?営業利益は黒字浮上!(2021年11月13日投稿)
■基本情報(2022年12月2日時点)
- 株価:178円(10年来高値:2,549円)
- 時価総額:162億円
- 予想PER:40倍
- PBR:2.13倍
- 予想配当利回り:1.12%
- 自己資本比率:72.3%
- 会計基準:日本基準
- 株主数:26,558人(2021年12月31日時点)
■ロボットホームの業績は?
ロボットホームの2022年12月期の第三四半期の売上高は37.4億円(前年同期比+25.5%増)、営業利益3.7億円(前年同期比+18.9%増)の増収増益。ロボットホームの売上総利益率は+57.1%(前年は+80.7%)、営業利益率は+10%(前年は+14.5%)と売上総利益率が大きく改善しているように見える。
ただ、売上高について「収益認識に関する会計基準」を適用し、売上高のベースが大きく異なっていることに注意。その影響額に決算説明資料などに明確にわかる形で記載していないため影響額がよく見えない。
結果として、売上総利益21.4億円(前年は17.5億円)に対して、販管費が17.6億円(前年は14.3億円)となり、営業利益は3.7億円と前年同期の3.1億円より若干の増加となった。
■ロボットホームの事業状況は?
ロボットホームはAI・IoT事業(売上高2.9億円、営業利益1.8億円)、PMプラットフォーム事業(売上高19.7億円、営業利益9.4億円)、income club事業(売上高14.9億円、営業利益55百万円)の3つのセグメントで事業を行っている。ここから全社の販管費△6.3億円が計上される構造だ。
AI・IoT事業はResidence kitという賃貸住宅のコミュニケーションアプリを展開している。入居者、オーナー、賃貸仲介会社、賃貸管理会社が使用するプラットフォームだ。サービスとしてはGAテクノロジーズの「ITANDI(イタンジ)」や家賃保証サービスを展開しているCasa(カーサ)の「COMPASS」というデジタルサービスに似ている。
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Residence kitのIoT導入戸数は10,345戸、オーナー数は1,992名となっている。2018年の不祥事以前にはロボットホームが顧客に賃貸不動産を販売して顧客数を伸ばしていたものの、不動産販売を手放してから顧客が伸びていない。
■ロボットホームのPMプラットフォーム事業とは?
PMプラットフォーム事業は売上高19.7億円、営業利益9.4億円のメイン事業。いわゆる、賃貸管理サービスで、こちらも伸びていない。管理戸数は26,084戸、入居率95.7%と高い。ただ、2018年から伸びず、2.5万戸(2018年)、2.4万戸(2020年)、2.6万戸(2022年3Q)となっている。戸数増加のために、広告配信や他社管理会社のM&Aなどを検討している。
■期待されるincome club事業とは?
ロボットホームのincome clubとは、不動産マーケットプレイスという富裕層向けの不動産情報サイト(投資用不動産)としているが、中身をみると、不動産会社向けのコンサルティングなどがメインだ。
「不動産投資をオンラインで完結できる」というコンセプト。オンラインで土地購入~施工・管理までワンストップとなっている。正直、売上高が14.9億円も計上されており、土地などの譲渡などが計上されているのか中身はよくわからない。
■ロボットホームの財務状況は?
ロボットホームの2022年9月30日時点の財務諸表をみると、現預金は39.4億円、販売用不動産が33.0億円ある。有利子負債は約5億円ほどで財務的には健全だ。不祥事の前に2018年4月に約130億円の公募増資を実施しており、資金は潤沢にある。ただ、いまのところ、株主の多くが含み損を抱えており、かつ、株主が2万人以上もいるので、株価はなかなか上昇しない状況だ。
■ロボットホームの株価の行方は?
ロボットホームの時価総額は160億円。株価チャートをみるとわかるが、2018年の不祥事から立ち上がる気配はない。ほとんどの人が含み損を抱えており、業績が急回復する気配が見えない。
ロボットホームの事業の柱も、不祥事前に販売した投資用不動産の管理収入がメインであり、安定しているものの成長の兆しがない。すでに販売用不動産を33億円も仕入れているため、どこかで以前のような不動産販売に舵をきるのではないだろうか。言い換えると、そのときには業績が急回復する可能性もあり、株価の動向に注目が集まりそうだ。
以 上