出張買取を活用したリユース事業のBuySell Technologies(バイセル)、M&Aで成長!

 総合リユース買取サービス「バイセル」や総合買取サロン「TIMELESS」など中古品の売買を行っているBuySell Technologies(以下、バイセル)。通常の中古売買店舗やリユース事業者と異なるのは出張訪問買取に力を入れている点。2001年1月設立、従業員数はグループ841名(2021年12月末時点)。バイセルの業績と株価の行方は?

■基本情報(2022年9月30日時点)

  • 株価:6,270円(10年来高値:7,150円)
  • 時価総額:908億円
  • 予想PER:46.5倍
  • PBR:16.7倍
  • 予想配当利回り:0.31%
  • 自己資本比率:44.5%
  • 会計基準:日本基準
  • 株主数:1,231人(2021年12月31日時点)

■バイセルの業績は?

 バイセルの2022年12月期の第二四半期の売上高は151億円(前年同期比+28.9%増)、営業利益15.6億円(前年同期比+17.2%増)の増収増益。バイセルの売上総利益率は+58.7%(前年同期は+58.9%)、営業利益率は+10.3%(前年同期は+11.4%)と粗利が高いのが特徴だ。

 リユースというか中古品の売買は昔からある事業モデルで、売り手は不用品を処分したく、市場価値を度外視してもバイセルに商品を売却してくれるケースがあり、粗利が高いのが特徴。バイセルの売上総利益は88.5億円で、販管費が73億円となり、差額が営業利益15.6億円となっている。

 販管費の一部を公表しており、広告宣伝費が22.2億円、人件費が18.6億円となっている。広告宣伝費を22億円規模で使っており、経営的には余裕をもった状況だ。

■バイセルの事業内容は?

 バイセルは店舗、出張買取、宅配買取の大きく3つのチャネルで商品を仕入れ、店舗やオークションなどで中古品を売却する事業モデルだ。販売もEC販売、催事販売(百貨店など)卸売などルートが多岐にわたる。これまでのブランド品や時計などだけでなく、着物なども百貨店のイベントを開催して売却するノウハウを持っている。

 買取店舗は「バイセル」が5店舗、「TIMELESS」が14店舗となっている。2020年11月に株式会社タイムレスを完全子会社化(取得対価:19.5億円)し、2022年8月に株式会社フォーナインを買収(取得対価:32.7億円)。

 フォーナインは「Reuse Shop WAKABA」をフランチャイズ方式(164店舗)と直営店(16店舗)を保有しており、売上高は33.3億円と規模が大きい。2022年4QからPL連結されるため、4Qからは大きく事業規模が増えそうだ。

■デジタルとアナログの併用!

 バイセルはKPI管理をしっかりしており、出張買取では「出張訪問数」「出張訪問あたりの売上総利益」「出張訪問あたりの広告宣伝費」など細かく管理している。たしかに、出張訪問回数を増やせば、中古品を売ってくれる人は必ずいるので販売ルートを持っているバイセルは利益を生み出すことができる。

 ただ、出張訪問買取は足(脚)をつかうアナログな業務。正直、バイセルで出張訪問買取の仕事は絶対にしたくないと思う人も少なくないだろう。バイセルの従業員の人員構成をみると、フィールドセールスという人が約40%くらいいるため、およそ300名(従業員総数は841名)くらいは日々、出張訪問を続けているのだろう。

■バイセルの中期経営計画は?

 バイセルの2024年度の中期経営計画は、連結売上高465億円、連結経常利益60億円、利益率約13%を目指している。純利益が40億円くらいを前提に予想PERを20~30倍で計算すると、時価総額は800~1,200億円くらいとなる。現在の時価総額約900億円はすでに、その計画を織り込んだ形と言っても過言ではない。ただ、株価はオーバーシュートもありえるので、まだまだ上昇する可能性もある。

■バイセルの財務諸表とM&A

 バイセルの2022年6月30日時点のB/Sをみると、現預金は59.6億円、商品ん26.1億円、のれん15.3億円が計上されている。いっぽう、有利子負債は約40億円ほどある。バイセルはM&Aで事業を拡大しており、有利子負債を活用して、積極的に事業規模を拡大。その結果、財務的にはそれほど安全という感じではないが、戦略のひとつだろう。

 心配されるのは、将来的な借入金利の上昇とブランド品や貴金属(時計など)の市場価格の下落。うまく買取価格を低減できればよいが、在庫を一定もつ必要があり、市場価格下落時には利益率が大きく下がってしまうのではないだろうか?その時には業績は一時的には悪化するかもしれないことに注意が必要だ。

■バイセルの今後は?

 バイセルの時価総額は約900億円。コロナショックで一時、時価総額は100億円くらいになり、この2.5年間で株価はすでに10倍近くまで上昇。M&Aは株価市場的には成長性を大きく見せることができる株式市場の道具であり、バイセルはうまく活用していると言える。

 バイセルは旅行会社のエアトリ(旧:エボラブルアジア、時価総額:600億円)創業者の吉村氏が会長であり、筆頭株主となっている。経営的もM&Aを活用して成長する手法はエアトリに酷似している。なお、吉村氏は現在もエアトリの取締役でもあり、大株主でもある。株式市場を完全に理解した経営スタイルと言ってよいだろう。

 エアトリも株価は一時、時価総額1,000億円くらいまで上昇したものの、現在は時価総額600億円くらいまで下がっている。バイセルの株価がどこまで上昇するかわからないものの、どこかで調整するのは間違いない。その点に留意して、取引をする必要がありそうだ。

(画像1)好調なバイセルの株価推移

以 上

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