業績好調も最高値の5分1の株価の弁護士ドットコム、期待先行型か?

 弁護士、税理士などの情報サイトやハンコレスな電子契約サービスの「クラウドサイン」を展開している弁護士ドットコム。「判例秘書」のLIC(エル・アイ・シー)買収により弁護士支援サービスの有料弁護士や売上高が一気に増加。従来からの成長性が加速している。売上高は前年比+30%増となり、営業利益も成長している。今後の業績と株価の影響は?

「判例秘書」を買収の弁護士ドットコム、クラウドサインの成長は堅調!(2023年10月28日投稿)

日本最大級の法律相談ポータルサイト運営の弁護士ドットコム、販管費の増加が負担!(2022年10月30日投稿)

■基本情報(2024年6月7日時点)

  • 株価:3,065円(10年来高値:15,880円)
  • 時価総額:686億円
  • 予想PER:68.2倍
  • PBR:16.7倍
  • 予想配当利回り:0%
  • 自己資本比率:40.3%
  • 会計基準:日本基準
  • 株主数:13,442名(2023年3月31日時点)
  • 事業価値:678億円

■弁護士ドットコムの業績は?

 弁護士ドットコムの2024年3月期の売上高は113億円(前年比+30%増)、営業利益12.4億円(前年比+13.4%増)の増収増益。弁護士ドットコムの売上総利益率は+79.4%(前年は+83.7%)、営業利益率は+10.9%(+12.5%)。

 弁護士ドットコムの売上総利益は前年の73億円→90億円と+17億円の増加、販管費は前年の62億円→78億円と+16億円の増加となり、結果として営業利益は約2億円の増加の12億円となっている。売上総利益は伸びているものの、販管費の伸びが大きい。SaaSビジネスモデルのため、規模の拡大が急務であることはわかるものの、成長性が停滞すると株価は一気に悪化することに留意が必要だ。

 販管費比率をみると、前年は売上高比71.2%だったものの、今回は68.5%となっている。比率としては改善しているものの、売上総利益率の悪化などを考慮すると、本来は大きく販管費率の改善を期待したいもの。

■弁護士ドットコムの事業状況は?

 弁護士ドットコムは「判例秘書」を加算した弁護士支援サービスが前年比+60%と大きく成長。また、電子署名サービスのクラウドサインが前年比+28.2%と堅調に成長を続けている。

 販管費をみると、2023年4Qの16.4億円→22.1億円と+5.7億円と大きく増えている。中身をみると、人件費が+2億円、広告宣伝費が+1.3億円増えている。

■リーガルブレインの立上げ!

 弁護士ドットコムは「リーガルブレイン(LEGAL BRAIN)」というサービスを立ち上げる。コンセプトとしては「日本の法務部」として法律サービスを提供するもの。アンダーソン・毛利・友常法律事務所と協業を発表しており、かなり力を入れて取り組むもの。

 弁護士ドットコムは日本を代表する弁護士事務所とも協業できるポジションにあり、日本のリーガルで存在感を示す存在となった。現在、クラウドサインの利用社数は250万社、サービス利用している弁護士は2.7万人となっている。

■弁護士ドットコムの財務状況は?

 弁護士ドットの2024年3月末の財務諸表をみると、現預金は35億円、のれん7億円、技術資産14億円、ソフトウェア9億円となっており無形資産が大きい。負債をみると、有利子負債は27億円。未払金が8.5億円、前受金が7.7億円となっている。財務的には健全だ。

 弁護士ドットコムのキャッシュフロー計算書をみると、営業CFは+11.6億円、投資CFは子会社株式の取得の△13.8億円があり、△21億円のマイナス、財務CFは長期借入金+29億円の影響で+27.6億円となり、現預金は+18億円増えたものの、借入金が大きく増加した。

■弁護士ドットコムの株価推移は?

 弁護士ドットコムの時価総額は約700億円。すでに高値から5分の1くらいまで下落している。事業自体は安定的に成長しているものの、コロナ後のグロース銘柄のバブルからの大きな下落となり、含み損を抱えている人も少なくないだろう。

 弁護士ドットコムの2025年3月期の業績予想は、売上高147億円(前年比+30.2%増)、営業利益17億円(前年比+37.5%増)、当期純利益10億円となっている。予想PER20~25倍で計算すると、予想時価総額は200~250億円。将来的に当期純利益が30億円くらいになることを考えると、予想時価総額は600~750億円くらいと試算できる。これらを考慮すると、いまの時価総額は現実的な株価かもしれない。

以 上

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