グループウェアの「チャットワーク」を展開しているChatwork。登録ID数、課金ID数、導入者数など主要なKPIは好調に推移しているものの、成長性としてはもう少しほしい。株価は上場来最高値から5分の1以下まで下落しており、Chatworkの業績は向上しているものの、期待感は剥落していると言える。
赤字の成長戦略はいつまで？Chatworkの黒字化に期待する株主たち！（2023年11月12日投稿）
SaaS型のビジネスチャット「チャットワーク」運営のChatwork、成長つづくも赤字継続！(2023年4月1日投稿）
■基本情報（2024年6月7日時点）
- 株価：435円（10年来高値：2,624円）
- 時価総額：178億円
- 予想PER：88.9倍
- PBR：7.38倍
- 予想配当利回り：0%
- 自己資本比率：39.1%
- 会計基準：日本基準
- 株主数：10,912人（2023年12月31日時点）
- 事業価値：170億円
■Chatworkの業績は？
Chatworkの2024年12月期の第一四半期の売上高は19.3億円（前年比+36.0%増）、営業利益は△13百万円（前年同期は△1.5億円の赤字）と増収赤字幅の縮小となった。Chatworkの売上総利益率は+65.6%（前年は+64.6%）となっている。
Chatworkの売上総利益は前年の9.2億円→12.7億円と+3.5億円の増加、販管費は前年の10.7億円→12.8億円と+2.1億円の増加となり、差し引きで1.4億円の営業利益の改善となった。Chatworkは2023年7月3日より利用料金を改定しており、約40%～50%値上げした。ビジネスプランの月間契約は600円→840円と+40%値上げ、エンタープライズプランの月間契約は960円→1,440円と+50%値上げしている。
■Chatworkの事業状況は？
Chatworkは2004年11月11日設立、従業員数は2024年3月末時点で465名。ビジネスチャットという事業領域で戦っている、SaaSモデルのIT企業だ。競合他社としては、マイクロソフトのTeams、Slackなどが世界的に有名である。Chatworkは日本国内の中小企業を中心に普及しているビジネスチャットソフトで、登録ID数は685万(前年比+14.8%増）、課金IDは74.3万（前年比+6.2%増）となっている。課金IDの伸びが１ケタになっているのが気になるところ。
グロース銘柄で成長性が損なってしまうと、株価は大きく下がってしまう。Chatworkは昨年の値上げにより売上高は前年比+30%を超える成長をしているものの、大部分は値上げによる影響が大きい。年間売上高が約70～80億円という規模感のなかで、オーガニックな成長が停滞した場合は株価に大きな影響がでるもの。
Chatworkの有料契約者の97.2%が従業員数300名未満の企業や個人事業主。導入社数は44万社を突破したものの、今後の成長余地はそれほどないかもしれない。いかに周辺サービスにつなげていくかがポイントだ。
■もし値上げがなかったら？
Chatworkはフリーミアムモデルと言われる無料と有料が混在した仕組みで運用しているビジネスチャットサービス。2023年7月に課金ユーザに対して大きく値上げをしており、もし値上げがなかったら成長性は+30%を大きく割っていただろう。グロース銘柄が成長性を失うと、株価は大きく下がってしまう。
Chatworkは年間で約40億円くらいの売上総利益（粗利）を稼いでおり、まだまだ規模感は小さい。少なくとも、100～200億円の規模感がないと、存在感のあるIT企業とは見られないだろう。
■Chatworkの財務状況は？
Chatworkの2024年3月末時点の財務諸表をみると、現預金は22億円、のれん10億円となっている。負債をみると、有利子負債は13億円、契約負債（前受金）は15億円となっている。利益剰余金は△31億円のマイナスであるものの、純資産は+24億円となっている。財務的には健全だ。
■Chatworkの株価推移は？
Chatworkの時価総額は約180億円。いまの事業規模や利益をみると割高感があるものの、SaaSという事業モデルのため既存顧客から生まれる収益への価値が高く評価されていると言えるだろう。
将来的に税引き後当期純利益が15億円（営業利益：20億円レベル）くらいであると考えると、予想PERを15倍～20倍で試算すると、時価総額は225億円～300億円くらいが期待できる。しかしながら、営業利益20億円レベルの道は遠そうだ。
以 上