SaaS型のビジネスチャット「チャットワーク」運営のChatwork、成長つづくも赤字継続!

 グループウェアの「チャットワーク」を展開しているChatwork。2004年11月設立、従業員数は312名(2022年12月末時点)。最近ではチャットソフトにとどまらず、スーパーアプリ戦略としてChatworkからの送客する仕組みの構築を進めている。現状は中小企業向けのビジネスチャットという位置づけであるものの、長期的には中小企業向けのプラットフォームを目指す構想だ。

ビジネスチャット「Chatwork」展開、SaaS型ビジネスで将来は明るい!?(2022年10月8日投稿)

■基本情報(2023年3月31日時点)

  • 株価:869円(10年来高値:2,624円)
  • 時価総額:348億円
  • 予想PER:未定
  • PBR:12.3倍
  • 予想配当利回り:0%
  • 自己資本比率:52.4%
  • 会計基準:日本基準
  • 株主数:12,435人(2022年12月31日時点)

■Chatworkの業績は?

 Chatworkの2022年12月期の売上高は45.9億円(前年比+36.2%増)、営業損益△7.2億円(前年は△6.9億円)と増収赤字幅の拡大となった。Chatworkの売上総利益率は+69.4%(前年は+70.5%)と1ポイントの悪化。ただし、売上総利益率は高い水準を維持している。

 Chatworkの売上総利益は前年の23.8億円→31.9億円と+8.1億円の増加となったものの、販管費が30.7億円→39.1億円と8.4億円の増加となったことで営業損益は若干の赤字幅の悪化となった。ただし、売上総利益が確実に拡大していることは大きい。また、売上総利益率が悪化していないことにも留意が必要だ。

■ChatworkのKPIは?

 Chatworkはフリーミアムモデルを採用しており、無料で一定のところまで使用できる仕様になっている。そのため、登録ID数は574万IDであるものの、実際に課金している課金ID数は66.8万IDとなり、全体の約11.6%がお金を支払って使用していることになる。登録IDのなかには、ほとんど使用せずに休眠しているユーザも多く含まれるだろう。

 導入社数は38.6万社、解約率は0.4%(課金IDのみであると1.0%)となっている。Chatworkのビジネスチャンスとしては、ビジネスチャットの国内普及率は18.1%と言われており、まだ8割くらいの開拓余地があること。コロナ禍やDX推進の流れがビジネスチャット活用の機運になっている。

■フリーミアム戦略

 Chatworkの課題は、無料で使用している登録ユーザの課金化だ。2022年10月にフリープランの機能を制限することで、2022年4Qでは利用制限の変更(有料化)に変更するID数が大幅に増加している。

 現在のChatworkのプランは、フリー、ビジネス、エンタープライズの3つに分かれている。ビジネスは年間契約で月額500円・1ユーザ、エンタープライズは年間契約で月額800円・1ユーザとなっている。気になるのはビデオ通話、音声通話が14人までが限界である点だ。

 ある程度の企業になると、20人、50人、100人で会議や講演会などを実施するため、結局、ZoomやTeamsなどのビデオアプリを活用する点が出てくる。それであれば、最初からTeamsを入れようとなるのではないだろうか。そのため、Chatworkの課金ユーザの企業規模をみると、約8割が300名未満の企業規模となっている。

 現状、国内のビジネスチャットはSlack(セールスフォース)、Teams(マイクロソフト)、そしてChatworkの3社の競争となっている。

■Chatworkの財務状況は?

 Chatworkの2022年12月末の財務諸表をみると、現預金は28.5億円、前払金6.9億円となっている。いっぽう、有利子負債は約9億円。前受金(前払いの使用料)は10億円となっており、財務的には健全だ。

■Chatworkの株価推移は?

 Chatworkの時価総額は約350億円。半年前には株価は半値以下まで下落していたものの、成長性などを考慮して株価は大きく反発している。ただ、テレワークやリモートワークから出社・対面に切り替えるケースも出ており、これまでの成長性を維持できるか見えない部分が残る。成長性が鈍化すると、株価は半値くらいまで下落するリスクもあるため、慎重に今後の推移を見る必要がある。

(画像1)Chatworkの株価推移

以 上

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