AI・機械学習・ディープラーニングなどの先端のテクノロジーを活用した社会課題を解決することを目指すJDSC(2013年の設立時は日本データサイエンス研究所)。従業員数は72名。まだ利益が期待できるレベルではないものの、将来的なテクノロジーを活用したビジネス展開が期待される企業のひとつ。将来的にGoogleなどのような世界的にインパクトのあるデジタル企業になれるのか?
■基本情報(2022年10月7日時点)
- 株価:616円(10年来高値:3,120円)
- 時価総額:79億円
- 予想PER:7,700倍
- PBR:2.2倍
- 予想配当利回り:0%
- 自己資本比率:96.2%
- 会計基準:日本基準
- 株主数:3,857人(2022年6月30日時点)
■JDSCの業績は?
JDSCの2022年6月期の売上高は14.1億円(前年比+29.7%増)、営業損益は△54百万円(前年は+38百万円)と増収赤字転換。JDSCの売上総利益率は+57.9%(前年は+53.6%)。売上総利益が8.2億円に対して、販管費が8.7億円発生したため営業損益は赤字となった。販管費はほぼ人件費(人件費、業務委託費、採用費)と考えてよい。
JDSCの四半期ベースの業績をみると、売上規模は段階的に上昇しているものの、まだ爆発的な増加とはなっていない。ただ、販管費をうまくコントロールして、大きな赤字を出さない収支管理はできている印象だ。売上総利益率は55~65%のレンジに入っている。売上高はSaaSモデルではなく、受注型または共同開発による開発費受領と思われる。前年度の売上高10社のうち、全取引先と取引継続と記載があり、まだ安定した利益モデルではない。いっぽう、新規顧客を32社開拓しており、営業活動も活発と思われる。
■JDSCのサービスは?事業内容は?
JDSCはもともとは日本データサイエンス研究所という名称であり、最新のAIやディープラーニング、データ解析などを活用したテクノロジーサービスを提供している。いまはサービスを提供しているというより、顧客と一緒に開発しているケースが多いかもしれない。
駿台とは学習支援アルゴリズム、イオントップバリュとは需要予測、在庫ロス削減、発注自動化、製薬会社とはオンライン営業ツールの開発・顧客反応の可視化など。
AIプロダクトは、アセスメント(コンサルティング)、PoC(実証実験)、本格導入、安定運用、事業化規模への成長と流れる。JDSCは事業化規模への成長に至るまでの段階でサービスを育てている段階で将来的な事業化(収入化)が期待される。
■JDSCの強みは?
JDSCは経営陣が高学歴、有名企業出身など「優秀」と思われるというのが強みであり、期待されるところ。いまのところ、世の中で役に立つ製品を開発・発売して、インパクトを与えている前段階という認識だ。
代表取締役CEOの加藤氏はマッキンゼー出身(東京大学卒)、取締役の大杉氏もマッキンゼー出身(東京大学卒)など、とにかく東京大学卒業者が多い。アクセンチュア、三菱商事、ソニー、ワークスアプリケーションズ、Google、NTTコムウェアなど一流企業出身者ばかり。
東京大学の教授陣が顧問や社外取締役をしており、共同特許や(教授陣がJDSCに)出資をしている。大手企業ともJoint R&Dを実施しており、将来の成長の種を育てている企業だ(適切な報酬を得ており、JDSC自体は大きな赤字となっていない)。
■JDSCの財務状況は?
JDSCの2022年6月末時点のB/Sをみると、現預金は33.5億円、有形固定資産はほぼ持っていない。有利子負債はゼロで財務は極めて健全だ。資本金(資本剰余金含む)が36.4億円と潤沢だ。
JDSCは2021年12月に東証マザーズに上場し、公募増資と証券会社引受にて約10億円を調達。JDSCは上場前の2020年10月頃にシリーズBラウンドとして約29億円をスパークス、東京大学エッジキャピタルパートナーズ、ダイキン工業、中部電力、SMBCベンチャーキャピタルなどから調達。いっぽう、上場時に215億円をつけた時価総額も株価下落で現在は約80億円となっている。シリーズBラウンドで出資した人で売り抜けていない場合は含み損を抱えているのではないだろうか。
■JDSCの株価推移は?
JDSCの時価総額は約80億円。DXやAIなどテクノロジー企業として、期待値をどう評価したらよいかわからない企業がJDSCだ。大手企業や有名なベンチャーキャピタルも出資しており、将来的に期待できそうな気もするものの、なかなか事業が育たず、ここから数年間、株価が低空飛行する可能性もゼロではない。現時点では投資家のほとんどは含み損を抱えているだろう。
ただ、将来的な先行きがわからないために、事業の成長性が見えたときには数倍に株価が跳ね上がる可能性がある。時代的にデジタルを活用できる企業で、Googleのように自社でサービスを生み出すことができれば、時価総額300億円、1,000億円、2,000億円と跳ね上がる期待はある。
同じように将来が期待される企業としてはFRONTEO(時価総額:約320億円)、ニューラルポケット(時価総額:約140億円)、オプティム(時価総額:約470億円)、ダブルスタンダード(時価総額:約340億円)、ブレインパッド(時価総額:約200億円)がある。なお、これらの多くの企業は、ここ2年以内に株価が数分の1になっているケースが多い。ニューラルポケット、オプティム、FRONTEOは1年間で約3分の1。
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以 上