家賃保証で赤字転落のCasa(カーサ)、将来的には家賃滞納減少につながるか?

 賃貸アパートなどでの家賃保証サービスを提供しているCasa(カーサ)。20年以上前までは連帯保証人などが一般的だったものの、現在は家賃保証会社を通して契約するのが一般的になっている賃貸契約。Casaは順調に契約件数を増やしているものの、紹介手数料の増加により赤字転落となってしまった。今後の業績と株価はどうなるのか?

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■基本情報(2023年6月9日時点)

  • 株価:853円(10年来高値:1,660円)
  • 時価総額:96億円
  • 予想PER:15.6倍
  • PBR:1.33倍
  • 予想配当利回り:3.51%
  • 自己資本比率:44.8%
  • 会計基準:日本基準
  • 株主数:15,297人(2023年1月31日時点)

■Casaの業績は?

 Casaの2024年1月期の第一四半期の売上高は27.2億円(前年同期比+6.6%増)、営業損益は△1.4億円(前年は+45百万円の黒字)と増収赤字転落となった。Casaの売上総利益率は+43.9%(前年は+52.0%)と悪化している。

 Casaの売上総利益は前年同期の13.3億円→12.0億円と△1.3億円のマイナス。いっぽう、販管費は前年の12.8億円→13.4億円と+0.6億円の増加となり、差し引きで1.9億円の悪化となった。売上規模が増えているため、販管費の増加は理解できるものの、売上総利益の悪化が悩ましい。

■売上総利益悪化の要因は?

 Casaの売上総利益が悪化している理由は、①ダイレクトSという金融審査を伴う家賃保証の可否の審査を強化している点、②家賃滞納の増加、の2つが理由だ。

 ダイレクトSはCasaの力を入れている信用情報を活用した商品で、将来的な家賃滞納する予備軍の契約を防ぐ目的がある。このダイレクトSを活用した件数は前年同期の1,742件→4,435件に大きく増えている。このダイレクトSは、通常の審査商品の紹介手数料が10~20%に対して、20%以上の紹介料となっており、この紹介料手数料の構成比率の変更がCasaの業績に大きく影響し、約1億円の売上原価増の理由になっている。

 ダイレクトSを活用すると、求償債権比率が8.5%→1.2%に減少するため、将来的な売上原価の減少につながることになる。いっぽうで、ダイレクトSを活用すると、信用情報に傷のある顧客と契約ができず、これまでのような売上増の成長感を演出できなくなるリスクもある。

■家賃滞納が増加中!

 もう一つの売上総利益悪化の要因は貸倒引当金の増加だ。Casaの保有契約件数が前年同期の57.1万件→59.8万件と+5%増加しており、その影響があるが貸倒引当引当金繰入額は7.4億円→8.7億円と前年同期比+18.4%増となり、保有契約件数以上に家賃滞納がおこっている。コロナ禍や物価上昇などにより、家賃を滞納する契約者が増えていると思われる。

 Casaの求償債権割合は8.5%前後で推移しており大きく増加していないものの、すでに40.7億円まで増えており、求償債権割合は安定しているものの、求償債権額の40.7億円は過去最高の金額となっている。求償債権のだいたい7割くらいは貸倒引当金を計上しており、想定以上に回収できないと追加の売上原価増となる。

■Casaの財務状況は?

 Casaの2023年4月末の財務状況をみると、現預金は28.7億円、のれん27.3億円、繰延税金資産27.6億円が主な資産。負債をみると、有利子負債が42百万円と少なく、契約負債(前受金)が54.9億円となっている。家賃保証を前払いでもらっている分が契約負債となっている。財務的には健全な範囲だ。

 Casaの2023年1月期のキャッシュフロー計算書をみると、営業CFは+11.7億円、投資CFは△3.0億円、財務CFは配当金支払いなどがあり△3.9億円となり、現預金は+4.7億円の増となっている。Casaは日本基準で決算を公表しており、のれんの償却費が年間で約2.7億円発生し、キャッシュアウトしない償却費がだいたい+3.5億円くらいあり、利益以上に営業CFがプラスにでてくる傾向がある。

■Casaの株価推移は?

 Casaの時価総額は約100億円。株価チャートをみると、ゆるやかな右肩さがりであるものの、予想配当利回りやキャッシュフローを割安感は感じる。しかしながら、2024年1月期の1株当たり当期純利益(EPS)は54.5円であり、現在の株価853円をみると、それほど割安感を感じない。業績予想も下期に若干無理している予想であり、EPSの上振れを予想することは難しそうだ。

 経済全般をみると、物価上昇などで家賃滞納する人がもう少し増えそうな気がしており、大きくCasaの業績が回復するとは思えない。信用情報を頼りにするダイレクトSを活用して契約を結ぶと、当面の売上高の成長は期待できないのではないだろうか。

(画像1)Casaの株価推移

以 上

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