「ビッグデータ・人工知能で世界を進化させる」というビジョンをかかげるユーザーローカル。同社は「User Insight(ユーザーインサイト)」などのサービスにより、WEB解析ツールの提供やFacebook、Twitter、YouTubeなどソーシャルメディアのマーケティングを管理するサービスを提供しているIT企業。年間20%~30%の勢いで成長する企業であるものの、売上高規模は20億円にとどかない。ユーザーローカルの株価の行方はどうなるのか?
■基本情報(2020年7月10日時点)
- 株価:3,785円
- 時価総額:296億円
- 予想PER:77.1倍
- PBR:7.61倍
- 予想配当利回り:0%
- 自己資本比率:91.6%
- 会計基準:日本基準
■ユーザーローカルの業績と株価の評価?
ユーザーローカルの2020年6月期の第三四半期の売上高は12.1億円(前年同期比+24.4%)、営業利益5.3億円(前年同期比+29.5%)と増収増益。現在の業績予想では売上高は16億円を見込んでいる。ユーザーローカルは年間で20%を超える成長で、営業利益率も約44%と高収益だ。ユーザーローカルの株価の行方で心配になるのは、目指す市場の規模はどのくらいあるか見えてない点だ。
現在の20億円弱の売上規模が100億円~500億円くらいに成長するのであれば、現在の時価総額300億円はそれほど高い評価ではない。市場規模が大きくなく、数年後には成長性が停滞してしまう場合、現在の時価総額300億円を維持することはむずかしい。
たとえば、ホテルなどに予約管理システムを提供している、手間いらずの売上高は17億円、営業利益は11億円で時価総額は約270億円。投資不動産サイト「楽待」を運営するファーストロジックの売上高は17億円、営業利益8億円で時価総額は約73億円。とくにファーストロジックは成長が停滞しているため、ユーザーローカルの成長が停滞したときの株価(時価総額)の参考にできる企業のひとつ。ファーストロジックも5年前、時価総額250億円を超えていた。
■ユーザーローカルの事業内容は?
ビッグデータ関連やAI関連といわれるユーザーローカルは、どのような事業をしているのだろうか?たとえば、「User Insight」というWebサイト分析を提供している。このサービスは、パソコンやスマホサイトの使いやすさを改善するため、どこが熟読されたか、エリアごとの閲覧率、どこがクリックされたか、などの分析情報を解析できるツールだ。
「Social Insight」は、ソーシャルメディアを分析できるツールだ。Twitterやfacebook、YouTubeなどのソーシャルメディア上のキーワード分析や将来のPV(ページビュー)、ファン数などの伸びを自動予測できるサービスなどを提供している。そのほかには、AIアルゴリズムを活用した姿勢推定AI(スポーツなどに活用)、視線推定AI(カンニング防止)、顔認識、自動要約、画像加工などのサービスの拡充をすすめている。将来的には自動運転、業務自動化などの領域までサービスを広げていく構想だ。
■心配なのは市場規模、今後、どこまで成長するのか?
ユーザーローカルは成長性と収益性が高いものの、事業規模が小さい。これが心配な点であり、将来の株価を決める重要なポイントだ。ビッグデータやAIというと新しい技術、夢がある、近未来的というイメージがあるものの、どこまで顧客よりお金をもらえるビジネスモデルを作れるかがネックになる。なんとなくスゴいサービスのように思うものの、事業者にとって不可欠なサービスになるのだろうか?売上規模は200~500億円を狙うことができるサービスなのだろうか、現時点では見えないことが多い。
もうひとつ心配なのは、サービスの無料化や低価格化の波。数年前とくらべると、さまざまなインターネット上の便利なサービスやツールが無料になってきている。たとえば、地図アプリ(Googleマップ)、動画視聴(YouTubeなど)、スマホのボイスレコーダーなど。ユーザーローカルの提供できるサービスが、今後も差別化しつづけることができるのか?
■ユーザーローカルの株価推移は?
ユーザーローカルの株価は大きなボックス圏のなかを行き来している。上場直後に最高値をつけ、そこを突破できずに現在にいたる。現在の時価総額は約300億円、予想PERは77倍であるものの、将来の成長をどうみるか次第だ。やはり、株価の行方は市場規模をどうみるかで判断はかわる。時代がまだユーザーローカルに追いついていないのだろうか?
以 上