マーケティング調査のマクロミル(3978)、再上場後の株価下落が止まらない!

 インテージ(4326)と並び、日本を代表するマーケティング調査会社のマクロミル。2014年にベインキャピタルによるTOBにより上場廃止になり、その後、M&Aを繰り返して利益体質をつくり、2017年3月に東証一部に再度上場した。上場廃止前に時価総額500億円でTOBされ、2017年の再上場時には時価総額は約700億円をつけた。最盛期の時価総額は1,000億円を超えたものの、2020年7月3日時点の時価総額は約300億円まで下落している。業績はそれほど悪くないように見えるものの、なぜここまで株価は下落するのか?

■基本情報(2020年7月3日時点)

  • 株価:716円
  • 時価総額:289億円
  • 予想PER:12.0倍
  • PBR:0.87倍
  • 予想配当利回り:1.53%
  • 自己資本比率:39.9%
  • 会計基準:IFRS基準

■それほど悪くない業績、B/Sが心配か!?

 マーケティング調査のマクロミル。2020年6月期の第三四半期の売上高は336億円(前年同期比△2.0%)、営業利益60.5億円(前年同期比△11.4%)と減収減益となった。この減収減益については、決算説明資料によると、新型コロナウイルスの影響などにより、顧客のリサーチ関連の支出減少が影響していると説明されている。たしかに減収減益と悩ましい点はあるものの、営業利益率は+18%と悪くない。時価総額が約300億円というのは少し過小評価されていないだろうか?

 マクロミルの決算資料で気になるのは自己資本比率が約40%と調査会社としては、それほど高くない点だ。2020年3月末時点のB/Sをみると、のれんが468億円、その他の無形資産が71億円計上されていて、あわせると539億円。そして、借入金は341億円。設備投資などの大きな資金需要が必要でない調査会社のマクロミルは大きな財務負担を抱えながらビジネスを運営しているのが現在の状況だ。なぜ、ここまで大きな、のれんと借入金を抱えているのか?

 マクロミルの2014年の上場廃止時にLBO(Leveraged Buyout)が活用されたと思われる。細かい説明は割愛するが、マクロミル自身が大きな借金とのれんを抱える買収スキームだ。

■上場廃止後からM&Aで事業拡大!そして再上場へ

 2014年の上場廃止前のマクロミルの業績は売上高214億円、経常利益23億円だったものの、2019年6月期には売上高443億円、営業利益78億円と急拡大をつづけている。マクロミルの時価総額の推移をみると、上場廃止時は約500億円で買収され、2017年の再上場時は約700億円、2020年7月3日は約300億円となっている。上場廃止時よりも大幅に業績が改善しているものの、会社の価値は下がっている状況だ。

 マクロミルは2014年4月の上場廃止後からM&Aを積極的に実施してきた。2014年10月にはオランダのMetrixLabを約170億円で買収。2017年10月には米国のActurus, Inc.を完全子会社化。2018年にはセンタン子会社化(51%保有)、東京サーベイ・リサーチの51%を取得。2019年にはW&Sホールディングスの子会社化(51%保有)と積極的にグループ拡大をすすめている。

 このような積極的な買収により、表面的には売上高と営業利益が大幅に拡大しているように見えるものの、買収額が買収する会社の自己資本を大幅に超えていたため、のれん代としてマクロミルのB/Sに計上される形となった。また、買収資金の原資としては借入に頼っている。マクロミルは会計基準としてIFRS基準を適用しているため、のれん代などの約500億円は償却費(費用)として計上する必要はない。もし日本基準を適用していたら、10年間で償却する前提で考えると、営業利益を40~50億円押し下げる。株式市場としては、これらの状況を織り込んでいると考えることも可能だ。

■マクロミルの株価推移は?

 マクロミルの株価は下落トレンドがつづいている。表面上の業績をみると、売上高と営業利益が成長していて、なぜ株価が下落するか見えてこない。B/Sに巨額ののれん代と借入金が計上されており、のれん代の減損リスクと財務状況の悪化を織り込んでいるのが現状だ。しかしながら、時価総額が300億円を割るところまで落ちてきており、このあたりで下げ止まる可能性はもちろんある。もう少し株価の推移を見守る必要がありそうだ。

以 上

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