住宅ローン専門金融機関のARUHI(アルヒ)、営業収益は前年割れに!

 住宅ローンのフラット35を専門で取り扱っている住宅ローン専門金融機関のARUHI(アルヒ)。金融機関であるものの、普通の住宅ローンを取り扱う都市銀行、地銀、ネット専門銀行などとも異なる独特なビジネスモデルに取り組んでいる。正直なところ、金融機関というよりも住宅ローンの仲介会社という理解のほうが正確ではないだろうか?ARUHIのビジネスモデルと株価の行方はどうなるのか?

■基本情報(2021年12月24日時点)

  • 株価:1,019円(10年来高値:3,005円)
  • 時価総額:368億円
  • 予想PER:6.3倍
  • PBR:1.16倍
  • 予想配当利回り:5.88%
  • 自己資本比率:20.4%
  • 会計基準:IFRS基準

■ARUHIの業績は?

 ARUHIの2022年3月期の第二四半期の営業収益(売上高に相当)は130億円(前年同期比△1.8%減)、税引前利益は33.2億円(前年同期比△16.5%減)の減収減益となった。ARUHIの税引前利益率は+25.5%(前年同期は+30%)と高い。

 ARUHIの営業収益の内訳をみると、住宅ローン事業が全体の約8割の100.8億円(前年同期は108.9億円)、その他事業は29.5億円(前年同期は23.8億円)となっている。住宅ローン事業は停滞しているものの、その他の事業で挽回しているものの、挽回しきれず前年同期比マイナスとなった。

■ARUHIのビジネスモデルは?

 ARUHIのビジネスモデルはホームページなどでも詳しく述べられていないので、一部推測も入ってしまう。住宅ローン事業の融資実行業務が最大の稼ぎ頭で、主にフラット35の仲介業務による手数料収入だ。ARUHI自身は住宅ローン債権を持つことなく、住宅金融支援機構(JHFA)がすべて買い取っている。ARUHIとそのフランチャイズ店が住宅ローンを組む個人から手数料(融資額×1.1%など)を受け取るビジネスモデルとなっている。

 債権管理回収業務は住宅支援機構などから受託している住宅ローンの回収管理の業務だ。いわゆる受託業務だ。受託している債権(サービシング債権残高)は4.8兆円、管理顧客数は20.5万人を突破している。

 このように普通の金融機関の住宅ローン業務とは異なり、住宅ローンに特化した仲介業務や業務受託をARUHIはおこなっている。なお、フラット35の実行件数のシェアは29.1%と約3割を占め、業界トップとなっている。

■注意すべきARUHIのビジネスモデル!

 ARUHIは住宅ローンの金利の利ザヤから収益を得ているわけではないので、サブスクリプション型のような安定した収益が約束されたビジネスモデルとなっていない。住宅市場が大きく落ち込み販売が不調になったときにはARUHIの業績も一気に悪化するリスクを抱えていることを忘れてはいけない。

 リーマンショック後の住宅市場を支えてきたのは、世界的な量的緩和政策の結果。日本の住宅価格も堅調に上昇を続けてきたのは、日銀の低金利(マイナス金利含む)政策の結果であり、市場にあふれたお金と低金利が住宅価格の高騰をもらたした。住宅価格の高騰にともない、ARUHIの住宅ローン手数料が大きく増加したのも事実である。

■ARUHIの株価推移は?

 ARUHIの時価総額は約370億円。株価指標的には予想PER6.3倍、予想配当利回り5.9%となっており、きわめて割安な水準だ。株式市場はこれからの住宅市場の低迷を先に織り込んでいると言えなくもないレベルまでARUHIの株価が下落している状況だ。

 ARUHIが住宅ローン残高にともない収益をあげていくビジネスモデルであれば期待が持てるものの、住宅ローン契約の仲介に終始する現在では大きな期待を持つことはできない。いまは確かに高収益であるものの、事業規模が2倍~3倍に増加する可能性はきわめて低い。いまは変動金利(フラット35以外)が約7割の住宅ローン市場と言われており、長期金利の上昇にともない固定金利であるフラット35の使用率は増加すると思われるものの、取扱が2倍~3倍に増える可能性はそれほどないかもしれない。

(画像1)ARUHIの株価推移

以 上

 

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