IFRS基準発表のライフネット生命保険、赤字業績が一転、大きく黒字決算に変化!

 インターネットを活用した生命保険を提供しているライフネット生命保険(以下、ライフネット生命)。これまで日本基準で決算を発表してきたものの、2023年度から国際財務報告基準(IFRS基準)を任意適用する。その結果、決算の赤字数値から黒字数値に変わり、事業の状況の見え方が大きくかわる。事業はまったく変わっていないものの、結果が大きく変わるため、株価には大きな影響がでるのではないだろうか?

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■基本情報(2023年5月19日時点)

  • 株価:885円(10年来高値:1,785円)
  • 時価総額:617億円
  • 予想PER:11.6倍
  • PBR:3.96倍
  • 予想配当利回り:0%
  • 自己資本比率:22.7%
  • 会計基準:IFRS基準(2023年度より任意適用)
  • 株主数:5,274人(2022年3月31日時点)

■ライフネット生命の業績は?

 ライフネット生命の2023年3月期の売上高は303億円(前年比+15.7%増)、経常損益△49.5億円(前年は△32.4億円のマイナス)と増収赤字幅拡大となった。しかしながら、これらの数値は日本基準での報告であり、2023年度から適用するIFRS基準でみると、数値は大きく異なる。

 2022年度の業績をIFRS基準でみると、保険収益は207億円、当期利益は35.8億円となる。いままでの赤字から大きな黒字に転換され、株主としては何が起こっているのか理解できないだろう。2023年度の業績予想は、保険収益249億円、当期純利益は53.0億円の予想となる。

■IFRS基準の影響は?

 ライフネット生命がIFRS基準を適用すると大きな黒字になるが、その理由はどういうものだろうか?詳しい修正点は決算説明資料でも説明されておらず不明点が残るものの、将来の利益と費用の計上時点が異なるという損益認識のタイミングが大きく異なることが要因だ。

 細かいことを除くと、日本基準では責任準備金等繰入額というものを計上しており、2022年度で74億円の費用を計上している。この費用をIFRS基準では認識しなくてよいというのが大きな違いと考えている。

■ライフネット生命の事業状況は?

 ライフネット生命の保険保有件数は56.8万件と前年比+12.1%増。成長率は鈍化しているものの、年間で約6~7万件が純増となっている(解約失効の件数もあるため)。

 ライフネット生命のEEV(保有契約の将来利益の累積金額)は1,246億円と前年末の1,166億円から約80億円ほど増加している。このEEVは、現在の契約保険の将来までの利益を合計したもの。

 ライフネット生命は顧客から預かった保険料を金融資産などで運用している。2023年3月末時点で、現預金は57億円、債権45億円、有価証券456億円(国債76億円、社債250億円など)となっている。リスクとしては、今後、国債や地方債などの金利が上昇することによって、これらの債権価額が下落する可能性があるという点に留意が必要だ(しかしながら、他の生命保険よりも、そのリスクが低いというのがライフネット生命のセールスポイントでもある)。

■auじぶん銀行の団体信用生命保険スタート!

 ライフネット生命は2023年7月1日より、auじぶん銀行の団体信用生命保険の取扱いをスタートする。この取り組みによって、保険契約は確実に増えることが予想される。auじぶん銀行の住宅ローンは急成長しており、その団体信用生命保険のどのくらいのポーションを担当するか不開示であるものの、大いに期待できる取り組みだ。

■ライフネット生命の株価の行方は?

 ライフネット生命の時価総額は約600億円。2023年5月11日に決算発表とIFRS基準の任意適用を発表してから、株価は2割以上も下落している。これは大きな想定外で、2023年度から利益がでるとアナウンスしたものの、株価が大きく下落してしまった。

 株価チャートをみると、すでにIFRS基準の任意適用を想定して株価は上昇し、材料出尽くしで下落しているイメージだ。しかしながら、ライフネット生命の2023年度の1株あたりの税後純利益(EPS)は76円であり、それに予想PER20~25倍をかけると、予想株価は1,520円~1,900円と算出できるため、将来的には株価は上昇していくと思われる。

 ただし、これまでの利益剰余金が△271億円のマイナスであり、たとえ、資本準備金(217億円)を振り替えても、日本基準の利益剰余金は黒字にならないため、当面、配当を出すことはできないだろう。

(画像1)ライフネット生命の株価推移

以 上

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