レディース向けのレンタルファッションサービス「airCloset」を展開しているエアークローゼット。2023年6月期の業績を大幅に下方修正した。下方修正の理由をみると、コロナの影響をいまだに理由付けしており、コロナ禍で業績回復している企業とは説明が異なる。2022年7月29日に上場したばかりで、当初に大風呂敷を広げ過ぎたのだろうか。今後のエアークローゼットの業績と株価はどうなるのか?
会員数横ばいのレンタルアパレル「airCloset」展開のエアークローゼット、成長軌道にのるのか?(2023年2月19日投稿)
月額制洋服レンタルサービスのエアークローゼット(airCloset)、熾烈な競争の行方は?(2022年11月26日投稿)
■基本情報(2023年5月19日時点)
- 株価:375円(10年来高値:1,250円)
- 時価総額:30.7億円
- 予想PER:ー(赤字)
- PBR:4.52倍
- 予想配当利回り:0%
- 自己資本比率:25.3%
- 会計基準:日本基準
- 株主数:1,736人(2022年12月末時点)
■エアークローゼットの業績は?
エアークローゼットの2023年6月期の第三四半期の売上高は27.1億円(前年同期比+11.9%増)、営業損益は△1.4億円(前年同期は△1.1億円)の増収赤字幅の拡大となった。エアークローゼットの売上総利益率は+47.4%(前年同期は+48.3%)と悪化傾向。2021年6月期の売上総利益率は+50.4%、2022年6月期は+49.3%、今回は+47.4%と粗利率が減少している。
エアークローゼットの売上総利益は、前年同期は11.7億円→12.8億円と+1.1億円の増加、販管費は前年同期12.8億円→14.3億円と+1.5億円の増加となり、差し引きで約0.2億円の損益悪化となった。売上総利益の伸び率に対して、販管費の伸びのほうが大きいのが課題だ。戦略的に、販促費(広告宣伝費ほか)の投入により売上高の成長を利益よりも優先して、市場シェアを高める戦略があるものの、エアークローゼットの売上高の伸びがそれほど大きくない。
■エアークローゼットの下方修正の理由は?
エアークローゼットは2023年5月15日に決算発表とともに、通期業績予想の下方修正を発表した。業績下方修正の理由をみると、①そもそも予想の成長に大きな成長期待を織り込んでいた、②会員登録の設定が時間がかかっているのがわかった、③サーバートラブルによる広告活動の未実施、と理由を説明している。
しかしながら、いずれも自社の要因で未達になっており、適切な説明とは思えない。顧客のサービスに対する総需要が大きく後退していないか分析できていない時点で、適切な対策は打てないのではないだろうか。
■エアークローゼットの顧客動向は?
エアークローゼットの利益構造をみると、悩ましい事業の状況がより見えてくる。売上総利益率は+45%前後で推移しているものの、広告宣伝費を年間で6~8億円くらい投入しないと顧客数の維持ができない状況だ。
顧客数は3.3万人と前年同期比で+3.7%の微増にとどまっている。顧客数の伸び+3.7%に対して、売上高の増は+11.9%と大きい理由は、2022年9月14日から価格改定をした影響と考えられる。問題は顧客数がこの3年間でそれほど伸びていない点だ。上場時の成長可能性資料では「月額会員の年次累積とCAC回収期間」という資料で顧客の維持率をグラフで表示していたものの、現在は表示されていない。かなり、解約率が高いサービスと推測する。
■エアークローゼットの利益構造は?
エアークローゼットの利益構造をみると、粗利に対して、広告宣伝費の投入を止めることができない構造になっており利益がでにくい。事業規模をいまの1.5倍くらいまで拡大しないと利益はでないのではないだろうか。エアークローゼットのアパレルの月額サブスクリプションサービスは競合他社も多く、なかなか競争がはげしい。
2023年4月からは宅急便の配送料がさらに値上がりし、1回あたりの返送料330円をもらっていることもサービス利用の足かせになる。なお、エアークローゼットの従業員数は66名、平均年齢30歳、年収は474万円とそれほど高くない。
■エアークローゼットの財務状況は?
エアークローゼットの2023年3月31日時点の財務諸表をみると、現預金は15.1億円、レンタル用資産は4.3億円(2022年6月30日は2.3億円)。いっぽう、有利子負債は15億円と財務的には余裕がない。現在の自己資本比率は25.3%で純資産は6.8億円にとどまる。
かりにレンタル用資産4.3億円の減損を実施すると、純資産は2.5億円まで減少し、きびしい状況となる。そもそも、資本金と資本剰余金を合計すると30億円ほど投入しており、現時点まで累積で△23億円の赤字を計上している。事業モデル的に本当に成功するのか疑問が残る。
エアークローゼットのキャッシュフロー計算書をみると、営業CFと投資CFを合算するフリーキャッシュフロー(FCF)をみると赤字が続いている。銀行借入、上場時の資金調達など財務CFによる資金調達をしないと継続できていない状況だ。
■エアークローゼットの株価推移は?
エアークローゼットの時価総額は約30億円。株価も右肩さがりとなっている。残念ながら、洋服レンタルサービスは、2018年にZOZO「おまかせ定期便」、アオキ、レナウンなどもファッションレンタルサービスを展開したものの、数年で撤退している。サーキュラーエコノミー(循環経済)やリサイクルなどサステナビリティというコンセプトは良いものの、事業として採算が取れるレベルまで持っていけるか課題が残る。正直、ここから株価が半値になるケースもあり得るかもしれない。
以 上