BtoBプラットフォームの「スーパーデリバリー」や売掛金保証の「URIHO(ウリホ)」などの保証事業を展開しているラクーンHD。売上規模は順調に改善しているものの、広告宣伝費や人件費など販管費の増加により営業利益は前年割れとなった。新型コロナウイルスの感染拡大の特需を背景に、株価は2020年半ばから5倍くらい上昇していたものの、高値から半値以下のところまで戻ってきた。ラクーンHDの業績と株価の行方はどうなるのか?
「スーパーデリバリー」のラクーンHD、利益前年割れで株価下落つづく!(2021年9月4日投稿)
BtoB仕入れサイト「スーパーデリバリー」のラクーンHD、業績好調つづく!(2021年3月6日投稿)
■基本情報(2021年12月3日投稿)
- 株価:1,155円(10年来高値:3,320円)
- 時価総額:258億円
- 予想PER:37.1倍
- PBR:4.97倍
- 予想配当利回り:1.73%
- 自己資本比率:39.7%
- 会計基準:日本基準
■ラクーンHDの業績は?
ラクーンHDの2022年4月期の第二四半期の売上高は23億円(前年同期比+6.8%増)、営業利益は5.0億円(前年同期比△23.9%減)の増収減益となった。ラクーンHDの売上総利益率は+83.0%(前年同期は+85.3)、営業利益は+22.0%(前年同期は+30.8%)と営業利益率が大きく悪化している。
営業利益率悪化の要因は広告宣伝費(+1.0億円)と人件費(+0.9億円)の大幅増だ。ラクーンHDの決算説明資料によると先行投資という位置づけであるものの、広告宣伝したものの想定していたよりも売上高が伸びなかった可能性もある。ラクーンHDのEBITDAの変動分析を見ると、売上高増による増収影響は+1.5億円と広告宣伝費や人件費の増加をカバーすることができていない。
■具体的な事業の状況は?
ラクーンHDのEC事業を見ると、流通総額は四半期ベース50億円超で推移している。新型コロナウイルスの感染拡大でマスク・除菌グッズなどの特需で四半期ベースで30億円前後だった流通総額は一気に50億円前後まで上昇。株価のこの売上規模のステージ変更により一気に6倍くらい上昇することとなった。
いっぽうで、四半期ベース50億円が大きな壁になり、次の60億円が見えてくる様子がないのが実のところ。EC事業の出店企業数を見ると、3,000社を突破し着実に増加している。コロナ前とくらべると、ほぼ倍増している状況だ。いっぽうで1店舗あたりの購入単価をみると、過去最高の26万円から約21万円まで下がっている。購入顧客数は増えているものの、単価が下がっている傾向がつづいている。
■事業を牽引する「URIHO(ウリホ)」!
ラクーンHDのフィナンシャル事業は、保証事業、決済事業、家賃保証事業の3つの事業に分かれている。2022年4月期の第二四半期で9.9億円の売上高、営業利益は2.2億円だ。売上高は増加傾向が続いているが、それほど勢いがあるわけではない。
決済事業の「Paid」は取扱高が四半期ベースで約80億円と安定した成長を示している。売掛保証の残高は260億円となり、コロナ前と比べると+100億円増加の状況だ。家賃保証の保証残高は70億円前後で推移している。
若干心配になるのは、ラクーンHDの貸倒引当金は1.8億円しか計上していない点だ。売掛金保証と家賃保証を合計すると約330億円ほどの保証残高があるものの、貸倒引当金1.8億円が十分な額か判断ができない。
■ラクーンHDの株価推移は?
ラクーンHDの時価総額は約260億円。現在、年初来安値を更新している状況であり、いまが最安値である可能性は小さい。まだまだ下がる可能性は十分ありえることに留意が必要だ。いっぽうで、ラクーンHDは積み上げ型のビジネスをしているため、収益が一気に悪化する可能性はそれほど高くない。心配になるのは貸倒引当金の計上が妥当かどうかくらいだ。
アフターコロナで一気に成長の波に乗ったため、株価は大きく上昇。ここからは反落の影響がどこまで株価に織り込まれるのか注意が必要だ。
以 上