ソフトウェアテストのSHIFT(シフト)、計画上回る水準で大幅高!

 ソフトウェア品質保証(ソフトウェアテスト)の分野で成長しているSHIFT(シフト)。連結従業員数は6千人を突破し、エンジニア数は5.4千人まで増加。ソフトウェアテストのアウトソーシングという新しい市場を作り成長を続けている企業だ。前年同期比で+50%を超える成長を見せており、注目される企業のひとつ。2020年3月のコロナショック後の株価下落から株価は一時3倍まで上昇。今後の業績と株価の行方はどうなるのか?

ソフトウェアテストのアウトソーシングのSHIFT(シフト)、収益性の回復の行方は?(2021年1月9日投稿)

■基本情報(2021年4月9日時点)

  • 株価:15,000円(10年来高値:19,070円)
  • 時価総額:2,646億円
  • 予想PER:125.6倍
  • PBR:12.91倍
  • 予想配当利回り:0%
  • 自己資本比率:64.5%
  • 会計基準:日本基準

■SHIFTの業績は?事業内容は?

 SHIFTの2021年8月期の第二四半期の売上高は203億円(前年同期比+58.1%増)、営業利益14.9億円(前年同期比+19.8%増)の増収増益となった。SHIFTの売上総利益率は+29.1%(前年同期は+32.8%)、営業利益は7.3%(前年同期は+9.7%)、前年同期にくらべて収益性は悪化している。

 SHIFTはITクラウドサービスのfreee(フリー)、Sansan、ラクス、マネーフォワード、サイボウズなどのように新興IT銘柄として株式市場で高く評価されているものの、これらのクラウドサービスを展開している企業とは事業内容がまったく異なることに注意が必要だ。SHIFTはあくまでソフトウェアテストのアウトソーシング事業であり、エンジニア派遣のビジネス。そのため、SHIFTの売上総利益率は+30%前後とそれほど高くない。

 freee(フリー)などのクラウドサービス企業の売上総利益率は+60%~+80%と高く、売上規模の上昇とともに爆発的に営業利益が増えるビジネスモデルとなっている。SHIFTの表面上の事業内容をみると、最新のITビジネスのように見えてしまうが、実質はエンジニア派遣・ソフトウェアテスト受託というビジネスだ。

■SHIFTの売上総利益率の構成は?

 SHIFTは決算説明資料に力を入れているので、事業状況を把握しやすい。SHIFTの業績を見るときに注意すべきなのは売上総利益率だ。SHIFTは「テスト案件」「高付加価値サービス」「開発案件等」の3つに分類して売上総利益率を算出している。売上総利益率の高い「高付加価値サービス」は従事できるエンジニアが限られてしまい、売上総利益率の低い「開発案件等」の構成が増える傾向だ。

 2021年8月期の上期の売上総利益率は+29.1%と前年同期よりも△3.7%悪化となった。SHIFTの事業規模が拡大していく中で、売上総利益率を改善しながら成長スピードを緩めないことはかなり難しい。SHIFTのエンジニアは5千人を超え、未経験者から「高付加価値サービス」に従事できる人材を育ているには相当の時間がかかるからだ。結局、事業規模の拡大とともに収益率が悪化する方向に動くことになる。

■増え続けるSHIFTのエンジニア数!

 SHIFTの連結ベースでのエンジニア数は5.4千人を突破。SHIFTは実質、人材ビジネスのため、事業規模拡大のためにはエンジニア数の増加が必須となる。2021年の売上高目標500億円を達成するためには、エンジニア数6,000人が必要と計画している。2025年の売上高目標1,000億円のときには、従業員数は1.1万人必要だ。本当にここまでエンジニアを集めることができるのだろうか?

■SHIFTの株価の行方は?

 SHIFTは2020年11月に70万株の公募増資を実施して、約100億円の資金調達をおこなった。同時に、53万株の株式売出しを行い、創業者は約85億円で売却している。その当時の株価は14,642円。現在はその水準を上回る株価まで回復している。

 SHIFTの時価総額は約2,600億円(売上高450億円、営業利益34億円)。同業他社とくらべた場合、かなり割高だ。専門技術者の人材派遣事業として考えた場合、テクノプロ・ホールディングスの時価総額は約3,200億円(売上高1,560億円、営業利益170億円)、メイテックの時価総額は約1,670億円(売上高1,000億円、営業利益99億円)、夢真ビーネックスの時価総額は約1,300億円(売上高780億円、営業利益50億円)。

 しかしながら、現在は世界的な金融緩和と財政支出により、適正株価が見ない状況だ。クラウドサービスなどのグロース銘柄と位置付けられた企業の株価は総じて高い。通貨価値の下落と考えれば、以前のPERなどの株価指標で論じても答えがでるわけではないのかもしれない。

(画像4)SHIFTの株価推移

以 上

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