M&A仲介トップの日本M&Aセンターホールディングス、成長つづく!

 M&A仲介業界トップの日本M&Aセンターホールディングス(以下、日本M&A)。1991年4月設立、社員数972名(コンサルタント:568名)の大型のM&A特化のコンサルティング会社。2022年2月に売上高の前倒しという不正会計が明らかになり、株価下落となったが、不正会計が公表される前から株価急落となっていた。日本M&Aの業績と株価はどうなるのか?

■基本情報(2022年5月2日時点)

  • 株価:1,402円(10年来高値:3,785円)
  • 時価総額:4,718億円
  • 予想PER:36.7倍
  • PBR:9.13倍
  • 予想配当利回り:1.14%
  • 自己資本比率:86.1%
  • 会計基準:日本基準

■日本M&Aの業績は?

 日本M&Aの2022年3月期の売上高は404億円(前年比+16.1%増)、営業利益164億円(前年比+7.1%増)の増収増益。日本M&Aの売上総利益率は+59.8%(前年は+61.0%)、営業利益率は+40.7%(前年は+44.1%)と極めて高い利益水準となっている。

 日本M&Aの売上高の約95%はM&A仲介(年間売上高388億円)となっており、残りはTOKYO PRO Market(TPM)という東証プロ市場への上場支援であるJ-AdviserとオンラインM&Aマッチングサイト「BATONZ(バトンズ)」が約5%(年間売上高16億円)となっている。

■日本M&Aの事業内容は?

 日本M&Aは中小企業を中心としたM&A仲介が主な事業内容だ。2022年3月期の成約件数は996件(前年は886件)となっている。この996件は売り手・買い手を別々にカウントしているため、成約案件としては半分の500件程度となっている。それらの売り手・買い手双方から手数料を徴収するビジネスモデルとなっている。

 1件あたりの平均成約単価は約39百万円であり、1案件あたりは80百万円前後とみられる。日本M&Aが仲介する譲渡企業の売上規模は年間売上高20億円以下の中堅・中小企業が9割以上を占める。従業員数は50名以下が85%ほど。昨今の事業継承の流れにのり、中堅・中小のM&Aをサポートする形で成長している。譲渡企業の業種は、最近のIT企業ではなく、建設業界、商社、メーカーなど昔ながらの業種が多い。

 ビジネスモデルとして、さまざまなネットワークから譲渡企業の情報を集めて、仲介するモデル。会計事務所、地方銀行、信用金庫などのネットワークから紹介してもらったり、セミナーなどで譲渡企業と買い手を集客をしている。

■日本M&Aの成長事業は?

 日本M&Aは仲介業以外では、TOKYO PRO Market上場支援と事業譲渡マッチングサイトの「BATONZ(バトンズ)」などを行っている。「BATONZ」を運営する株式会社バトンズには32.46%を出資している。市場調査会社の矢野経済研究所や企業評価総合研究所などにも出資している。

 ただし、あくまで日本M&Aの収益の柱はM&A仲介であり、売上高の95%を占めている。企業の創業者・経営者が高齢化して、いかに事業継承が大切かと10年以上前から言われてきたが、日本M&Aはうまくその流れに乗った形だ。

 なお、TOKYO PRO Market上場支援のJ-Adviser契約は100件を突破し、2022年4月末時点で9社は上場している。上場することにより、信頼度アップ、人勢確保、M&Aでの事業譲渡時の安心感アップの効果が得られると言われる。東証マザーズ(グロース)以上の公開はハードルが高いため、一段低いTOKYO PRO Marketを企業に紹介(仲介)することで手数料を稼ぐモデルだ。

■日本M&Aの不正会計とは?

 2022年2月に売上計上の前倒しによる不正会計が明らかになった。過去に83件におよぶ会計不正があった。経営陣からのプレッシャーに耐え切れなくなった営業担当者が売上計上の契約書をときに偽造して売上計上したというもの。

 日本M&Aは10年間で売上規模を10倍近くまで拡大させており、その成長の根幹は営業力があったと思われる。業績を過度に意識した事業運営となっており、結果的に不正会計に手を出すものが発生したと思われる。ただし、架空の売上を生み出したグレイステクノロジーのケースとは異なり、実態の売上計上を前倒ししたというもので、財務諸表の大きな毀損はないと思われる。

■日本M&Aの株価推移は?

 日本M&Aの時価総額は約5,000億円。一時は1兆円を超えていたものの、世界的な金融緩和の縮小により、グロース銘柄の株価が軒並み下落しており、日本M&Aもその影響を受けている形だ。不正会計が明らかになる前から下落しており、株価は高値から半値以下になっている。

 そもそも、2020年2月頃からのコロナショックで株価は落ち込み、そこから金融緩和拡大によりグロース銘柄が暴騰し、日本M&Aもその流れで株価が大きく上昇していたため、今回の下落は必然と言ってもよいかもしれない。

 いまの日本M&Aの株価に割安感はないものの、割高感もそれほどない。ただし、ビジネスモデル的にITサービス企業のサブスクリプション型ビジネスモデルと異なり、フロー型のビジネスモデル。どこかで成長鈍化により売上規模が落ちると、ここから半値以下の株価になる可能性があるので注意が必要だ。財務状況は健全である。

(画像1)日本M&Aセンターの株価推移

以 上

 

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