エネルギーテックのエネチェンジ、EV充電設備の普及が成長のカギか!?

 電気・ガスなどの料金見直し(比較)サイト「エネチェンジ」を運営しているエネチェンジ(ENECHAGE)。電力自由化にともない新興の電力会社が参入し、その新興会社中心に個人・法人顧客を「送客」するビジネスを展開している。ホームページで集客して、顧客を送り、手数料を稼ぐビジネスモデル。エネチェンジの業績と株価の行方を考えていきたい。

■基本情報(2022年5月27日時点)

  • 株価:555円(10年来高値:4,590円)
  • 時価総額:165億円
  • 予想PER:赤字予想
  • PBR:3.55倍
  • 予想配当利回り:0%
  • 自己資本比率:69.5%
  • 会計基準:日本基準

■エネチェンジの業績は?

 エネチェンジの2022年12月期の第一四半期の売上高は11.0億円(前年同期比+68.1%増)、営業損失71百万円(前年同期は+33百万円)の増収営業赤字転落となった。エネチェンジの売上総利益率は+84%(前年同期は+85%)と高いものの、販管費が大きくカバーできる売上総利益が出ていない。

 エネチェンジの2022年12月期の第一四半期の売上総利益は9.3億円に対して、販管費は10億円(前年同期は5.3億円)と大きい。事業規模は成長しているものの、販管費の伸びが大きく、その内訳が開示されていないため実態の利益構造がわからないのが実情だ。

 売上規模に比例して販管費が伸びるものであれば、モバイルクレーンゲームを運営しているサイバーステップと同じように、限界利益率がそれほど高くない可能性があり、利益が爆発的にでる事業モデルではない可能性がある。そのあたりの仕組みが決算説明資料で開示されていないため、エネチェンジの実情がよくわからないのが実態だ。

■エネチェンジの事業内容は?

 エネチェンジは①プラットフォーム事業、②データ事業、③EV充電事業の3つを行っている。①プラットフォーム事業は家庭(個人)・法人向けの電力ガス会社の切替のための比較サイト「エネチェンジ」を運営している。いわゆる、保険、旅行、住宅ローンなどの比較サイト同様に、提携しているサービス提供している顧客企業に「送客」するビジネスで、そこで契約されたら一時手数料と継続手数料を受け取る仕組みになっている。

 同じようなビジネスモデルでは、旅行比較サイトの「トラベルコ」、不動産賃貸のニフティライフスタイルの「ニフティ不動産」、ポート、じげん、カラダノート、「塾ナビ」のイトクロなど上場企業でも数多くの会社が行っている事業モデルだ。

送客ビジネスのニフティライフスタイル、富士通由来の企業!(2022年3月21日投稿)

マッチングビジネス(送客)のじげん(ZIGExN)、業績は急回復!(2022年2月20日投稿)

 ②データ事業は電力会社向けの電力マネジメントサービスを提供しているとしているものの、具体的な内容は開示されていない。たとえば、エネチェンジが提供している「SMAP DR」というデマンドレスポンスという電力需給の調整がサービスを提供しているとしているものの、具体的な料金体系やサービス内容はよくわからない。

 ③EV充電事業は、駐車場オーナー向けにEV(電気自動車)の充電インフラサービスを提供するもの。日東工業と協業して進めている。2022年12月期の第一四半期の売上高は70.7万円とほとんど売上高がない状態だ。2023年12月期の第二四半期までに3,000台のEV充電設備の受注を目指している。

家族生活をテーマに送客ビジネスを展開するカラダノート、業績と株価の行方は?(2021年3月14日投稿)

■見えないデータ事業の実力

 エネチェンジの①プラットフォーム事業はわかりやすいものの、②データ事業は内容がわかりにくい。ビッグデータ解析を軸としたデータ収集でサービスを提供しているとしているものの、エネチェンジにどこまで優位性があり、どこからデータを調達しているか等、わからない点も多い。

 データ事業の2022年12月期の第一四半期の売上高は2.9億円、そのうち2.2億円はサブスクリプション型の継続課金収益となっている。データ事業の顧客数は50社となっており、前四半期からは増加していない。成長性としては止まっているイメージだ。

■期待されるEV充電事業とは?

 エネチェンジの成長戦略の1つは、電気自動車やプラグインハイブリッド(PHV)向けの充電設備の普及だ。EV充電設備メーカーである日東工業と業務提携し、積極的に展開していくつもりであるが、第一四半期の売上高は70万円にとどまる。

 いかにEV充電運営企業が魅力的であるか決算説明資料で補足している。たとえば、テスラの時価総額113.8兆円(売上高:6.7兆円、EBITDA:1.1兆円)、ChargePoint(米国)は時価総額5,575億円(売上高:301億円、EBITDA:△305億円)、EVgo(米国)は時価総額3,165億円(売上高:28億円、EBITDA:△82億円)など。

 たしかに、電気自動車が普及する未来が見えており、そこでスタンダードになるエネチェンジが作れれば、大きな成長になる可能性は十分ありえる。

■エネチェンジの株価推移は?

 エネチェンジの時価総額は約170億円。一時は時価総額1,000億円くらいまで上昇したものの、バブル的な高騰だったことは間違いないだろう。エネチェンジは2021年12月の株価が下落はじめた段階で公募増資を実施し、39.1億円の資金を調達している。当初は50億円くらい調達見込みだったものの、株価下落により25%くらい手取が減ってしまった。

 エネチェンジの現預金は48億円あるものの、有利子負債は約15億円あり、公募増資の39億円がなければ自己資本比率はかなり小さくなっていただろう。エネチェンジは正直、利益構造がはっきりせず、エネルギーテックとしての実力が未知数というのが正直なところ。EV充電設備の普及は魅力的であるものの、競合他社に勝てるのか、優位性などが今のところ見えないのが感想だ。

 

(画像1)エネチェンジの株価推移

以 上

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