漫画アプリのand factory(7035)、コロナ禍でIoTホテルは苦戦!?

 漫画アプリを中心にスマートフォンアプリ事業とホテルを中心としたIoT事業を展開しているand factory(アンド ファクトリー)。漫画アプリ事業ではスクエア・エニックス、集英社、小学館、ビーグリー(3981)などの大手出版社と提携してビジネスを展開している。いっぽうで、力を入れていくはずだったホテル事業は新型コロナの影響で臨時休業を実施し、ようやく2020年7月1日より営業再開。今後の株価の行方は?

■基本情報(2020年8月7日時点)

  • 株価:898円
  • 時価総額:88億円
  • 予想PER:-(赤字予想)
  • PBR:5.16倍
  • 予想配当利回り:0%
  • 自己資本比率:29.4%
  • 会計基準:日本基準

■and factoryの業績は?

 and factoryの2020年8月期の第三四半期の売上高は22.1億円(前年同期比+44.8%)、営業利益は△0.5億円(前年同期は+1.6億円の黒字)と増収減益だった。and factoryの事業はSmartphone APP事業(漫画アプリ事業)とIoT事業(ホテル・宿泊関連事業)の2つに分かれている。漫画アプリ事業は好調であるものの、ホテル関連事業の赤字が拡大し、全体の足を引っ張っているのが実情だ。現在の売上高内訳をみると、漫画アプリ事業の会社と考えてよいだろう。

■漫画アプリの収益構造が見えてこない!

 and factoryは、スクエア・エニックス、集英社、小学館、ビーグリーなどと電子コミックスである漫画アプリ事業を展開している。漫画コンテンツ自体は出版社などから提供されていることは想定できるものの、and factoryの漫画アプリ事業での稼ぐ仕組みはイマイチ見えてこない。いったい、どのようにして稼いでいるのか?

 決算説明資料をよむと、「課金と広告収益によるマネタイズ」と記載があるものの、出版社などの提携企業との収益の分配が見えてこない。たとえば、「コミックevery」を展開している上場企業のビーグリーの売上高は年間約100億円。and factoryは「コミックevery」以外にも多数の漫画アプリを展開しているものの年間売上高は25億円ほど(漫画アプリ事業のみ)。

 おそらく、提携している出版社が大部分の売上高を分配する仕組みになっているか、漫画アプリ内の広告収益など一部の収益のみがand factoryに入っている契約かもしれない。この部分には開示がされておらず、決算説明資料より推測するしかない。投資家にとっては重要な点で、ビジネスモデルが見えない企業には投資しにくい。

■月間アクティブユーザー数は900万人超!

 and factoryの漫画アプリのMAU(月間アクティブユーザー数)は2020年5月末時点で900万人を突破。この数字をみて心配になるのは、これだけユーザーを獲得していても、and factoryの漫画アプリ事業の売上高は年間で約25億円である点だ。あまりにも規模が小さいのではないか。

 電子コミックスを中心に展開しているビーグリーは、2020年12月期の第一四半期(2020年1月~3月)の売上高は26.8億円(前年同期比+8.9%)、営業利益は4.0億円(前年同期比+144.9%)と絶好調。年間に直すと売上規模は約100億円だ。漫画アプリ事業をand factoryは支えているものの、それぞれの出版社に利益の多くを吸い上げられるビジネスモデルになっていないか心配される。加えて、すでに900万人のユーザー規模の事業であるものの、年間売上高が25億円程度であり市場規模の点で将来性に疑問が残る。

■これからはIoT事業(ホテル事業)か?

 and factoryは漫画アプリ事業をベースにしつつ、力を入れていたのがホテル事業だ。「&AND HOSTEL」の販売用の自社物件を25.4億円で取得し、これからという時に新型コロナウイルスの影響をモロに受けてしまった。IoT事業としては、運営受託している「&AND HOSTEL」は12店舗→10店舗に△2店舗減少。宿泊管理システム「innto」の契約件数は331施設→268施設に△63施設の減少となっている。販売用物件を取得したために、これまでほとんどなかった借入金が30億円を超える金額までふくらみ自己資本比率は29.4%まで下落している。

■and factoryの今後の株価の行方は?

 and factoryの株価は下落トレンドがつづいている。現在の時価総額は約90億円。売上規模が約30億円のため、年間40%を超える成長がいつまで継続するのか見極める必要がある。and factoryの株価へのプラス要素としては、株主優待制度の変更(拡大)だ。ウィルズが展開しているプレミアム優待ポイントが大きく改善され、個人投資家にとってはうれしい変更。and factoryとしても株価をなんとか上昇させたいという意気込みが感じられる。

 and factoryは漫画アプリ事業において、広告費を年間10億円ほど投入している。ある程度の事業の拡大ができれば、広告費の削減も考えられるが、出版社との利益分配というビジネスモデルが見えず先行きの予想はむずかしい。おそらく、出版社それぞれと契約条件が異なるため、and factoryとしては開示したくない(できない)ということか。ここが投資判断においては大きなネックとなっている。

以 上

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