ソフトウェアテストのアウトソーシングのSHIFT(シフト)、収益性の回復の行方は?

 ソフトウェアテストのアウトソーシングで成長しているSHIFT(シフト)。売上高は前年比で+50%を超える勢いで伸びているものの、営業利益は前年比マイナスとなってしまった。2021年1月8日には決算の悪化を受けて、SHIFTの株価は前日比マイナス13.6%と大きく下落。SHIFTとしては2021年8月期、依然として営業利益は前年比+44.%と大幅増を予定している。会社の計画どおりに利益の積み上げは進むのだろうか?事業年度の後半に挽回の手段はあるのか?前回(2020年6月27日)のSHIFT投稿は以下のとおりだ。

ソフトウェアテストのSHIFT(3697)、売上高は50%超で急成長中!

■基本情報(2021年1月8日時点)

  • 株価:12,400円
  • 時価総額:2,187億円
  • 予想PER:103.8倍
  • PBR:10.5倍
  • 予想配当利回り:0%
  • 自己資本比率:67.9%
  • 会計基準:日本基準

■SHIFTの業績は?

 SHIFTの2021年8月期の第一四半期の売上高は94.2億円(前年同期比+54.5%増)、営業利益は5.5億円(前年同期比△8.0%減)と増収減益となった。SHIFTの売上総利益率は+30%前後で、今回は27.5%と前年同期(+32.0%)よりも4.5%の悪化となった。クラウド系のIT企業(freee、ラクス、Sansanなど)は売上総利益率が50%~80%と高く、売上高の拡大とともに爆発的に営業利益が増えるのが特徴。いっぽう、SHIFTはそれほど収益力が高くないものの、クラウド系のIT企業と同様に高PERの時価総額となっている。

■悪化した売上総利益率!売上構成が悪化傾向に

 SHIFTは決算説明資料が充実しており、売上総利益率について詳しく解説されている。その内容をみると、SHIFTではテスト案件(売上総利益率:+29.1%)、高付加価値サービス(同:+62.0%)、開発案件等(同:+16.9%)の3つに分け、売上総利益率が16.9%と低い開発案件の構成比率が9.4ポイントほど上昇したことが要因と説明している。

 つまり、収益率の高い案件がとれず、低収益案件が増えてきていることを説明しており、事業はマイナス方向に進んでいる。現状の営業利益率であれば、2021年8月期の業績予想である売上高450億円、営業利益34億円、営業利益率+7.6%は未達となる。このような結果をみて、2021年1月8日に株価は大きく下落した。

■エンジニア単価が下落転換に!技術力の高い人を採用できない?

 SHIFTのエンジニア単価が下落に転換している。現状は一人あたり約70万円(月間)となっており、そもそも収益性の高いビジネスモデルではない。売上高のベースとなるエンジニア単価が約70万円(平均単価)ということは、会社負担の社会保険など考慮するとエンジニアの額面給与は月間25万円~50万円(手取給与:20万円~40万円)くらいではないだろうか。

 SHIFTの連結エンジニア数は5,000人を突破し、売上規模は約450億円。売上高1,000億円を目指しているものの、この給与水準でエンジニアを倍増させることは可能だろうか?連結エンジニア単価が下落しているということは、技術力のあるエンジニアを採用できていない可能性が高い。そもそも、技術力の高いエンジニアの需要は高く、SHIFTだけが効率よく採用できるわけではない。SHIFTの事業リスクとしては採用リスクが大きく立ちはだかる。売上総利益率の高い案件比率がさがっていることも、エンジニアの技術水準の低下が影響しているのではないか。

■販管費も増加傾向!

 SHIFTは事業規模拡大とともに販売管理費も上昇。売上高の増加による増加した売上総利益額よりも販売管理費が増加している。これが前年同期比での収益マイナスの要因のひとつ。連結ベースでエンジニアを5,000人以上抱えているため、人材管理のための固定費(人事総務、給与計算ほか)が増加している。

■SHIFTの株価推移と今後の行方は?

 SHIFTは2020年11月に98億円(1株あたり13,998円)の増資を実施。株価の高い時点でうまく資金調達している。現時点で増資に応じた株主は含み損をかかえている状況だ。SHIFTの時価総額は約2,200億円。成長性は高いものの、収益性が高いビジネスモデルではないため、かなり過大評価されている。

 ただし、世界的な金融緩和と財政支出の影響により、株式市場はバブル相場に突入している。ここから株価が上昇する可能性も十分あるので、慎重な取引が必要だ。株価チャートを見るかぎり、下落トレンドに入った可能性があるが、引き続き上下にはげしく動くと思われるので、売りも買いも様子見が妥当だ。

 最後に心配なのは、のれんが63億円計上されている。会計基準は日本基準のため償却はしているものの、事業環境が悪化したときに大きな減損を計上する可能性があることに注意が必要だ。

(画像5)SHIFTの株価推移

以 上

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