インターネットサイトを通して雑誌の定期購読ができるサイト「Fujisan.co.jp」を運営している富士山マガジンサービス(以下、富士山マガジン)。新型コロナウイルスの影響による外出自粛をうけて、「巣ごもり消費」による雑誌購読により、足元の業績は改善し増収増益となった。富士山マガジンは紙の雑誌購読だけでなく電子雑誌の販売も展開。ただし、電子雑誌は大手競合が多数入り乱れるきびしい市場環境。富士山マガジンの今後の事業と株価はどうなるのか?
■基本情報(2020年8月28日時点)
- 株価:887円
- 時価総額:29.4億円
- 予想PER:15.9倍
- PBR:2.00倍
- 予想配当利回り:0%
- 自己資本比率:27.4%
- 会計基準:日本基準
■富士山マガジンの業績は?
富士山マガジンの2020年12月期の第二四半期の売上高は24.8億円(前年同月比+17.8%)、営業利益は1.6億円(前年同月比+47.9%)と増収増益。とくに営業利益の伸び率はよかった。富士山マガジンのビジネスの強みはストック型ビジネスである点だ。富士山マガジンは雑誌の定期購読により安定的に収益を計上している。定期購読は一括払いと月額払いがあり、一括払いの影響で貸借対照表(B/S)に大きな預り金(2020年6月末:12.8億円)が計上されている。富士山マガジンの定期購読の平均継続率は70%前後となっている。
■在庫を持たない富士山マガジンのビジネス!
富士山マガジンは、原則として自社在庫をもたないビジネスモデルとなっている。電子雑誌は在庫がないことはもちろんのこと、定期購読であれば在庫を持つ必要がないのが富士山マガジンの特徴だ。出版社向けには定期購読に必要なオペレーションをすべて富士山マガジンで受託可能な体制(制作、販売、配送、顧客管理)を整えている。富士山マガジンの登録ユーザー数は、312万人(2019年6月)から339万人(2020年6月)と+8.8%の増加となっている。
■競争がはげしい電子雑誌市場、今後の行方は?
富士山マガジンは紙雑誌の定期購読と電子雑誌の販売を中心に展開。紙の書籍(雑誌含む)の市場は減少傾向のなか、富士山マガジンのビジネスの行方はどうなるのか?いま電子雑誌では「無料読み放題」が一般的だ。たとえば、「dマガジン(NTTドコモ)」「Tマガジン(TSUTAYA)」「ブックパス(KDDI)」「楽天マガジン(楽天)」「Kindle Unlimited(Amazon)」など大手企業が月額1,000円以下で数百の電子雑誌読み放題という競争が繰り広げられている。富士山マガジンがここで生き残ることはできるのか?
富士山マガジンが狙っているのは電子雑誌のWEBメディア向け配信サービスの展開だ。現在の電子雑誌は紙のコンテンツをPDFにして配信したものが一般的だ。実際にPDF化された電子雑誌をみるとわかるが、かなり読みにくい。雑誌は小説やビジネス書と異なり、絵や図などの「全体の視覚で読む」要素が多く、電子雑誌との相性はあまりよくない。
そのような中、富士山マガジンとしては、スマートニュースなどのニュースアプリ向けのコンテンツ提供が伸びていくと見ている。そのニュースアプリにWEB雑誌記事として掲載するコンテンツの配信(PDF→テキスト化)ができるプラットフォームの構築に力を入れていく姿勢だ。その取り組みを行うため、2018年6月にMAGAPORT(マガポート)という会社を設立している。この事業は電通と共同で行っているものの、現時点では収益化の仕組みなどが見えてきていない。
■富士山マガジンの株価推移は?
富士山マガジンの株価は、これまで下落トレンドがつづいてきた。売上高自体は堅調に増加しているものの、営業利益は2~3億円前後で停滞してきたからだ。現在の時価総額は約30億円。富士山マガジンの予想PERをみると16倍程度と割高な水準ではない。ただ、紙の雑誌は市場規模が縮小トレンドに入っているため、MAGAPORTなどの新しい収益モデルの構築がないと業績の拡大を見通すことはむずかしい。新しい収益の柱が見えるか、引き続きウォッチが必要だ。
以 上