AIインサイド(AI inside)、大口OEM顧客のNTT西日本の契約失う!

 手書き、活字、FAX、写真で撮った書類まで、高精度なデジタルデータに変換するOCRサービスを中心にビジネスを展開しているAIインサイド(AI inside)。2021年4月28日に「大口販売先ライセンスの不更新見込に関するお知らせ」を発表し、主要顧客のNTT西日本の大半のライセンス契約を更新しないことを発表。株価は大きく下落した。AIインサイドの業績と株価の行方はどうなるのか?

手書き文字デジタル化(OCR)のAI inside(AIインサイド)、高い成長性!株高に(2021年1月24日投稿)

■基本情報(2021年5月28日時点)

  • 株価:17,250円(10年来高値:96,000円)
  • 時価総額:675億円
  • 予想PER:235倍
  • PBR:15.62倍
  • 予想配当利回り:0%
  • 自己資本比率:56.3%
  • 会計基準:日本基準

■AIインサイドの業績は?

 AIインサイドの2021年3月期の売上高は46億円(前年比+188.9%増)、営業利益23.6億円(前年比+446.1%増)の大幅な増収増益となった。AIインサイドの売上総利益率は+93.4%(前年は+92.3%)、営業利益率は+51.3%(前年は+27.1%)と高い。

 2022年3月期のAIインサイドの業績予想は、主要顧客であるNTT西日本が大半のライセンスを更新しないため、売上高は36億円(前期比△21.5%減)、営業利益4.5億円(前期比△80.8%減)の大幅な減収減益を見込んでいる。いったい、NTT西日本の契約を失った背景や売上構造はどうなっていたのか?

■AIインサイドとNTT西日本の関係は?

 AIインサイドの2021年3月期の売上高46億円のうち、約45%の21億円はNTT西日本にOEM提供している「おまかせAI-OCR」というサービスだった。AIインサイドとNTT西日本は2019年12月にパートナー契約を締結して、AIインサイドの「DX Suite Lite」というOCRサービスの提供をスタートした。

 NTT西日本は「おまかせAI-OCR」のライセンスを自社顧客に提供できるサブライセンサー許諾をAIインサイドより取得している。大きな流れとしては、AIインサイド→NTT西日本→顧客となっている。「おまかせAI-OCR」の最低利用期間は1年間で、全9,284件のうち7,636件(82%)が2021年5月~6月に「次の契約は更新しない」と表明している。言い換えると、ほとんどの顧客は「おまかせAI-OCR」が業務で役に立たなかったと言っているということだ。

 AIインサイドの売上高の約45%は「おまかせAI-OCR」だったため、2022年3月期は一気に契約がなくなる見込みとなった。これまで継続的に売上計上されるリカーリング売上比率が88%だったものの、その前提が一気に崩れたため、AIインサイドの株価に売りが殺到することとなった。もともと、コロナ禍でDX銘柄やクラウドサービスは株価が高騰していたことと、信用買い残が140億円(36万株)ほどあったため、まれに見る暴落劇を見込み、株式市場で注目を集めることとなった。

■ほかのOEM顧客(NTT東日本、NTTデータ)の動向は?

 AIインサイドはNTT西日本だけでなく、NTT東日本とNTTデータともOEM契約を締結している。NTT東日本には「AIよみとーる」、NTTデータには「NANATSU AI-OCR」というサービスで、実質はAIインサイドの「DX Suite Lite」というOCRサービス。AIインサイドの決算説明資料を見るかぎり、NTT東日本とNTTデータはライセンス数が少なく、AIインサイドの売上高に大きな影響はない。かりに両社の契約がなくなったとしても、NTT西日本のときのインパクトは発生しないはずだ。そもそも、「DX Suite Lite」の契約数の95%以上はNTT西日本との契約だった。

■AIインサイドの株価の行方は?

 AIインサイドの時価総額は約700億円。一時は4,000億円まで株価は上昇したものの、約半年で半値以下まで下落となった。AIインサイドの最大の問題は、本当に顧客が必要としているサービスを提供しているのか?という点だ。手書き、活字、写真などの文字をデジタルデータに変換するサービスであるものの、結局、人の手でチェックが必要であれば導入するメリットは多くない。そもそも、世の中では最初からデジタルデータを取得する仕組みを構築する流れとなっている。

 決算説明資料では「DX Suite」の説明が多く、ほかのサービスである「FaceAuth」やノーコードでAIを開発できる「Learning Center」の販売状況などの説明がなかった。AIインサイドの売上高のうち、サービス構成が不明のため、NTT西日本に提供していた「DX Suite」以外の売上高比率が気になるところ。当面は含み損をもった株主ばかりで上値は重いのため、様子見が無難だろう。

(画像1)AIインサイドの株価推移

以 上

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする