オンライン旅行代理店(OTA)の「Skeyticket(スカイチケット)」を運営しているアドベンチャー。コロナ禍でも利益を出して、これからの全国旅行支援(Go toトラベルの次の政策)でも業績拡大が見込める立ち位置にいるアドベンチャー。テクノロジーの発展で航空会社、新幹線、ホテルなどがインターネットで直接つながり、実店舗が不要になった旅行業界。アドベンチャーの業績と株価の行方は?
■基本情報(2022年9月30日時点)
- 株価:12,080円(10年来高値:13,200円)
- 時価総額:906億円
- 予想PER:53.2倍
- PBR:9.41倍
- 予想配当利回り:0.18%
- 自己資本比率:46.2%
- 会計基準:IFRS基準
- 株主数:2,887人(2022年6月30日時点)
■アドベンチャーの業績は?
アドベンチャーの2022年6月期の売上高は118億円(前年比+46.7%増)、営業利益20.4億円(前年比+136.9%増)の増収増益。アドベンチャーの営業総利益率(売上総利益率とほぼイコール)は+85.2%(前年は+71.8%)、営業利益率は+17.3%(前年は+10.7%)と改善している。
アドベンチャーの売上規模はすでにコロナ前まで戻ってきており、将来的に海外旅行が回復すると、より業績にプラスになると思われる。JTB、HIS、阪急交通社、日本旅行などの実店舗型の旅行代理店から、アドベンチャー、一休、楽天トラベル、エアトリなどの新しいOTA(オンライン旅行代理店)に需要が大きく動いている。これらの旅行業界の転換はインターネットの発展にともなう、交通機関、ホテルなどのネット化というテクノロジーの発展が要因だ。
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■アドベンチャーの事業内容は?
アドベンチャーは「skyticket(スカイチケット)」というWebやアプリのプラットフォームを運営している。ホテル、航空券、ツアーなどをこのプラットフォームで仲介する送客ビジネス。「skyticket」アプリのダウンロード数は1,800万を突破。
アドベンチャーの取扱高金額は公表されていないものの、おそらく1,000~1,500億円くらいと売上高とテイクレート(手数料率)から推測する。航空券は国内線であれば15%~25%の手数料、国際線は約10%、ツアーは10%、直接契約のあるホテルは13%、他の旅行会社経由のホテルは約6.5%、レストランはコース予約で10%となっている。よって、売上高はだいたい取扱高の10倍くらいと推測できる。
アドベンチャーの従業員数は連結ベースで170人と少数。従業員は平均年齢31歳、平均年収は約430万円だ。
■アドベンチャーの収益構造は?
アドベンチャーの2022年6月期のPLをみると、営業総利益が101億円に対して、販管費が81億円と大きい。差額が営業利益で約20億円だ。販管費の大部分を占めるのが広告宣伝費48.2億円。
仕組みをつくって利益をあげる事業モデルがオンライン旅行者なので、一般顧客に対する営業活動はせず、テレビやネット広告で集客を行う。競合他社のエアトリなども同様だ。
2023年6月期の業績予想は、売上高140億円(前年比+18.8%増)、営業利益28億円(前年比+37%増)と公表しているものの、全国旅行支援などや海外旅行やインバウンド需要の回復によっては大きく上振れる可能性がある。いっぽう、コロナの再拡大が起こると、業績予想を大きく下回る可能性もあるので注意が必要だ。
■アドベンチャーの財務状況は?
アドベンチャーは2021年12月に約57億円の公募増資を実施。発行済株式数が10.3%増加した。言い換えると、財務的には余裕がでた。この資金を使って、M&Aに25億円、新規事業や開発に20億円などに活用するとしている。
アドベンチャーの2022年6月末の現預金は57.6億円(前期末は19.8億円)、有利子負債は約30.4億円(前期末は40億円)だ。前期末と比べると、増資の影響により財務状況が大きく改善していることが明白だ。
■アドベンチャーの株価推移は?
アドベンチャーの時価総額は約900億円。株価指標的には割高であるものの、上場来高値を突破しており、まだ上昇していく可能性が高い。現時点で含み損をかかえている投資家がほぼいない状況だ。
ただ、すでに旅行需要の回復を業績面でかなり織り込んでいる可能性があり、今期の決算発表では好業績でも株価が落ち込む可能性がある点に注意が必要だ。国内ではエクスペディア、一休、楽天トラベル、JTB、HIS、日本旅行など旅行代店の競合が多いものの、市場自体が大きいため、過激なシェア争いを勝ち抜くことで一定規模まで事業拡大するだろう。
以 上