中古・リノベーション住宅「カウカモ」のツクルバ、損益分岐点を超えられるか?

 中古・リノベーション住宅の流通プラットフォーム「cowcamo(カウカモ)」を展開しているツクルバ。2011年8月設立、従業員数は193名。中古マンションのリノベーションに特化した仲介サイトを運営している。世の中で築古マンションが増えていくなか、市場の拡大の勢いに乗れるか?ツクルバの業績と株価の行方は?

■基本情報(2023年2月3日現在)

  • 株価:752円(10年来高値:2,427円)
  • 時価総額:86億円
  • 予想PER:ー(赤字予想)
  • PBR:11.83倍
  • 予想配当利回り:0%
  • 自己資本比率:25.1%
  • 会計基準:日本基準
  • 株主数:2,303人(2022年7月31日時点)

■ツクルバの業績は?

 ツクルバの2023年7月期の第一四半期の売上は7.4億円(前年同期比+31.3%増)、営業損益△1.0億円(前年は△2.4億円の赤字)と増収赤字幅の縮小となった。ツクルバはプラットフォーム事業のため、通常の売上総利益率で見るよりも、テイクレート(流通金額と売上総利益の比率)で見るほうがよい。

 ツクルバの2023年7月期の第一四半期の流通総額(GMV)は127億円(前年は72億円)、テイクレートは4.2%(前年は4.6%)。流通総額は売り手・買い手の双方の金額をカウントしているため、売買金額が127億円だったわけではない。取引件数をみると、2023年7月期の第一四半期は成約ベースで216件(前年同期は180件)と大幅に増加している。会員数は5.6万人(前年同期は6.4万人)と少し減少している。

 ツクルバの売上総利益は5.5億円と前年の3.5億円から+2.0億円の増加となり、販管費は6.5億円と前年の5.9億円から+0.6億円の増加となった。結果として、差額の赤字幅が縮小し、営業損失は△2.4億円→△1.0億円と縮小している。

■ツクルバの事業内容は?

 ツクルバは中古・リノベーション住宅(マンション)の流通プラットフォーム「cowcamo(カウカモ)」を運営している。マンションを売却したい個人に対して、リノベーションを提案してリノベーションしてもらう。プラットフォームに掲載して買い手を募り、売り手・買い手の両社から仲介手数料を徴収するビジネスモデルだ。

 また、リノベーション時にはその工事を請け負い、そこでも利益を上げる仕組みとなっている。中古マンションに特化した流通事業によりマネタイズする仕組みを構築している。社長の村上氏は不動産プラットフォームのLIFULL出身で、その事業の中古マンションリノベーションに特化したビジネスモデルを築いている。

■カウカモの内容は?

 「cowcamo(カウカモ)」は東京に特化した物件を掲載している。東京都内であれば築30年以上の物件であっても、立地次第ではリノベーションで見栄えを整えれば高価格で販売することができるからだ。建物自体は古くても、部屋の内装をフルリノベーションすることにより、新築対比で魅力的に見せることができるからだ。

 また、カウカモを見ていると、駅近物件が多いことも目立つ。カウカモ事業の流通総額(GMV)は堅調に伸びており、リノベーション物件の魅力が高まっていることがわかる。

■悩ましいビジネスモデル

 カウカモは中古リノベーションマンションの売り手・買い手の両方を流通プラットフォームに集客する仕組みだ。自社で両手取引(売り・買いともに仲介すること)をすることにより、高い収益力を上げることができる。しかしながら、不動産売買は住宅ローン、契約、決済などの取引があり、ツクルバもその対応のために人員を増やす必要があり、従業員数は増加傾向だ。

 ITサービスのサブスクリプションモデルなどであれば規模拡大による従業員の増加は限定されるものの、ツクルバのビジネスモデルであれば仲介作業をする営業スタッフの増加を避けることができない。購入希望者については、物件案内も必要であり、東京都内から全国に規模を拡大することも難しいのではないだろうか?将来的に爆発的に利益がでる事業モデルには見えない。

 また、ツクルバの売りはリノベーションであるため、通常の売買仲介よりも業務は複雑だ。売れるリノベーション物件にするためにデザイン部門の活躍が必要になり、CG作成などによる売り手へのサポートが必要だ。

■ツクルバの財務状況は?

 ツクルバの2022年10月31日時点の財務状況をみると、現預金は13.4億円、販売用不動産は10.6億円。いっぽう、有利子負債は約16億円(その内、7億円は新株予約権付き社債)となっている。ツクルバの自己資本比率は25.1%と不動産会社として考えると妥当な水準であるものの、資金に余裕がある会社ではない。

 ツクルバは2021年8月に第三者割当増資により10億円を調達、丸井グループに種類株式(新株予約権付き社債)7億円を発行して資金調達している。

■ツクルバの株価推移は?

 ツクルバの時価総額は約90億円。ツクルバの2023年7月期の業績予想は、売上高40億円、営業損益△2.2億円の赤字。ツクルバの利益モデル的に高収益の利益構造になるとは思えない。不動産売買仲介の手数料は売買価格の3%と法律で決められており、売り・買いともに仲介しても最大6%が限界だ。

 現在、取引件数が年間800件であり、平均売買価格が1件あたり5,900万円で考えると、流通総額は472億円。テイクレートを4.5%で考えると、売上総利益は21億円(売上高換算では約28~30億円)となり、業績予想の40億円は難しいのではないだろうか。

(画像1)ツクルバの株価推移

以 上

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