新電力のイーレックス、JEPXスポット取引単価が高騰!株価の行方は?

 バイオマス発電などの再生可能エネルギー事業や小売電力をおこなっているイーレックス(erex)。2020年12月後半より日本卸電力取引所(JEPX)のスポット取引単価が急騰し、2020年4月~9月は5.3円/kWhだった単価が200円/kWhまで高騰している。イーレックスはJEPXのスポット取引の調達割合を高めており、決算説明資料を見るかぎり50%前後まで比率をあげている。このJEPXスポット取引単価の高騰が、イーレックスの業績にどのような影響がでるのか?

新電力事業者のイーレックス(9517)、バイオマス発電?再生可能エネルギーの行方は?

■基本情報(2021年1月8日時点)

  • 株価:1,928円(10年来高値:2,199円)
  • 時価総額:1,078億円
  • 予想PER:21.1倍
  • PBR:3.95倍
  • 予想配当利回り:0.93%
  • 自己資本比率:25.0%
  • 会計基準:日本基準

■イーレックスの業績は?

 イーレックスの2021年3月期の第二四半期の売上高は473.1億円(前年同期比+14.0%増)、営業利益47.2億円(前年同期比△15.0%減)の増収減益。イーレックスの売上総利益率は約18%、営業利益率は約10%とそれほど高くない。前年対比マイナスの理由としては、電力の販売価格と調達価格のマージンが十分に取れていないからだ。電力の調達価格を下げる手段として、第二四半期からJEPXの調達比率を増やして利益率の低下を抑える戦略のなか、今回のJEPXのスポット取引単価の高騰が起きた。

■イーレックスの電源調達構成(電力の調達比率)は?

 イーレックスは自社でバイオマス発電を行っているものの、売上高の9割くらいは小売電力によるものだ。小売販売電力量(年間)はおそらく3,000GWh前後とみられ、稼働している4つのバイオマス発電の発電量合計は600~840GWh(600,000~840,000MWh)しかない。2025年には2拠点を追加を計画しているものの、それでも小売販売電力量の3~4割くらいだ。

 自社発電を除くと、他から電力を調達する必要がある。大手電力会社との相対電源(長期契約)またはJEPXからのスポット取引価格での調達だ。イーレックスは利益拡大を図るために、JEPX比率を増加させている。JEPXのスポット取引単価は2020年上期(平均)8.4円/kWh、2021年上期(平均)5.3円/kWhと安いからだ。イーレックスだけでなく新電力会社は、消費者にだいたい20円~30円/kWhで販売し、その差額を利益としている。

■JEPXスポット取引単価の高騰!想定外の上昇

 2020年12月末から液化天然ガス(LNG)不足と寒波到来による需要拡大により電力需要が増加。その影響でJEPXのスポット取引単価の高騰し、2020年4月~9月に約5円/kWh(平均単価)だったものが、100円/kWhを超える水準まで暴騰している。イーレックスは子会社であるエバー・グリーンなどを通じて消費者に電力を販売しているものの、電力価格の高騰分の転嫁は十分にできないと思われる。

 エバー・グリーンの料金メニューをみると、「基本料金+電力量料金±燃料費調整額+再生可能エネルギー発電促進賦課金」という計算式になっており、「燃料費調整額」は原油、液化天然ガス(LNG)、石炭の価格変動分の転嫁となっているからだ。JEPXのスポット取引単価の高騰しているものの、原油、液化天然ガス(LNG)はそれほど高騰していないからだ。

(画像3)高騰するJEPXのスポット取引単価(電力単価)

■影響額はどのくらい?

 イーレックスにとってJEPXのスポット取引単価の高騰の影響はどのくらいだろうか?いまの時点では影響額が見えてこない。いつまでJEPXのスポット取引単価の高騰がつづくかわからないからだ。液化天然ガスの到着が遅れており、2021年1月末くらいまでかかるというインターネット上の情報があるものの真偽のほどは定かではない。

 2020年度の販売電力量を3,000GWhとすると、1か月あたり250GWh。今回の影響が1か月つづくと仮定する。仮にイーレックスの調達単価(平均)を10円/kWhとして、JEPXのスポット取引単価(平均)を100円/kWhと考えると、差額の△90円/kWhの逆ザヤが発生する。その250GWhとJEPX調達率50%と△90円/kWhを計算すると、逆ザヤ分として113億円となる。あとは燃料費調整額でどこまで消費者に価格転嫁できるか次第となる。

■イーレックスの株価推移は?

 イーレックスの時価総額は約1,000億円。前回、2020年9月に投稿したときは時価総額は約560億円だったため、再生可能エネルギー関連などで株価は高騰している。イーレックスと言えば、バイオマス発電によるグリーンエネルギー関連銘柄に思うかもしれないが、現時点では新電力(小売電力)企業だ。売上高に占める再生可能エネルギーの発電量は3割もない。

 イーレックスという会社をレノバやエフオンのような再生可能エネルギー銘柄と見るか、新電力会社のホープやグリムスと同じように見るか、企業評価がかわってくる。

(画像5)イーレックスの株価推移

以 上

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