新電力のホープ、電力取引価格(JEPX取引単価)の高騰による株価の影響は?

 自治体向けの広告、エネルギー(電力)、メディア事業を展開しているホープ。ホープの売上高の約95%は主に自治体向けの電力事業をおこなっており、2016年4月から自由化された発電事業を持たない新電力事業を主力としている。2020年12月後半から日本卸電力取引所(JEPX、よくJPEXと間違われる)のスポット取引価格が高騰し、ホープの事業への影響が心配されている。ホープは2021年1月15日に「JEPXにおける電力取引価格高騰による当社への影響及び今後の対応について」を公表しているが、業績と株価への影響はどうなるのか?

■基本情報(2021年1月15日時点)

  • 株価:3,100円(10年来高値:7,910円)
  • 時価総額:190億円
  • 予想PER:18.9倍
  • PBR:11.55倍
  • 予想配当利回り:0%
  • 自己資本比率:23.0%
  • 会計基準:日本基準

■ホープの業績は?

 ホープの2021年6月期の第一四半期の売上高は71.7億円(前年同期比+277.7%増)、営業利益6.9億円(前年同期は赤字)の大幅な売上増加と営業利益の黒字を果たした。決算補足資料の売上高60.5億円と決算短信の71.7億円との差額は会計基準適用による差異で、国が定める再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT制度)分を売り・買いの金額を相殺して表示している影響だ。

 ホープの売上高の約95%はエネルギー事業(新電力事業)が占めている。ホープの売上総利益率は12.8%(前年同期は8.8%)と改善傾向となっている。ホープの売上原価の内訳は開示されていないものの、ほぼ電力の調達価格と考えてよいだろう。いま話題になっているのは、その電力の調達価格が通常は5~10円/kWhだったものが、50~200円/kWhに10倍~20倍に価格が高騰していることだ。

■JEPX取引価格の高騰の影響は?

 ホープは2021年1月15日に「JEPXにおける電力取引価格高騰による当社への影響及び今後の対応について」の公表を行った。内容を要約すると以下のとおり。

  • 電力の調達には市場調達(JEPX取引価格)と相対調達(電力会社などとの契約価格)の2つある。それらの調達比率を電源調達割合という。
  • 電源調達割合について、2020年7~9月は市場調達77.6%、相対調達22.4%。2020年10月~11月は市場調達80.6%、相対調達19.4%、2020年12月~2021年1月15日は市場調達37.7%、相対調達62.3%と相対調達の比率をあげている。
  • いまの電力卸価格はリスクヘッジの範囲を超える厳しい水準。
  • 今後も電力価格の高騰がつづくため、相対調達の比率を増やす。
  • 第三者割当の新株予約権(MSワラント)の行使率が75%となり約16億円の資金調達ができているが、更なる資金調達(融資など)を検討する。
  • 第二四半期(2020年7月~12月)の修正予想と通期予想は精査中。早い時期にお知らせする。

 上記の内容をみると、電力高騰の影響が大きく、2020年12月14日に業績予想の上方修正を発表したものの、その修正内容を見直すことになりそうだ。

■第三者割当の新株予約権(MSワラント)と業績予想の修正!

 ホープは2020年12月14日に業績の上方修正を実施している。1か月たった2021年1月15日の公表で、第二四半期の業績見通しの修正を精査している。はたして上方修正の発表は正しかったのだろうか?ホープは2020年9月2日に第三者割当による第7回新株予約権を、みずほ銀行に発行しており、行使価格は1株あたり4,955円(行使価格修正あり)。つまり、株価が4,955円を超えている場合、割当先は新株予約権の行使を行い、ホープに資金が入ってくる(その代わり株券を割り当てる)仕組みだ。その前提になるのは4,955円を超える高い株価である必要がある(行使価格修正などあるが細かいことは無視する)。

 ホープの株価は2020年11月中旬より下がってきており、業績修正の発表される2020年12月14日より前は行使価格の4,955円を割る株価だった。ホープとしては株価が高くなければ新株予約権の行使が実行されないという状況だった。2020年12月14日に業績予想の修正がされたものの、株価下落がつづき2020年12月11日を最後に新株予約権の行使はされていない。

(画像3)2020年12月14日のホープの業績修正

■ホープの株価の行方は?

 ホープの株価は下落トレンドに入っている。JEPX取引価格が高止まりしているなか、業績見通しがまったく見えない。時価総額は190億円であるものの、新電力事業が伸びる前は時価総額50億円以下だった。ホープの株価が割安か割高かまったく判断できない。ここ数日は再生可能エネルギー事業を手掛けるレノバ、エフオン、エーバランスなども株価下落がつづいている。上昇をつづけてきた電力事業から資金が抜けている可能性があり、注意が必要だ。

(画像4)ホープの株価推移

以 上

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