病院経営を支援するシステムや診療データベースなどの分析ツールなどのサービスを展開しているメディカル・データ・ビジョン(MDV)。2019年度は株価の下落が続いたものの、2020年3月のコロナショック後にエムスリー、メドピア、ケアネット、メドレーなどと並び、数倍の株価上昇を見せたMDV。病院支援サービスなどシステム提供やデータ情報のサービスを行っている。オンライン診療サービスも注目だ。MDVのビジネスモデルを理解し、業績と株価の行方を考えてみたい。
■基本情報(2021年1月29日時点)
- 株価:2,629円(10年来高値:3,525円)
- 時価総額:1,052億円
- 予想PER:172.7倍
- PBR:26.39倍
- 予想配当利回り:0.11%
- 自己資本比率:82.2%
- 会計基準:日本基準
■MDVの業績は?
MDVの2020年12月期の第三四半期の売上高は31.5億円(前年同期比+14.4%増)、営業利益7.8億円(前年同期比+69.4%増)の増収増益となった。MDVの売上総利益率は+85.2%、営業利益率は+24.8%となっている。MDVはIT企業であり、クラウド会計のfreee(フリー)、マネーフォワード、経費精算のラクス、名刺管理サービスのSansanなどと同様に売上総利益率が高く、売上高が伸びると加速度的に営業利益が伸びる仕組みだ。医療情報サービスという点では、ケアネットに似たビジネスモデルとなっている。
■MDVのビジネス、データネットワークサービスとは?
MDVはデータネットワークサービスとデータ利活用サービスの2つのセグメントでビジネスを分けている。データネットワークサービスとは、「EVE」「Medical Code」「CADA-BOX」という病院経営を支援するシステムを提供している。これらの売上(収益)は、初期導入費用と月額保守費用の2つが収益にわかれる。
初期導入費用は「EVE」は400万円(導入病院数:778医院)、「Mdecical Code」は820万円(同:266医院)、「CADA-BOX」は2,000万円(同:5医院)と高い。心配なのは2019年12月期(実績)と比べて、2020年12月期(予想)は導入病院数が減少している点だ。通常、システムなどは一旦導入すると、なかなか変更できないものの導入医院数が減少に転じてる点に注意が必要だ。
いっぽう、売上高の減少をカバーしているのは子会社のDoctorbook社の歯科医師向けオンラインサービス「Doctorbook academy」だ。コロナ禍でオンラインサービスの強さを発揮している。Doctorbook社には2019年にメディパルホールディングスが株式の23%を取得し、資本業務提携を結んでいる。
■MDVのデータ利活用サービスとは?
MDVのデータ利活用サービスでは「アドホック調査サービス」が売上を支えている。ちなみに、アドホック(ad hoc)とは「特定の」「限定の」という意味だ。「アドホック調査サービス」では、顧客の要望に応じたオーダーメイドのレポートなどを作成するサービスだ。平均単価は350万円~400万円。MDVの持つ病院経営や診療データなどを活用した情報サービスが「アドホック調査サービス」だ。
■MDVのビジネスモデルは?オンライン診療サービスとは?
MDVは病院にシステムを提供してシステム利用料を徴収し、二次利用許諾を得た医療・健康情報をデータベースに蓄積している。その蓄積されたデータベースの情報をつかって、製薬会社などに「アドホック調査サービス」としてレポートを提供している。
いまMDVが進めている新ビジネスとしてはオンライン診療サービス(遠隔診療)だ。オンライン診療システムの名称は「オンラインドクターバンク」。Doctorbook社にて「Clinical Cloud by MEDIPAL」という医療従事者向け医療情報ポータルサイトを展開しており、そこを通じてオンライン診療の普及につとめている。また、2020年9月にケアネットと包括業務提携契約を結び、ケアネットの運営する「CareNet.com」(医師会員数17万人)を活用してオンライン診療の後押しをしている。
オンライン診療(遠隔医療)の競合では、エムスリーの「LINEドクター」、メドレーの「CLINICS」、エムティーアイとメディパルホールディングスの「CARADA medica」などがある。
オンライン診療(遠隔医療)のメドレー、年平均成長率30%を目指すヘルスケアIT企業!(2021年1月23日投稿)
医療関連サービスのエムスリー、業績にプラス作用するコロナ禍(COVID-19)(2021年1月18日投稿)
■MDVの株価の行方は?
MDVの時価総額は約1,000億円。予想PERやPBRを見ると、株価指標的には割高だ。2020年のMDVの株価上昇はエムスリー、メドピア、ケアネット、メドレーなどと同様の世界的な金融緩和と財政支出の影響で株式市場にお金が流れこみ、その行先が医療ITサービス企業だったからだ。世界的な金融緩和がつづく限り、ここから更にバブル相場が加速する可能性はある。ただし、下落相場に転じたときは半値以下になる可能性は十分ある。
製薬企業の医薬情報提供活動をサポートするケアネット、コロナ禍で業績好調!(2021年1月3日投稿)
以 上