電子契約の「クラウドサイン」や法律相談の「みんなの法律相談」、弁護士検索、「税理士ドットコム」、企業法務ポータルサイト「ビジネスロイヤーズ」を運営している弁護士ドットコム。2020年9月の菅政権発足によるデジタル化推進により電子契約の普及が進んでいる。弁護士ドットコムは「クラウドサイン」の普及により業績の拡大を目指せるのか?弁護士ドットコムの業績と株価の行方はどうなるのか?
弁護士向け営業支援の弁護士ドットコム(6027)、株価は絶好調も過熱感!?(2020年6月14日投稿)
■基本情報(2021年5月7日時点)
- 株価:9,330円(10年来高値:15,880円)
- 時価総額:2,077億円
- 予想PER:415倍
- PBR:92.68倍
- 予想配当利回り:0%(無配)
- 自己資本比率:79%
- 会計基準:日本基準
■弁護士ドットコムの業績は?
弁護士ドットコムの2021年3月期の第三四半期の売上高は38億円(前年同期比+27.1%増)、営業利益2.2億円(前年同期比△2.3%減)の増収減益となった。弁護士ドットコムの売上総利益率は+84.7%(前年同期は+84.7%)、営業利益率は+5.8%(前年同期は+7.6%)。売上高が増加しているものの、営業利益が前年同期比で悪化している要因は販管費が約7億円増加しているからだ。
販管費の推移をみると、人件費と広告宣伝費が大きく増えている。広告宣伝費は先行投資であり、今後はコントロール可能であるが、人件費は固定費のため、将来的に削減はなかなか難しい。
■「弁護士ドットコム」の月間サイト訪問者数は?
Webサイト「弁護士ドットコム」の月間サイト訪問者数の推移をみると、2019年3月頃に約1,800万人のピークとなり、2020年12月時点では1,191万人と減少傾向がつづいている。訪問者数と比例するように、個人の有料会員数も2019年9月に19.2万人となった後、2020年12月時点では16.1万人まで減少している。ちなみに、「弁護士ドットコム」の有料会員(個人)は月額300円(税抜)のサービスだ。
「弁護士ドットコム」は日本最大級の法律相談ポータルサイト。法的トラブルを持っている個人が弁護士に質問して、弁護士が無料で回答するもの。弁護士の回答は有料会員のみ閲覧できるという仕組みだ。月間会費の売上高は全体の約1割となっている。
現在は「弁護士ドットコム」「税理士ドットコム」ともに月間サイト訪問者数が減少傾向。これらのサイトは広告収入があるものの、弁護士ドットコムにとっては売上高に占める割合は1割以下。「弁護士ドットコム」「税理士ドットコム」を通して、弁護士、税理士、個人のつながりのプラットフォームをつくり、弁護士や税理士のマーケティング支援で売上高を計上するビジネスモデルとなっている。
■期待の電子契約サービス「クラウドサイン」の行方は?
弁護士ドットコムの売上高のうち、もっとも伸びているのが電子契約「クラウドサイン」だ。売上高全体の約2割となっている。「クラウドサイン」の導入企業数は2021年1月時点で14万社超、市場シェアは80%超。「クラウドサイン」は固定会費(ストック収益)と200円/件の変動会費(フロー収益)の2つで構成されている。「クラウドサイン」の導入企業数と活用比率が高まると、「クラウドサイン」の売上高が増えていく仕組み。いわゆる、サブスクリプション型のビジネスだ。ちなみに、固定会費は月額1万円~10万円となっている(無料プランもある)。
「クラウドサイン」の導入企業は、トヨタ自動車、野村證券、みずほ証券、サントリー、リクルート、大和ハウス工業など大企業も少なくない。
電子契約について、現時点では「クラウドサイン」の市場シェアが圧倒的に高いものの、競合他社も少なくない。たとえば、GMOクラウドの「GMO電子印鑑Agree」やアドビの「Adobe Sign」、インフォマートの「BtoBプラットフォーム契約書」など多くの競合サービスが存在する。ちなみに、電子契約にすると印紙税は不要だ。
■弁護士ドットコムの株価の行方は?
弁護士ドットコムの時価総額は約2,000億円。株価指標的には予想PER400倍、PBR92倍を超えており割高だ。世界的な金融緩和と財政出動により、弁護士ドットコムなどのグロース銘柄に資金が集まっている影響で、成長性を過度に織り込んだ株価になっている。
「クラウドサイン」の導入企業社数はすでに約14万社、売上規模は年間18億円ほど。これから企業数と契約件数は増加すると思われるものの、年間売上高が50億円を超えるまでには相当時間がかかりそうだ。その間に競合他社も攻勢をかけてくるので、「クラウドサイン」の一人勝ちがどこまで続くか見通すことは難しい。個人的には様子見が無難ではないか。
以 上