カタログ通販事業を中核にeコマース事業(ブランド、リユース等)、ソリューション事業(後払い決済サービス、アフィリエイト等)、健粧品事業(健康食品やコスメ)など多角的に事業をおこなっているスクロール(Scroll Corporation)。新型コロナウイルスの影響をうけてカタログ通販やeコマースが絶好調で売上高、営業利益ともに過去最高となった。スクロールの業績と今後の行方はどうなるのか?
カタログ通販からネット通販まで手掛けるスクロール(Scroll)、巣ごもり需要取り込み、業績・株価好調!(2020年11月1日投稿)
■基本情報(2021年5月7日時点)
- 株価:1,009円(10年来高値:1,485円)
- 時価総額:352億円
- 予想PER:12.6倍
- PBR:1.36倍
- 予想配当利回り:2.0%
- 自己資本比率:53.4%
- 会計基準:日本基準
■スクロールの業績は?
スクロールの2021年3月期の売上高は852億円(前年比+17.3%増)、営業利益73.9億円(前年比+244.3%増)の増収増益となった。スクロールの売上総利益率は+37.4%(前年は+35.6%)、営業利益率は+8.7%(前年比+3.0%)と利益率の改善がつづいている。売上増の要因は、新型コロナウイルスの影響による巣ごもり消費増でカタログ通販やeコマースが伸びたからだ。スクロールの売上高は大きく伸びたものの、販管費はそれほど増えておらず営業利益は大きく伸びた。
■業績は過去最高!株価も最高値圏に
スクロールは1939年創業の老舗企業。2000年代は売上高の減少などで苦しんだものの、ここ数年は右肩上がりのトレンドで売上高は増加。2021年3月期は売上高・利益ともに過去最高となった。新型コロナウイルスの影響によりリアル店舗が苦戦する中、カタログ通販やECサイトで商売をするスクロールにとってはコロナ禍が大きな追い風となった。
スクロールの資料によると、売上高で約100億円、経常利益で約40億円はコロナ影響による特需としている。中期経営計画では2024年3月期に売上高1,000億円、経常利益60億円を掲げているものの、2021年3月期に経常利益は大幅な過達となってしまった(2021年3月期の経常利益は+75.2億円)。2021年2月に株価も上場来最高値の1,485円(時価総額は約500億円)をつけた。
■そもそもスクロールの事業内容は?
スクロールの事業を知っている人はそれほど多くないだろう。売上高の約半分は日本生活協同組合連合会(生協、会員800万人)会員向けのカタログ通販事業が占めている。たとえば、50歳前後(アラフィフ)をターゲットとした「ELASTY(エラスティ)」というカタログ雑誌や40歳前後(アラフォー)をターゲットとした「Rapty(ラプティ)」、「scroll Basic」、「スポーツUP」など多数のカタログ通販雑誌を生協会員向けに毎週届けている。
eコマース事業では、「コスメランド」「AXES」「きれいみつけた」「生活雑貨」などの通販サイト(ECサイト)を展開している。ソリューション事業では、後払い決済サービスの「後払い.com」、アフィリエイトサービスの「もしも」などを展開。健粧品事業では「豆腐の盛田屋」「北海道アンソロボロジー」など健康食品や化粧品を展開している。
■自然派スキンケア「豆腐の盛田屋」!
スクロールが展開しているスキンケア用品の「豆腐の盛田屋」。豆乳スキンケアなどで自然派のスキンケアを女性向けに展開している。スクロールはカタログ通販はeコマースなどのマーケティング力。スクロールの年間の広告宣伝費は約100億円で人件費以上に広告宣伝に力を入れている。スクロールはアパレル、雑貨・インテリア、健康食品、化粧品など幅広い範囲でのマーケティング会社。
健粧品事業は売上高27億円、経常利益△5.3億円の赤字。スクロールの事業を足を引っ張っている。このセグメントで利益が出るようになれば、スクロールの利益率はさらに改善すると思われる。健康食品や化粧品は製品原価自体は低いからだ。
■スクロールの株価推移は?
スクロールの時価総額は約350億円。割高感はまったくない。スクロールが発表した2022年3月期の売上高は800億円、経常利益40億円と前期比でマイナスとなる予想。株式市場ではあまりにも低い業績予想でマイナスの影響がでそうだ。しかしながら、スクロールのマーケティング力は確かであり、とくにデジタルマーケティングで力を持っている。
四半期決算を発表する過程で通年予想が上方修正されるものと期待したい。株価はいったんは下方向に行くかもしれないが、様子をみて株価の下がったときに拾っていっても良いかもしれない。
以 上