マンガ(コミック)を中心に紙から電子書籍にかわってきた書籍(本)市場。その電子書籍市場で出版社と電子書店の仲介をしているのがメディアドゥだ。これまでの紙媒体では日本出版販売(日販)やトーハンの業界最大手企業が書籍取次の中心にいたものの、電子書籍の取次で業界トップを走っているのはメディアドゥだ。「紙から電子書籍へ」の流れとなり、メディアドゥには追い風がつづく見通し。株価も上場来最高値圏まで上昇中。これからの株価の動きはどうなるのか?
■基本情報(2020年8月14日時点)
- 株価:6,240円
- 時価総額:890億円
- 予想PER:80.8倍
- PBR:14.84倍
- 予想配当利回り:0.20%
- 自己資本比率:16.4%
- 会計基準:日本基準
■メディアドゥの業績は?
電子書籍取次大手のメディアドゥの2021年2月期の第一四半期の売上高は203億円(前年同月比+31.3%)、営業利益7.3億円(前年同月比+68.4%)と大幅な増収増益となった。新型コロナウイルスの影響による「巣ごもり消費」により出版関連は特需となった。とくに5月は外出自粛により、電子書籍は前年比+140%を超える成長となった。10年ほど前は、電子版の書籍を読むのは眼が疲れる、紙媒体じゃないと読んだ気がしない、本は紙媒体で読むもの、などと言われてきたものの、スマートフォンやタブレット端末の浸透で消費者(ユーザー)は電子端末での読書に慣れてしまったのは時代の流れ。
■電子書籍市場の拡大が加速の見込み!
インプレス総合研究所の発表によると電子書籍市場は2020年度で約3,900億円の市場規模。2011年度はたった651億円規模だったことを考えると、約9年間で6倍ほど伸びた計算だ。新しい市場の拡大により、古い紙媒体は衰退の方向に進み、電子書籍は成長産業となっている。
■電子書籍はマンガ(コミック)が先行!
電子書籍ではマンガ(コミック)が「紙から電子書籍へ」を先行している。マンガの電子書籍化率は約60%。いっぽう、小説やビジネス書などの文字モノは5.1%、雑誌は3.0%と依然として紙媒体が主流だ。マンガはスマートフォンの登場でスキマ時間(通勤・通学、休憩時など)に気軽に読めることで一気に普及した。「めちゃコミック」「まんが王国」「マンガBANG!」などマンガアプリが多数登場し、それらを提供している上場企業であるビーグリー、Amazia、インフォコム(子会社のアムタスが展開)などの業績も絶好調だ。
今後は電子書籍化が遅れている文字モノ(小説、ビジネス書など)や雑誌の電子書籍化が進んでいくと思われる。メディアドゥにとってはマンガだけでなく、書籍全般の電子書籍の規模が大きくなることが大きな追い風。市場拡大はまだまだ続きそうだ。電子書籍の雑誌の分野では、「楽天マガジン」「dマガジン」「Kindle Unlimited」などがある。
■メディアドゥの電子書店「コミなび」!
メディアドゥは自社でも電子書店を展開している。「コミなび」というコミックとマンガ雑誌専門の電子書店だ。2020年2月期の売上高は12億円とそれほど大きくないものの、消費者ニーズなどの情報を直接、得られるメリットは電子書籍の取次大手として少なくない。
■電子書籍流通の34%はメディアドゥ経由!
メディアドゥは国内の電子書籍流通の34%をあつかっている。今後はいかに市場シェアを高めることができるかが成功のキーになる。市場規模はこれから大きくなるため、自然体でも売上規模は大きくなることが見込まれる。なお、世界の電子書籍の流通事業者トップはAmazon、メディアドゥは流通総額1,200億円で世界第2位といわれている。心配されるのは取次会社の中抜きだが、電子書籍は紙媒体以上に印税の管理が複雑だ。メディアドゥは印税管理で重要な役割を果たしており、これが競合他社にとっての大きな参入障壁になっている。
■メディアドゥの株価推移は?
メディアドゥの株価推移は右肩あがりがつづく。時価総額をみると約900億円となっていて、現時点で割安さはない。ただし、これから当面、増収増益が見込まれる事業であるため、株価調整時に仕込むのはよいかもしれない。2016年~2017年は違法サイト問題(海賊版サイト)などの問題で電子書籍業界の株価は軒並みさがったものの、現在はマンガアプリ企業、メディアドゥともに株価は絶好調がつづく。
以 上