BALUMUDA(バルミューダ)のブランドでトースター、ケトル、扇風機などのオシャレな家電を販売しているバルミューダ。スマートフォンの失敗から大きくブランド価値の毀損(きそん)がつづく。小型風力発電機の開発も、かなり見当違いな事業戦略に見えるが、社内で方向性を修正する自浄作用は働かないのだろうか。バルミューダの業績と株価の行方は?
円安直撃のバルミューダの決算、2023年度は売上高減の厳しい業績見通し!(2023年2月11日投稿)
ファブレスメーカーのバルミューダ、高い利益率は維持できるか!?(2022年2月13日投稿)
■基本状況(2023年11月10日時点)
- 株価:1,721円(10年来高値:10,610円)
- 時価総額:145億円
- 予想PER:-
- PBR:2.93倍
- 予想配当利回り:0%
- 自己資本比率:60.6%
- 会計基準:日本基準
- 株主数:7,678人(2022年12月31日時点)
■バルミューダの業績は?
バルミューダの2023年12月期の第三四半期の売上高は79.6億円(前年比△36.3%減)、営業利益は△11.4億円(前年は+1.6億円の黒字)と減収赤字転落となった。バルミューダの売上総利益率は+30.0%(前年は+33.2%)と悪化している。
バルミューダの売上総利益は前年の41.5億円→23.6億円と△17.9億円の悪化、販管費は前年の39.9億円→35.3億円の△4.6億円の減少となり、差し引きすると営業利益は13.3億円の減少となり、赤字転落となった。
バルミューダが苦戦しているのは、①売上規模の減少、②円安による外注先のコスト増、が大きな要因だ。売上規模の減少は、そもそもデザイン性で魅了していた顧客が抜けていっているからだ。競合他社もバルミューダに類似した黒を基調としたデザインのシンプルな家電を販売し、差別化されなくなったのが大きな要因だ。
■バルミューダの事業状況は?
バルミューダは、キッチン、空調を中心とした家電を販売しているが、すべての製品で販売金額が減少している。日本市場は売上高78.7億円→55.2億円と大きく減少しており、すべての製品で大きな落ち込み。日本の次に大きな販売金額を占める韓国市場も同様だ。韓国は売上高30.8億円→13.0億円と落ち込んでいる。
バルミューダは2023年2月10日に2023年12月期の業績予想を発表。その時の業績予想は下記のとおり。
- 売上高:167億円、営業利益1.0億円
そこから、2023年5月12日に業績予想を修正。下方修正の理由としては、「売上高については、第1四半期に計画していた一部の販売施策の開始時期が第2四半期以降に変更となったことにより、期初の予想を修正します。」としている。
- 売上高:160億円、営業利益△5.2億円
そして、2023年11月10日に再度、下方修正を発表した。
- 売上高:133億円、営業利益△13.5億円
バルミューダは外出機会増による支出先の変化や物価上昇による消費者マインドの変化としている。しかしながら、そもそもバルミューダは高価格帯であり、物価上昇で消費者マインドが左右される層が顧客ではないのではないか。
■小型風力発電機の開発!?
バルミューダは2023年8月7日、小型風力発電機の実証実験開始のお知らせを発表。「電気を使う」だけではなく「作る」領域へ挑戦の幅を広げていく、とのことであるが、あまりにも領域が違うのではないだろうか。
バルミューダはデザイン性で富裕層向けに高価格の家電を販売する事業モデルであり、販売価格は他社の2倍~5倍くらいする。小型風力発電機は実用性や効率性の面がポイントであり、投資金額と発電量による効果で購入者は購入を選択する。まったく、顧客へのアプローチが異なる分野であり、販路開拓から見直しが必要だろう。赤字のバルミューダがいま、取り組める領域ではない。
■バルミューダの財務状況は?
バルミューダの2023年9月30日時点の財務諸表をみると、現預金は8.4億円、棚卸資産は37億円、有形固定資産は10億円となっている。負債は、有利子負債が約13億円となっている。純資産は45億円あるものの、赤字の状況で有利子負債を増やせるか課題だ。
バルミューダは2020年12月に東証マザーズに上場。公開価格は1,930円、初値は3,150円。現在の株価は1,721円(2023年11月10日時点)のため、公開価格からは若干マイナスのレベル。バルミューダは上場により約24億円を調達している。
■バルミューダの株価推移は?
バルミューダの時価総額は約150億円。上場後のほぼすべての投資家が含み損を抱えている状況だ。そもそも、バルミューダは上場前からファンが多く、そのファンがバルミューダの株式に期待を持って購入しているケースも少なくないだろう。
株価がさがることで、ファンもバルミューダ商品のロイヤリティが下がっていくのではないだろうか。現在は、ツインバード、山善、パナソニック、ティファールなどもバルミューダに似た黒基調のデザイン性のすぐれた家電を販売している。
バルミューダは上場時の2020年度は売上総利益率が40%を超えていた。いまは30%前後となり、粗利で10%も下がっている。円安の影響によるコスト上昇はあるものの、バルミューダも価格帯を下げており、これがハイエンドブランドからの転落となり、富裕層の消費離れにもつながっているのではないだろうか。