複合メーカーの昭和電工(4004)、日立化成の買収で株価は?

 電炉用黒鉛電極、ハードディスク、電子材料など幅広く事業展開している昭和電工。2019年度までは業績好調だったものの、黒鉛電極の市況悪化により昭和電工の売上高、営業利益とも一気に前年比大幅減。そのような中、時価総額3,500億円規模の昭和電工が、日立化成を約9,500億円で買収という積極的なM&Aを実施。日立化成を買収した昭和電工の株価は今後どうなるのか?

■基本情報(2020年5月15日時点)

  • 株価:2,341円
  • 時価総額:3,504億円
  • 予想PER:22.7倍
  • PBR:0.68倍
  • 予想配当利回り:5.6%

■わかりにくい買収後の昭和電工の業績と財務状況!

 昭和電工による日立化成の買収は2020年4月28日に完了。売上高で比較すると、昭和電工は約9,000億円、日立化成は約6,500億円と昭和電工のほうが大きい。しかし、時価総額で比較すると、昭和電工は約3,500億円、日立化成は約9,600億円と日立化成のほうが倍以上も大きい(昭和電工によるTOBの影響で株価が上昇した経緯はある)。

 昭和電工の開示資料を見るかぎり、具体的な買収後の計画が公表されていないため、今後の展望が見えてこない。売上高は連結ベースで約1.5兆円になるものの、5,000億円前後の「のれん」が計上され、借入金の増加により、自己資本比率が大きく悪化する。借入金の増加により、支払利息は大幅に増加する。

 昭和電工は借入金が大きく増えたまま返済を継続していくのか、増資を実施するのか今のところ発表されていない。昭和電工は日本基準の決算(会計基準)を適用しているため、毎期、巨額の「のれん償却費」を計上するため、営業利益も大きく悪化する可能性がある点も要注意だ(会計基準がIFRS基準であれば、のれんは償却しない)。

■参考になるのは日本板硝子のピルキントン買収!

 今回の昭和電工による日立化成の買収で参考になるのは、日本板硝子によるピルキントンの買収だ。2006年に日本板硝子(当時の売上高:2,700億円)が板ガラス大手の英国ピルキントン(売上高:5,000億円)を買収した事例だ。日本板硝子のケースでも、規模の小さい日本板硝子が巨額の借入をして、巨大な英国ピルキントンを買収した。買収額は約6,000億円。

 その結果、日本板硝子の現在の株価は当時の10分の1以下となった。売上高は5,500~6,000億円ほどあるものの、営業利益は150~350億円で推移。日本板硝子は営業利益から巨額の支払利息を差し引くと、当期純利益は赤字~100億円前後。しかも、日本板硝子は、財務体質が弱くて増資を実施。現在の時価総額は330億円ほど。

 昭和電工が日本板硝子と同じようにならない可能性は十分ある。しかし、昭和電工より買収後の業績・財務状況含めた展望が出てこないと判断ができない。

■昭和電工の株価推移は?

 昭和電工の株価推移を見ると、2018年10月に6,470円の高値をつけてから下落トレンドがつづいている(2020年5月15日時点:2,341円)。市況価格が高騰した黒鉛電極バブルの終焉を、株価が業績実績に先駆けて少しずつ織り込んでいった形だ。

 日本板硝子によるピルキントン買収と、昭和電工による日立化成買収の違いは、買収の目的だ。日本板硝子は事業地域の拡大を目的として買収したものの、中国などの台頭で板ガラス市場の競争が一変した。いっぽう、昭和電工による日立化成の買収は事業領域の拡大。5Gや自動車の電気自動車化(EV化)などを念頭においたチャレンジだ。

 ひとまず、昭和電工からの新たな事業計画の発表を待つのが妥当だ。新型コロナウイルスの影響により、2020年前半は昭和電工、日立化成ともに厳しい業績になると思われる。少し様子見をしてから購入を検討したほうが無難だ。

以 上

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