酒類の配達を個人・飲食店向けに展開しているカクヤスやダンガミ・サンノー、明和物産などの事業会社を傘下にもつカクヤスグループ(以下、カクヤス)。コロナの感染症5類移行にともない、飲食店の稼働が順調に増加。海外からの旅行者も大きく増え、飲料の卸を中心に業績は好調だ。今後のカクヤスの業績と株価の行方は?
絶好調のカクヤスグループ、インバウンド特需再来か?月次も好調(2023年8月14日投稿)
売上高過去最高のカクヤスグループ、飲食店向け売上高の回復つづく!(2023年5月20日投稿)
■基本情報(2023年12月8日時点)
- 株価:1,867円(10年来高値:2,889円)
- 時価総額:180億円
- 予想PER:10.3倍
- PBR:5.59倍
- 予想配当利回り:2.67%
- 自己資本比率:9.1%
- 会計基準:日本基準
- 株主数:2,179人(2023年3月31日時点)
■カクヤスの業績は?
カクヤスの2024年3月期の第二四半期の売上高は637億円(前年比+18.4%増)、営業利益11.3億円(前年は△6.8億円の赤字)と増収黒字転換となった。カクヤスの売上総利益率は+22.3%(前年は+20.7%)、営業利益率は+1.8%となった。事業モデルとして粗利、営業利益率は低いものの、改善傾向を示しているのは良い傾向だ。
カクヤスの売上総利益は前年の111億円→142億円と+31億円の増加、販管費は前年の118億円→131億円と+13億円の増加となり、差し引きで+18億円の営業利益増となった。すでにコロナ前の2019年3月期の同期の水準を超える売上高、営業利益になっており、あたらしいステージに入ったと言える。
■カクヤスの事業状況は?
カクヤスはすでに前年比を超える水準で飲食向け、家庭向けともに販売額が推移している。コロナ前の2019年比でも大きく上回る水準で推移している。カクヤスで心配されるのは、「2024年問題」と言われる物流・運送業界の働き方改革法案によりドライバーの労働時間に上限(年間960時間)が課される問題が影響しそうだ。
運送業界のトラックドライバーの取り合いや運賃の高騰が予想される。カクヤスは最終顧客にうまく価格転嫁できない場合は、自社の利益が減ることになる。2024年4月から実際に適用されるため、来期の業績に大きくマイナスに作用する可能性がある。
カクヤスの対策としては、小型出荷倉庫を活用して、リヤカーなどで飲食店に配達することを対策の1つとしている。
■カクヤスの財務状況は?
カクヤスの2023年9月末時点の財務諸表をみると、現預金は33億円、商品は53億円、有形固定資産は74億円、敷金・保証金21億円となっている。負債は、有利子負債が約100億円となっている。純資産は31億円と総資産の約10%と低く、財務的な不安は残る。
コロナ禍で財務諸表は大きく悪化し、利益剰余金は△3.6億円のマイナス。配当を継続しているものの、本来は内部留保して純資産を回復させる必要があるだろう。
■カクヤスの株価推移は?
カクヤスの時価総額は約180億円。2023年9月に上場来高値の株価2,889円をつけて、現在の株価は1,867円と1,000円ほど下落している。業績は好調であるものの、「2024年問題」を想定すると、来期の業績が大きく悪化することを株価は織り込んでいるようにも見える。
今年の株価上昇はカクヤスだけの話ではなく、インバウンド関連の銘柄が大きく上昇しており、テーマ的な要素も大きいだろう。カクヤスの現在の1株あたりの予想純利益(EPS)は181円。予想PERを10倍~15倍で考えると、予想株価は1,800円~2,700円くらいの範囲となる。ただ、来期はEPSが悪化する想定で考えると、それほど株価の上昇を期待できないかもしれない。
以 上