カタログ通販からネット通販まで手掛けるスクロール(Scroll)、巣ごもり需要取り込み、業績・株価好調!

 生協会員向けや一般向けにカタログ通販やインターネット通販を中心に事業を多角的に展開しているスクロール。新型コロナウイルスの影響による巣ごもり特需を取り込み、足元の業績は絶好調だ。2021年3月期は半期終了時点で年間で計画していた営業利益をほぼ達成。営業利益は前年同期にくらべて+149.6%増と倍以上の伸びとなった。あまり一般消費者と直接的な接点がないスクロールの事業や今後の成長計画はどうなっているのか?

■基本情報(2020年10月30日時点)

  • 株価:797円
  • 時価総額:277億円
  • 予想PER:8.5倍
  • PBR:1.13倍
  • 予想配当利回り:1.88%
  • 自己資本比率:53.1%
  • 会計基準:日本基準

■スクロールの業績は?

 カタログ通販やネット通販を展開しているスクロールの2021年3月期の第二四半期の売上高は433億円(前年同期比+14.3%)、営業利益40.7億円(前年同期比+149.6%)と大幅な増収増益となった。新型コロナウイルスの影響による巣ごもり特需により衣料・生活用品を取り扱うカタログ通販やネット通販が大きく伸びたことが売上増の大きな要因だ。

 カタログ通販で衣料品や生活用品を取り扱っているベルーナ、千趣会、フェリシモ、アイケイなどの同業他社も業績を大きく伸ばしている。外出自粛によりリアル店舗の売上が落ち込み、その消費の行く先がカタログ通販やネット通販に流れたことが業績にしっかりと表れた形だ。ちなみに、スクロールのカタログ通販は「エラスティ(ELASTY)」「scroll Basic」「スポーツup」「大人のための日常着」「ファッション小物」「ラプティ」「となりの雑貨店」など非常に多くのカタログ通販雑誌を展開している。スクロールという会社名を知らなくても、カタログをどこかで見たことがある人は少なくないのではないか。

■業績発表で株価大幅な下落の謎!?

 スクロールは2020年10月29日の株式市場が閉まった後に大幅増益の業績を発表。翌日の10月30日は予想外にストップ安をつける大幅な株価下落となった。スクロールはじめ、カタログ通販関連の銘柄はどこも右肩あがりの上昇をつづけてきた結果、材料出尽くしにより利益確定売りが集中した。それでも、スクロールの絶好調の業績発表後にストップ安まで売り込まれるのは、あまりにも予想外だった。

 スクロールは前日比△15.8%の下落、ベルーナは前日比△14.2%下落、フェリシモは△7.4%下落、千趣会は△3.3%下落となった。しかしながら、カタログ通販関連は株価指標的には割高感はまったくなく、むしろ新型コロナが再拡大した場合は、引き続き特需がつづく可能性がある。

■稼ぐカタログ通販・ネット通販!

 スクロールは通販事業だけでなく、eコマース事業、化粧品事業(健粧品事業)、旅行事業などを多角的に展開している。そのなかでも、通販事業の利益額が全体の9割を超えている。スクロールの2Qの広告宣伝費は53.7億円。販売促進費の比率は前期31.6%→27.2%と抑制しつつ、まだまだ削減余地がある点はプラスに考えてよいかもしれない。

■スクロールの事業内容は?

 スクロールは通販事業だけでなく、さまざまな事業を展開している。M&Aを積極的に活用しつつ、スクロールグループを段階的に拡大。たとえば、eコマース事業にあるアウトドア・キャンプ用品などの通信販売をおこなうナチュラムは2018年1月にグループ入り。防災用品の企画・販売をおこなうミヨシは2019年3月、健粧品事業の豆腐の盛田屋は2012年3月にグループ入り。

 スクロールが培ってきたカタログ通販ノウハウをキャンプ用品、防災用品、化粧品などに横展開してグループ全体で売上を伸ばすシナジーがうまく作用した事業構造になってきているのがスクロールの特徴だ。

■今後のスクロールの株価の行方は?

 スクロールの時価総額は約280億円。2021年3月期の営業利益は50億円~80億円くらいの可能性が見えている(会社の公表値は44億円)。株価指標的にはスクロールの株価は割安だ。いっぽう、株価推移をみると、2020年3月13日の株価236円から4倍以上まで急上昇し、今回の決算発表でストップ安まで売り込まれている。短期的には売られ続け、大幅に株価が下落する可能性が高い。これからは割安と考えた個人投資家の買いが入る一方、機関投資家などは利益確定を急ぐ可能性が高いからだ。まずは株価が落ちきるまで様子見が無難ではないだろうか。

(画像4)スクロールの株価推移

以 上

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