スマートロック「Akerun(アケルン)」のフォトシンス、成長の行方は?

 スマートロックの「Akerun」を展開しているフォトシンス(Photosynth)。前年比+20%を超える成長をしているものの、年間売上規模は約20億円とまだ規模が小さい。その結果、営業利益は赤字がつづいている。2023年12月期の業績予想は売上高23.5億円、営業損益△4.3億円の赤字予想。フォトシンスの業績と株価の行方はどうなるのか?

入退室管理システム(スマートロック)の「Akerun」、フォトシンス上場!(2022年1月16日投稿)

■基本情報(2023年3月3日時点)

  • 株価:370円(10年来高値:1,526円)
  • 時価総額:57億円
  • 予想PER:赤字予想
  • PBR:2.72倍
  • 予想配当利回り:0%
  • 自己資本比率:60.5%
  • 会計基準:日本基準
  • 株主数:現時点未公表

■フォトシンスの業績は?

 フォトシンスの2022年12月期の売上高は19.9億円(前年比+24.6%増)、営業損益△6.1億円(前年は△8.5億円)と増収赤字幅縮小となった。フォトシンスの売上総利益率は+87.3%と高いものの、販管費をカバーできるに赤字となっている。

 フォトシンスの売上総利益は17.4億円(前年は13.9億円)と約3.5億円の増益。販管費は22.4億円→23.5億円と約1.1億円の増加となり、売上総利益との差し引きで2.4億円の改善となったものの、営業損益は△6.1億円の赤字となった。サブスクリプションモデルのため、将来の粗利拡大が重要なミッションであるため、当面は営業赤字を継続した経営戦略を取っていくと思われる。

■フォトシンスの事業状況は?

 フォトシンスの事業はスマートロック「akerun」のサービスに尽きる。24時間オープンのスポーツジムやコワーキングスペースなど無人で運営する施設では「akerun」が重宝されている。入退室管理などもできて、稼働率や稼働時間帯などを分析・管理できる便利な仕組みだ。

 フォトシンスの粗利率は+80%台と高く、売上総利益が販管費を上回る状況になると、爆発的に利益がでる利益モデルになっているのがセールスポイント。サブスクリプション売上高比率は90.8%と高く、安定して売上高が拡大していることが予想できる。

 フォトシンスの販管費をみると、広告宣伝費に年間で4~5億円ほど投入しており、この投資がなくなると、現時点で損益はプラスマイナスゼロ近辺ではないだろうか。販管費で一番コストがかかっているのは人件費。現在の従業員数は167名と前年同期とほぼ同水準となっている。

■伸びる顧客契約社数!

 フォトシンスの契約社数は4,983社まで増加。前年同期は4,287社だったため、+696社となっている。2022年3Q(9月末)は4,848社だったため、+135社と3か月で100社を超える増加となっている。

 ただし、「akerun」は比較的規模の小さなスポーツジムやコワーキングスペースなどが顧客の中心ではないかと予想され、いかに大口顧客を獲得できるかがポイントになりそうだ。フォトシンスの売りは解約率が低いこと。月次平均解約率は1.4%前後で推移している。

■フォトシンスの財務状況は?

 フォトシンスの2022年12月末の財務状況をみると、現預金は18.5億円(前年同期は35.3億円)。有利子負債は約4億円(前年同期は約8億円)となっている。契約負債(前受金)は5.4億円。財務的には健全であるものの、前年から大きく現預金が減っていることが気になる。

 キャッシュフロー計算書をみると、営業CFは4.3億円の赤字。また、有形固定資産と無形固定資産に約9.5億円ほど支出している。財務諸表をみると、賃貸用資産というものが大きく増えており、住宅向けのスマートロック事業が大きく関係していることが予想される。

 この住宅向けスマートロック事業は、美和ロック社(MIWA)と合弁で設立したMIWA Akerun Technologiesが展開している「Akerun.M(アケルン・ドット・エム)」のこと。事業の進捗はわからないものの、ここに大きく投資しており、将来的に芽が出る可能性は十分あるだろう。

 なお、フォトシンスは2021年11月5日の東証マザーズの上場にともない、公募増資と証券引受で約17億円を調達している。また、既存株主の売出しで91億円を上場時に売却している。

■フォトシンスの株価推移は?

 フォトシンスの時価総額は約57億円。現状の業績から考えると妥当とは考えることができないものの、世の中はスマートロックに流れていくと思われ、将来の成長を考えると割安である可能性が高い。

 ただし、スマートロックの領域は競合他社も多く、けっしてブルーオーシャンではないので注意が必要だ。フォトシンスの競争優位がどこまであるのか見極める必要がある。

(画像1)フォトシンスの株価推移

以 上

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