シューマツワーカー社を連結化、成長加速のクラウドワークス!

 クラウドソーシングや副業サービスを展開しているクラウドワークス。競合他社のランサーズを引き離し、業界トップとして成長を続けている。オーガニック成長に加えて、M&Aで着実に成長を実現しているところが好感を持てる。利益率が低いのが悩ましいが、5~10年後くらいには規模の拡大により、企業価値をさらに向上させているのではないかと期待が持てる。

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■基本情報(2023年6月30日時点)

  • 株価:1,319円(10年来高値:2,544円)
  • 時価総額:204億円
  • 予想PER:22.6倍
  • PBR:4.06倍
  • 予想配当利回り:0%
  • 自己資本比率:59.5%
  • 会計基準:日本基準
  • 株主数:4,605人(2022年9月30日時点)

■クラウドワークスの業績は?

 クラウドワークスの2023年9月期の第二四半期の流通総額(GMV)は112億円(前年同期比+18.6%増)、売上高61.5億円(前年同期比+20.7%増)、営業利益5.3億円(前年同期比△14.5%)の増収減益。クラウドワークスの売上総利益率(対GMV比)は+26.0%(前年は+24.3%)、営業利益率は+4.8%(前年は+6.6%)。

 クラウドワークスの利益構造で営業利益率2ケタは難しいだろう。クラウドワークスの売上総利益は前年の22.9億円→29.1億円と+6.2億円の増加、販管費は前年16.6億円→23.8億円と+7.2億円の増加となり、差し引きで営業利益は△1.0億円悪化となった。

■力を入れる副業事業!

 クラウドワークスは副業事業に力を入れている。自社でCroudLinks(クラウドリンクス)というハイクラス副業事業を行っており、累計登録者数は10万人を超える規模となっている。2023年3月に副業人材に業務を紹介するシューマツワーカー社の過半数の出資持分を買収し連結子会社化を発表している。シューマツワーカー社の登録者数4万人が加算され、クラウドワークスグループとして、副業事業の規模が14万人となる。

 最近では、副業やフリーランスの企業活用などの動きが活発だ。プロシェアリングとして、サーキュレーションやランサーズもワークスタイルラボ社を買収し、プロフェッショナルサービスとして企業へのサービス提供をはじめている。

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 また、フリーランスの仲介としては、ギークスやブランディングエンジニアなどのマッチングサービスなども成長している。さまざまな働き方が世の中に浸透しており、人手不足に対する解決策として活用はますます進むのではないだろうか。

■KPIで見るクラウドワークス!

 クラウドワークスの決算説明資料には、同社のKPIが過去からの推移で分かりやすく掲載されている。GMV(流通取引総額)は過去の受託事業の売却で落ち込んだものの、2021年度から右肩あがりでマッチング事業は上昇し、四半期ベースで57億円まで上昇している。

 クラウドワークスでは、システム利用料としてクラウドワーカーから手数料を徴収している。10万円以下の部分は契約金額の20%、10~20万円以下の部分は10%、20万円超の部分は5%となっている。クラウドワークスのテイクレートの推移をみると、22~25%で売上総利益率(流通総額対比)が推移している。これを考えると、クラウドワークスの売上高はそれほど意味のあるものではなく、流通総額と売上総利益を追えばよいことがわかる。

 クラウドワークスの年間売上高は約130億円と業績予想しているものの、売上総利益が59億円のため、事業規模としては60億円くらいの企業と考えたほうが妥当ではないだろうか。

■クラウドワークスの財務諸表は?

 クラウドワークスの2023年3月末時点の財務諸表をみると、現預金は54.2億円、未収入金10億円、のれん2億円となっている。負債をみると、有利子負債は1.2億円と小さく、顧客企業からクラウドワーカーへの未払金が22億円ほど計上されている。ネットで考えると、現預金が30億円くらいあり、財務的には健全だ。

 クラウドワークスは2014年12月に東証マザーズに上場しており、上場時に外部から15億円ほど調達している。また、2015年6月にサイバーエージェントへの第三者割当増資で約30億円を調達、ドイツ銀行に新株予約権を割り当て25億円を調達している。資本金をみると、50億円以上の株主資本となっており、そもそも資金が手厚い。

 クラウドワークスの2023年9月期の第二四半期のキャッシュフロー計算書をみると、営業CFは+4.4億円、投資CFは△1.5億円、財務CFは+46百万円となっている。有価証券報告書をみると、税務上の繰越欠損金が3.4億円ほど残っており、法人税はまだ数年は収める必要はないだろう。

■クラウドワークスの株価推移は?

 クラウドワークスの時価総額は約200億円。競合のランサーズの時価総額は45億円程度のため、大きくランサーズを引き離している。ただし、クラウドワークスに類似した副業、クラウドワーカー、プロフェッショナル人材などのマッチングサイトを運営する企業が増えており、将来的には価格競争がより高まるのではないだろうか。

 結局、付加価値が高い人材ビジネスは派遣社員の紹介や正社員紹介による成功報酬のビジネスであり、リクルート、パーソル、パソナなどのメガ人材会社が存在感を発揮している。日本で副業、フリーランスがどこまで増えてくるか期待感はあるものの、雇用の流動性が他国よりも日本は低いため、なかなか今の構造から大きく変わることは難しいのではないだろうか。

(画像1)クラウドワークスの株価推移

以 上

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