クラウドソーシングのクラウドワークス、工数管理SaaS「CrowdLog」は期待か?

クライアント企業とクラウドワーカーのマッチングビジネスをしているクラウドワークス(Croudworks)。クラウドワーカー数は508万人、顧客企業は82.1万社をかかえるビジネス圏を構築。これまではなかなか利益がでにくい利益構造で苦戦していたものの、規模拡大などで利益率が大幅改善。今後のクラウドワークスの株価と業績の行方は?

人材マッチングサービスのクラウドワークス、成長停滞も営業利益は黒字に!(2021年4月18日投稿)

■基本情報(2022年9月2日時点)

  • 株価:1,400円(10年来高値:2,544円)
  • 時価総額:214億円
  • 予想PER:26.7倍
  • PBR:4.89倍
  • 予想配当利回り:0%
  • 自己資本比率:59.5%
  • 会計基準:日本基準
  • 株主数:3,930人(2021年9月30日時点)

■クラウドワークスの業績は?

 クラウドワークスの2022年9月期の第三四半期の流通取引額(GMV)は143億円(前年同期比+24.0%増)、売上高は77.8億円(前年同期比+32.7%増)、営業利益8.8億円(前年同期比+99.3%増)の増収増益。クラウドワークスの売上総利益率は+45.1%、営業利益率は+11.8%。

 クラウドワークスの実態の粗利を考える場合は流通取引額から売上総利益率と営業利益率を算出したほうがよいだろう。その場合は、売上総利益率は+24.5%、営業利益率は+6.4%となる。いまの利益構造的には営業利益率+10%を超えるのは、なかなか難しいだろう。

■クラウドワークスの利益構造は?

 ただ、流通総額は前年同期比で+20%を超える成長をつづけており、クラウドワークスの事業が成長していることは間違いない。2020年に受託事業子会社を売却し、そこから利益構造が改善し、利益がでる形になってきた。テイクレート(流通総額からの手数料比率)は24.2%まで上昇。2019年は20%前後、2020年は22%前後、2021年は23%前後で推移しており、確実に改善が進んでいる。

 クラウドワークスの売上総利益は35.1億円、そこから販管費26.3億円を差し引いて、営業利益は8.8億円となっている。この販管費には広告宣伝費が約7億円ほど含まれており、広告宣伝費除きであれば、もっと利益率は高い。

■クラウドワークスのメイン売上は?

 クラウドワークスの売上高内訳をみると、WEB制作やエンジニア・デザイナー関係が多い。基本的にはフリーランスと企業をつなぐ価値を提供していると考えてよいだろう。フリーランスのIT関連従事者にとって、顧客を探すツールとして活用している形だ。

 IT関係や事務・アシスタントのどの領域をとっても発注単価は前年比+6~16%くらい上昇している。人手不足感が単価に反映していることがわかる。リモートワークの浸透が、パソナ、リクルート、アデコなどの人材派遣との差別化を図る、追い風になっているのかもしれない。リモートでも問題ない作業が明確になり、クラウドワークスを活用する中小企業が増えていると推察する。

■副業求人の「クラウドリンクス」とは?

 副業求人マッチングの「クラウドリンクス」の登録者が5万人突破。「クラウドリンクス」は、リモート案件92%、平均時給4,500円となっている。気になるのは、手数料・マージン費用0円となっている点だ。もしかすると、いまは事業拡大期の先行投資として行っている可能性がある。

 「クラウドリンクス」の案件をみると、WEB制作、ライター、広告運用(SEO)、弁護士相談、コンサルタント、データサイエンティスト、アプリ開発、営業サポート、カスタマーサポートなど。やはり、リモートワーク浸透により、遠隔で副業できる領域が広がったことがサービスのベースにありそうだ。

■期待できるか工数管理SaaS「クラウドログ」!?

 クラウドワークスは工数管理ができるSaaS型サービス「クラウドログ(CrowdLog)」(旧InnoPM)を提供している。生産性の改善を考えたときに、まずは工数管理からスタートが必要。タイムシート(勤怠管理)、プロジェクト毎の収支管理など使用しやすいと評判が高い。リモートワークが浸透し、勤務状況の管理などにも活用される用途があるかも。

 「クラウドログ」のARR(Annual Recurring Revenue、年間経常売上)は3億円まで上昇。年間成長率は+96.1%となっている。この成長性がどこまで維持できるか期待される。

■クラウドワークスの財務状況は?

 クラウドワークスの2022年6月30日時点の現預金は49.7億円、有利子負債は1.2億円と極めて健全だ。マッチングサービスでエスクローサービスとして顧客の決済金額を預かっている12.1億円が負債に計上されており、現預金はその分がかさ上げされている。利益剰余金はマイナスであるものの、過去の増資金額を含めた純資産が43.5億円と余裕がある。

■クラウドワークスの株価推移は?

 クラウドワークスの時価総額は約210億円。四半期毎の業績推移をみると、確実にGMV、売上高、売上総利益が上昇しており、業績に安定感はある。ただ、いまの営業利益は年間9億円ほど。時価総額200億円規模を考えると、成長性が少し加味されていることがわかる。

 成長鈍化がみられたときに、株価は売られる可能性があることに留意が必要だ。いまはリモートワークの拡大期であり、業績には市場の追い風の部分が大きく反映されている可能性がある点は考慮する必要がある。ただ、上場来高値の更新を目指す可能性は十分ありえそうだ。競合他社のランサーズは引き続き赤字である点は少し気になる。

クラウドソーシング仲介のランサーズ、低収益つづくビジネスモデル!(2021年4月25日投稿)

(画像1)クラウドワークスの株価推移

以 上

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