フリーランスと企業(特に中小・中堅企業)との業務仲介を実施しているランサーズ。競合のクラウドワークスが一足先にようやく利益がでる事業規模まで拡大し、ランサーズはその後ろ姿を追いかけている形。まだ営業損益が赤字であり、ランサーズとしては事業規模の拡大が喫緊の課題だ。ランサーズの業績と株価の状況は?
クラウドソーシング仲介のランサーズ、低収益つづくビジネスモデル!(2021年4月25日投稿)
■基本情報(2022年9月2日時点)
- 株価:249円(10年来高値:1,638円)
- 時価総額:39億円
- 予想PER:赤字
- PBR:3.73倍
- 予想配当利回り:0%
- 自己資本比率:33.1%
- 会計基準:日本基準
- 株主数:5,613人(2022年3月31日時点)
■ランサーズの業績は?
ランサーズの2023年3月期の第一四半期の流通総額(GMV)は26.5億円、売上高は10.5億円(前年同期比+7.9%増)、営業損益は△1.4億円(前年同期は△41百万円の赤字)と増収赤字幅の拡大となった。ただし、利益がでないマネージドサービス(受託事業)は撤退したため、この影響を除くと実質的には前年同期比+54%増と好調だ。リモートワークの浸透や副業の広がりにより、クラウドソーシングの活用の流れがでてきている。
ランサーズの売上総利益率は+47.6%(前年同期は+49.4%)であるものの、流通総額から計算される粗利は+18.8%となっている。ランサーズの2023年3月期の業績予想は、流通総額126億円(前年比+22.5%増)、売上高54.0億円(前年比+32.6%増)、営業損益△2.9億円を計画している。
■ランサーズの利益構造は?
ランサーズの2023年3月期の第一四半期の売上総利益は5.0億円、販売管理費が6.4億円発生しているため、営業損益は△1.4億円の赤字となっている。販売管理費が前年同期比+1.1億円増加している要因は、2022年6月にグループ化したワークスタイルラボ社(フリーコンサルのマッチングサービス)したためだ。
いまの利益モデルを考えると、売上規模がもう少し大きくなると、ようやく売上総利益で販売管理費がカバーできて、利益がでる構造になる。注意が必要なのは、ランサーズのテイクレート(流通総額→売上高)は約40%、流通総額→売上総利益は約19%のため、流通総額から算出する営業利益率が+10%を超えることは至難だろう。
■ランサーズの今後は?
ランサーズはフリーランスに仕事を提供するチャンスを与える場を提供している。リモートワークが浸透してきて、コロナ前以上に企業のリモートでの業務委託に抵抗感がなくなってきたことが市場拡大の理由のひとつ。
クラウドワークスは一足早く、副業ビジネスの「クラウドリンクス」を展開しており、おそらくランサーズも後追って展開するのではないだろうか?Web関係、ライター(Web記事執筆)、コンサルティング、事務サポートなどリモートできる仕事は広がりつつある。ランサーズの機能のひとつは、エスクローサービスという、メルカリ、ラクマと同じように売上代金の確実な受け渡しの仲介。仕事をする人にとっては安心感のあるサービスだ。
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■ランサーズの財務諸表は?
ランサーズの自己資本比率は33.1%とそれほど高いわけではない。2022年6月30日時点の現預金は15.1億円、有利子負債は約4.3億円と多くない。顧客からの預かり金7.8億円(負債)が自己資本比率を大きく押し下げている。その影響を除くと、実質的には自己資本比率は44%前後となる。
ただ、ランサーズの利益剰余金はマイナスとこれまでは利益がでずに苦労していた。クラウドワークスが先に利益を出しており、ランサーズはそのあとを追うことになるのではないだろうか。
■ランサーズの株価推移は?
ランサーズの時価総額は約40億円。一時は時価総額200億円を超えており、ほとんどの投資家が含み損を抱えている状態だ。ここから20~30%くらい更に下がる可能性はあるものの、ランサーズの時価総額が20億円を割ることは想定しにくい。そろそろ、黒字化も見えており、流れによっては一気に時価総額80億円(株価500円)を超えてくることもありえると考える。
ランサーズの決算説明資料をみると、2024年3月期に通期黒字化を公表しており、2023年3月期の4Q単期から黒字予想だ。2023年3月期の3Qが発表される23年2月くらいから注目してもよいかもしれない。ただ、2Qは大きく赤字計上予定であり、ここで更に株価が下がる可能性もあるだろう。
以 上