会計クラウドのfreee(フリー)、赤字継続も想定内、成長重視継続!

 会計クラウドサービスを提供しているfreee(フリー)。前年比+30%を超える成長をつづけているSaaS型のクラウドサービスを提供しているグロース銘柄。営業利益は赤字を継続しているものの、豊富な資金があり、売上高・売上総利益の拡大を2025年6月期まではつづける予定だ。2022年8月12日に決算発表し、8月15日に前営業日比△10%を超える下落をしているものの、想定内の決算内容ではないだろうか?

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■基本情報(2022年8月12日時点)

  • 株価:3,470円(10年来高値:12,910円)
  • 時価総額:1,695億円
  • 予想PER:-(赤字)
  • PBR:4.69倍
  • 予想配当利回り:0%
  • 自己資本比率:76.1%
  • 会計基準:日本基準
  • 株主数:5,209人(2021年6月30日時点)

■フリーの業績は?

 フリーの2022年6月期の売上高は144億円(前年比+40.2%増)、営業損益△22.5億円(前年同期は△23億円の赤字)と増収を維持しているものの、計画どおり営業赤字継続。フリーの売上総利益率は+80.7%(前年は+79.5%)と高く、売上総利益は113億円(前年は81.6億円)であるものの、販売管理費が146億円(前年は106億円)と大きく、結果、営業赤字になっている。

 ただ、これらの赤字は想定内であり、計画していたもの。驚く内容ではない。フリーは売上高の成長を重視し、継続課金してくれる顧客の増加を第一に掲げて経営している。一定規模になってから、広告宣伝費などを削減して、一気に利益を出していく予定だ。プロモーション(広告宣伝含む)の比率は売上高比53.9%(前年は58.8%)、研究開発は25.8%(前年は25.6%)と大きく、どこかでプロモーションの削減が実施される見込みだ。

■想定外は特別損失の計上か?

 フリーは中長期戦略を公表し、2025年度を目途に黒字化を発表。それに伴い、将来のキャッシュフローと資産の減損判定を精査したところ、合計で90.9億円の減損を実施することとなり、今回の決算に織り込んでいる。内容としては、関係会社株式の評価損52億円、貸倒引当金計上7億円、関係会社事業損失引当金6.3億円が主なもの。内容をみると、のれん、ソフトウェア、固定資産など。

 ただ、これらの評価損はキャッシュフローに影響せず、あくまで会計上の処理にとどまる。資金が流出しているわけではない。その結果、固定資産や無形固定資産の残高がゼロになり、フリーの資産としてはすっきりした形だ。

■フリーの事業状況は?

 フリーの有料課金ユーザをみると、ユーザ数ベースで個人事業主6割、法人4割といった感じ。もちろん、単価は法人のほうが高いものの、数は圧倒的に個人事業主が多い。法人の成長率は+25.8%増、個人事業主は+31.3%増と個人事業主の増加が多い。

 12カ月平均の解約率は全体で1.2%にとどまり、法人は0.6%に留まる。年額払いの比率が2018年6月期の58.8%→67.5%(今回)に改善傾向を示しており、キャッシュフロー的にはプラスに作用する。

■2023年計画と中長期計画は?

 フリーの中長期戦略としての財務目標値は、2027年6月期に売上高500億円を目指す。いまの3.5倍ほど。まず、2025年6月期に営業利益ゼロを計画しており、こちらは広告宣伝費の調整で達成は可能だろう。現在の従業員数は916名で、1年後には1,200~1,300名までの増加を計画している。

 足元の2023年6月期の業績予想は売上高188億円、成長率+34.6%、営業利益△68~75億円の赤字を計画している。テレビCMや採用増などのマーケティングコストを増加させる予定だ。将来的には営業利益率20~30%を計画しており、2027年6月期の売上高目標500億円の時点で営業利益100~150億円を目指すことになる。そのときの成長率が1ケタだった場合、予想PERは20~25倍と考えると、時価総額は1,400億円~2,600億円くらいが試算される。

■フリーの株価の行方は?

 フリーのいまの時価総額は約1,700億円。将来の規模感から考えると、2,000億円前後の事業価値ではないだろうか?言い換えると、目指す利益規模や成長性が見えてきたので、テクニカル的に株価は前後するだろうが、大きく上昇する要因にはならないだろう。時価総額1,000億円を割ってきたら、購入を考えてもよいかもしれない。

 すでにフリーの株価は高値から4分の1くらいまで下落。フリーは2021年3月に海外公募増資を実施して約350億円を調達。これが今の成長投資の原資だ。そのときの株価は1株あたり1万円を超えており、いまの株価3,000円の3倍超。フリー株の所有割合をみると、外国法人等が61%保有している。しかも、円安の進行により外貨建てでの含み損はより大きいだろう。

 ここから外国法人がさらに購入するよりも売却のほうが可能性は高いのではないだろうか。振り返ってみると、2020年~2021年はグロース銘柄のバブル的な資金調達タイミングであり、そこで上手くフリーは資金調達できたと言えるだろう。

(画像1)フリーの株価推移、すでに高値から4分の1まで下落

以 上

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