クラウド会計のfreee(フリー)、1.2兆円市場を攻める!継続課金売上高比率は90%超

 クラウド会計ソフトと人事労務ソフトを中心に企業のシステムインフラをサポートしているfreee(フリー)。2021年6月期の第一四半期の決算短信を見ると、営業赤字2.7億円であるものの、事業拡大にむけた販売促進費(広告費など含む)11.8億円や研究開発費5.6億円を考慮すると、いつでも営業黒字にもっていくことは可能だ。freeeの株価はその実態を反映し、すでに時価総額4,000億円を超える時価総額まで上昇している。今後のfreeeの業績と株価の行方はどうなるのか?

■基本情報(2020年11月27日時点)

  • 株価:8,920円(上場来高値:10,600円)
  • 時価総額:4,330億円
  • 予想PER:-(営業赤字22.1億円の予想)
  • PBR:32.7倍
  • 予想配当利回り:0%
  • 自己資本比率:74.1%
  • 会計基準:日本基準

■freeeの業績は?

 会計・人事労務ソフトを展開するfreeeの2021年6月期の第一四半期の売上高は22.3億円(前年同期比+49.2%)、営業利益△2.7億円(前年同期は△4.9億円の赤字)となり、増収であるものの営業損益は赤字幅縮小の実績となった。freeeは決算上の利益を出すことを重要とせず、事業規模の拡大を目指している。freeeは継続課金型(サブスクリプション型)の会計・人事総務のクラウドサービスを展開しており、利用者が増えてもそれほどコストは増えず、売上総利益が一気に拡大するビジネスモデルとなっていることが大きな要因だ。

■売上総利益の拡大はつづく!

 freeeの売上総利益は2021年6月の第一四半期で18億円、売上総利益率は81.1%と非常に高い(好業績のラクスの売上総利益率は66%前後)。有料課金ユーザー企業数はすでに23.3万社を超えており、研究開発費と広告費を削減することで、freeeはいつでも営業黒字に展開することが可能だ。freeeは現預金を150億円(2020年9月末時点)ほど持っており、財務状況も健全だ。これから2~3年くらいは引き続き、赤字をつづけて事業拡大をつづけていくのではないだろうか。

■競争はげしい会計ソフト市場!

 会計ソフトの市場は競争がはげしい。ただし、ほとんどの大手企業が高い営業利益を出しているのが特徴だ。新興企業であるfreeeは先行投資をして、既存の競合他社からの切り替えを促進する必要がある。クラウド型の会計ソフトでは、マネーフォワードクラウド会計、弥生会計オンライン、勘定奉行クラウドなどがある。もう一つ、インストール型の会計ソフトも王道だ。 勘定奉行シリーズを展開するオービックビジネスコンサルタントはじめ、ピー・シー・エー(PCA)、TKCなど会計ソフトを展開する高収益企業は少なくない。

 freeeとしては、会計ソフトはいったん使用すると簡単には解約できず、長期間の使用が見込めるため、とにかく顧客規模の拡大を足元では最重視したい考えだ。これから数十年後も企業の会計に対する需要がなくなることがないため、freeeの戦略は間違っていない。

 新型コロナウイルスの影響によるリモートワークや電子帳簿保存法の改正(2020年10月改正)、電子申告による税額控除増額(2020年度分より)、消費税のインボイス制度(2023年10月より適用予定)など政府のデジタル対応の利便性が向上し、より適したサービスが求められる。freeeとしても、この機会に競合の旧会計ソフトからの切り替えを促したい考えだ。

■freeeの株価の行方は?

 freeeの株価は堅調だ。政府のデジタル対応などクラウド会計やデジタル銘柄はテーマ化していて、freeeだけでなく、競合のマネーフォーワードやラクス、メルカリ、Sansan、BASE、弁護士ドットコムなど新興IT企業の株価はうなぎ上り。freeeの業績は堅調に伸びていくと思われるものの、ここから数倍になるかどうかは疑問が残る。

 freeeの時価総額はすでに4,000億円を超えている。前年同期比+40%を超える成長をしているものの、これから毎年成長率は鈍化してくる。毎年、営業利益60億円出せるようになっても、時価総額4,000億円であればPERは100倍ほどになる。freeeの事業は堅調に成長すると思われるものの、株価は必ずしも上昇するとは限らない。ちなみに、勘定奉行シリーズを展開するオービックビジネスコンサルタント(OBC)は売上高300億円、営業利益120億円の業績で時価総額は5,900億円(上場来最高値圏)だ。

 現在の株式市場は世界的な金融緩和によるバブル相場となっている。どこまで相場全体の上昇がつづくか誰にも予想できないが、いつか緩和終了が見えるとバブル崩壊となる点に留意が必要だ。数カ月先か数年先かわからないが、いつか金融緩和が終了することは間違いないだろう。

(画像4)右肩上がりのfreeeの株価推移

以 上

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