ECの通販物流アウトソーシング、物流コンサルなどを行い、自社で全国7拠点にフルフィルメントセンター(FC)を運営しているイー・ロジット(イーロジット)。フルフィルメントとはECなどの通販の受注~配送までの一連の業務を指す。そのフルフィルメントの一部または全部の業務を請け負うのがイー・ロジットの事業領域だ。自社でセンターを持っているので、アウトソーシングの領域の幅も広い。今後の業績と株価の行方は?
■基本情報(2023年9月15日時点)
- 株価:434円(10年来高値:2,145円)
- 時価総額:15億円
- 予想PER:赤字予想
- PBR:1.33倍
- 予想配当利回り:0%
- 自己資本比率:22.3%
- 会計基準:日本基準
- 株主数:1,334人(2023年3月31日時点)
■イー・ロジットの業績は?
イー・ロジットの2024年3月期の第一四半期の売上高は30.4億円(前年比△5.1%減)、営業利益△78百万円(前年同期は+9百万円)の減収赤字転落となった。イー・ロジットの売上総利益率は+4.9%(前年は+6.2%)と非常に低い。
イー・ロジットの売上総利益は前年の2.0億円→1.5億円と△0.5億円の減少、販管費は前年の1.9億円→2.3億円と+0.4億円となり、営業利益は0.9億円の悪化となった。売上総利益率が低すぎるため、赤字案件を多く抱えていることがわかる。
■イー・ロジットの事業内容は?
イー・ロジットはEC(Eコマース、ネット通販)のアウトソーシングを請け負うことを面の事業領域にしている。また、物流コンサルティングを提供している。自社で全国に7拠点のEC事業を受託するフルフィルメントセンターを運営している。関東に5拠点、関西に2拠点となっている。総延床面積は56,100坪。
具体的には、顧客企業の商品のセット組、ラベル貼り、ラッピングなどの流通加工、梱包、出荷などの一連のサービスを提供している。
おそらく、このイー・ロジットの提供しているフルフィルメントサービスよりも、アマゾン(Amazon)や楽天のフルフィルメントのほうが使いやすさが高いのだろう。あとは価格面での競争力になってくる。いまは価格競争に入っており、イー・ロジットとして利益を確保できるレベルにはないのだろう。
■市場環境の変化
イー・ロジットの決算説明資料を読むと、将来的な成長性が見えない。そもそも売上総利益率が低く、フルフィルメントセンターは賃貸のため賃料の増加や人件費の高騰が重くのしかかる。
イー・ロジットの従業員数は222名、平均年齢36.6歳、平均年収は435万円。給与水準もそれほど高くない。臨時雇用者数は800人くらいになっている。イー・ロジットの2023年3月期の給料手当は16.6億円、かりに給料上昇により+10%の上昇になると人件費は+1.7億円の増加になる。いまの利益構造では継続するのがむずかしいだろう。
■イー・ロジットの財務状況は?
イー・ロジットの2023年6月30日時点の財務諸表をみると、現預金は16.3億円、前払費用が3.1億円、差入保証金14.2億円となっている。負債をみると、有利子負債は約10億円、未払金15.8億円、長期預かり保証金が1.9億円となっている。利益剰余金は+1.5億円あるものの、財務的にはそれほど余裕がない。
2024年3月期は売上高122億円、営業利益△5.0億円の赤字を計画している。純資産は11.5億円しかないため、この状況がつづくと、債務超過も見えてくる。本来は値上げをしないといけないものの、Amazonや楽天などの超大手のフルフィルメントセンターは、フルフィルメントで稼ぐのではなく、別の部分で稼いでいるため、イー・ロジットが価格面で競合他社より強みを見せるのは難しいだろう。
なお、イー・ロジットは2021年3月にジャスダックに上場。公募増資などで約9億円を調達している。
■イー・ロジットの株価推移は?
イー・ロジットの時価総額は約15億円。時価総額をみると安いものの、純資産的に厳しく、利益がでる利益モデルではないのでギリギリの株価というのが実情だ。イー・ロジットの有価証券報告書をみると、常勤役員の常務取締役COOは2022年8月入社、常勤のCFOは2022年2月入社と最近入社している。
しかも、自社株の保有はゼロ。物流業界(トラックなどの配送)は値上げが受け入れやすい社会情勢であるものの、イー・ロジットは物流というよりもアウトソーシング事業のため、顧客に十分な付加価値を適切な価格で届けられていないのが実態ではないだろうか。
以 上